【第七章要約】ターミナル・ステーション編
全ての過去を乗り越えて、勇者達はかつての仲間と衝突する。
武闘家ストーは、自らの立ち位置に悩んでいた。かつて自らを誘った船出でさえも今や勇者一行の仲間入りを果たした。だが自分自身の立ち位置は勇者一行の敵である。
だからこそ、せめて勇者一行の成長の糧となることが出来るように悪役となろうと考えていた。
徐々に世界の真相に近づきつつある勇者一行。瀬川 沙羅というセイレイの姉の存在が、世界にとって重要視されてきていることに気付き始めていた。Sympassの管理者でもある彼女は、一体どのような目的を持っているのか。未だ出会ったことのない存在ではあるが、いつか邂逅する時が来るのだろう。
そう思いながらも勇者一行は日々配信を行っていた。
そんな彼らは、ついに武闘家ストーとの決戦配信を迎える。
ストーが舞台として選んだのはターミナル・ステーションだった。周囲にはレストラン街や図書館と言った施設が併設されたそこは、かつて人々で賑わっていた場所だ。
彼の望む通り、着々とダンジョン攻略を行っていく勇者一行。レストラン街を攻略し、追憶のホログラムを起動させる勇者一行。
映し出された映像には、かつての武闘家ストーの他、noiseの師匠でもあるストーの父の姿もあった。
淡々と仕事をこなす印象しかないnoiseだったが、そこに映っていたのは子供に振り回される一人の父親の姿だった。見たことのない姿に唖然としながらも、彼等は追憶のホログラムをドローンへと融合させる。
人間は多側面だ。
そんなありふれた事実を追憶のホログラムを通じて突きつけられながらも、勇者一行は続いて図書館を攻略し始めた。
その図書館は、セイレイとホズミが初めて出会った場所でもある。
魔物に襲われていたホズミを、セイレイが命をとして助けたのが彼らが出会ったきっかけである。
そんな思い出の場所に現れたのは、ホズミの両親の亡骸——スケルトンだった。
自らの娘を葬らんと襲い掛かるスケルトンの姿にセイレイは激昂しつつも立ち向かう。仲間達の懸命のフォローを得ながら、ホズミは「極大消滅魔法」を駆使してスケルトンを撃破。
スケルトンを撃破した先に残っていたのは、魔災が起きた日にホズミが両親とともに行こうとしていた遊園地のチケットだった。二度と描くことの出来ない思い出を胸に、彼女は前に進むことを決意する。
図書館に配置された追憶のホログラム。そこには魔災以前に図書館に訪れた前園と、瀬川の姿が映し出されていた。やんちゃ坊主だった瀬川が、前園を怒鳴りつける姿が映し出される。
魔災以前に、既に二人は出会っていた。もはや忘れていた真実が、はっきりと追憶のホログラムによって告げられた。
魔災が無ければ、描けていた未来があった。
その事実を幾度となく告げられながらも、勇者一行はやがてストーと邂逅する。
自らの姿を機械的な姿へと書き換えた武闘家ストーは、その持ち合わせた能力によって勇者一行を翻弄。だが、セイレイ達も屈することなく各々の持つ能力を組み合わせて打開を図る。
やがてアカウント権限の貸与を用いて船出が配信内に乱入。かつて味方であった二人は言葉を交えながらお互いに切っ先を交える。
そんな激戦の末、ストーは勇者一行に敗北。
これで晴れ晴れしく未来に進めると思った矢先、再び魔王が現れる。
魔王は再び全世界同時生中継を行い、セイレイという存在の真相を語り始めた。
瀬川 怜輝は幼い頃、交通事故によって脳死に陥った。二度と目を覚ますことが無いと告げられた彼の父、瀬川 政重はそんな彼をよみがえらせるべく「ホログラムの実体化技術」を生み出すことを決意。
彼は瀬川 怜輝の実の姉である瀬川 沙羅の思考データを用いて前駆体を生み出した。プロトタイプとして生み出されたのが、ディルであった。
そんなディルという実験の成功例もあり、ついにホログラムの実体化技術は「希望の種」として世界に産み落とされる。
やがて瀬川 怜輝の命を救うべく、瀬川 沙羅は自らが主となって実験を行う。瀬川 沙羅の思考データをベースとして、人々の思考データの断片を重ねて疑似的に瀬川 怜輝の人格を復元する、という事をやってのけたのだ。
その結果生み出されたのがセイレイだった。
沙羅+AI。だから、セイレイ。それが、彼の本当の由来であることを知らされる。
告げられた真相と共に、セイレイは光の粒子となり仲間達の前から姿を消した。
ディルの推測によれば、消えたセイレイの行方はSympass本社のある大都会にあるはず。そう推測した彼らは、街全てがダンジョンとなっているという大都会へと向かう決断をするのだった。