【第六章要約】思い出の学び舎編
塔出高校へと向かう日の朝。
船出 道音は学生服を身に纏い、一ノ瀬宅でくつろいでいた。
まるで四天王としての立ち振る舞いすらすることもなく、瀬川と口論を繰り広げる彼女。そんな彼女は自らを「過去に縋る四天王」と自称し、自らが築き上げた世界を理解してもらおうとしていた。
そんな彼女は通学の前に、瀬川達の姿を学生服へと書き換える。
魔災のない世界、本来であれば瀬川達は高校へと通っていた学生だったはずなのだ。
もはや見ることさえ出来ない世界を体験させようと、船出は己の持つ力を使って瀬川達を塔出高校へと案内する。
魔王の生み出した桜の木々は奇しくも、彼らが高校へと訪れるに相応しい姿を生み出していた。
勇者一行としてではなく、ただの高校生として勇者一行は塔出高校の中を歩く。
初めて経験する教室の空気に驚きながら、同年代の賑やかな声を聴きながら、瀬川達はかつて描くことの出来なかった姿を追体験していく。そんな彼らの様子を船出は微笑ましく眺めていた。
そんな彼らの前に現れたのはかつての一ノ瀬の幼馴染——そして、魔災によって命を落とした鶴山 真水だった。バックアップされたデータから復元された存在である鶴山の姿に、一ノ瀬はつい感極まって涙する。
失った時間を取り戻すように、一ノ瀬は鶴山、船出の三人と共に時間を過ごす。
瀬川も体験することの出来なかった授業風景を感慨深く眺めていく。魔災が無ければ描けていた未来を体験していく勇者一行。
だが、それでも瀬川達は未来を進まなければならない。
浸りたい夢のような世界を体験しながらも、瀬川達は塔出高校を「卒業」することを誓う。
彼らの想いを受取った船出は、改めて四天王として勇者一行と対峙。自らを「フック船長」と名乗った彼女は左手にワイヤーフックを顕現させる。
体育館を船の形へと書き換え、空高く浮かび上がらせる「ノアの箱舟」によって勇者一行を攪乱しながら激闘を繰り広げた。
だが、激しい激闘の中でディルは「闇纏」を発現。背中より伸ばした漆黒の翼から放つスコールのような一撃を放ち、船出を瀕死に追いやる。
やがてディルによってボロ雑巾のように空から投げ捨てられた船出。そんな彼女を救うべく、セイレイは自らの危険も厭わずに身を投げ出す。
成す術のないように思われた状況だったが、セイレイは持ち合わせたスキル「五秒間跳躍力倍加」の隠し効果である「着地ダメージの無効化」に気付く。
それによって命を救われた船出であったが、かつて他人の命を奪った存在であることから生かしておくのは為にならないとディルは主張。船出自身も「自身は殺されるべき」と考えセイレイにとどめを刺すように提案する。
渋々それを了承した彼だったが、突如として現れた秋狐というバーチャルシンガーによってそれを阻止される。彼女は、船出の親友であり、一ノ瀬の後輩に当たる人物だった。
出鼻をくじかれた勇者一行と船出であったが、結局彼女もドローンに取り込まれる形で仲間となるのであった。