【第四章要約】水族館ダンジョン編
自らが勇者を名乗ったせいで、世界は滅茶苦茶になった。
そう自責の念に苛まれ、自分の首を絞めるようにただひたすらに配信を続ける瀬川。前園も一ノ瀬も、一旦身体を休めるべきだというが瀬川は「自分のせいでこうなった」と言って聞く耳を持たない。
何度も何度も繰り返し配信を続ける中、瀬川は徐々に自我の崩壊を歩み始める。
そして、ついに度重なる配信によって限界を迎えた瀬川。
まともに起きることさえできず、配信を継続することは出来ないと彼女達は判断する。
長らく行動を共にしてきた前園と一ノ瀬の言葉は、もはや瀬川には届かない。
そう考えた彼女達は配信を休止し、新たな人々の言葉を探し求めて旅を続けた。
やがて勇者一行は、山奥に築き上げられた集落を発見する。最初こそ乗り気でなかった瀬川だったが、前園と一ノ瀬の説得もあり渋々その集落へと訪れる。
そこで出会ったのは、集落の生活を維持する為にダンジョン配信を行っている少年、青菜 空莉だった。
どういう訳か、彼は魔災以降から現在に至るまでの記憶が抜け落ちているらしい。
どこか抜けた雰囲気のある彼と関わるうちに、徐々に凝り固まっていた瀬川の心が解れていく。ついに休息を得た瀬川の姿に、青菜は心の底から安心感を覚えた。
心穏やかな雰囲気を纏う彼は、どうやら魔災以前の瀬川を知っているようだ。
彼の正体に関心を持った前園と一ノ瀬が問いただすと、青菜は「瀬川と幼馴染である」ということを白状する。
魔災以前の記憶のない瀬川にとって、彼の存在は貴重な情報源だった。
徐々に親しくなる瀬川と青菜。彼らは、女性陣に内緒で青菜のアカウントを使用してダンジョン配信を開始。だが、目的を見透かしていた一ノ瀬と前園が後をこっそりと付けていたことに彼らは気づかなかった。
元々単身でダンジョン配信を行っていた青菜の実力は本物だった。
それにセイレイの実力も合わさり、ダンジョン攻略は順調に進む。
しかし、彼等は進んだ先で、以前勇者一行が苦戦を強いられたホブゴブリンと久々の邂逅。逃げることすら叶わないと悟った彼等だったが、そこにホズミとnoiseが合流。
流れるような連携によって、セイレイ達はホブゴブリンを撃破。
一息ついたのも束の間のことで、クウリの配信内に突然として乱入者が現れる。
蒼色のドローンは、自らを「Dive配信」と名乗った。明らかに異質な存在に警戒を強いられる勇者一行だったが、ドローンは徐々に少女の姿へと形を変えていく。
……魔王セージに使える四天王、という口上すら覚えることが出来ず、カンペを使っていた少女の姿へ。
どこか抜けた雰囲気のある四天王は、雨天 水萌という名前らしい。会話の端々から垣間見えるポンコツ加減に辟易とする勇者一行。
しかし彼女が「水族館に逃げ込んだ人々を追いやってダンジョンを作り上げた」という事実を知った勇者一行は明確に雨天を敵として認識したのだった。
やがて彼女に案内されるがままに到着した水族館。雨天はそこで決着を望む、と誓いダンジョンの奥地へと姿を消した。
一ノ瀬を配信ナビゲーターとして配置し、セイレイ、ホズミ、クウリの三人でダンジョン配信を開始する。
相も変わらず無茶を繰り返すセイレイを咎めつつも、それぞれのスキルを駆使してダンジョン攻略を進めていく。
『アンタが居たせいで!!アイツは私の元から居なくなった!!アンタのせいで!!アンタのせいで!!』
『ひっ、ごめんなさい』
そんな中で明らかになるのは雨天の過去。
彼女はまともに母親の愛情を受けることが出来ず、歪んだ価値観のまま育った少女だったことを知る。
雨天に同情こそすれど、それが彼女を止めない理由にならないことを理解していたセイレイ達。やがて、ついに彼女と衝突する。
自らをクラーケンの姿へと変えた雨天は強敵だった。
度重なる触手の連撃にセイレイ達は苦戦を強いられる。更にセイレイの放つ「雷纏」さえも雨天の持つスキル「純粋の障壁」の前に防がれ、打開の方法を見出せずにいた。
攻めあぐねたセイレイだったが「雨天を理解すること」に攻略のヒントがあると考えた。
相手は魔物ではなく、魔災の中を生き延びたたった一人の少女である。そう彼女を捉え直し「純粋の障壁」の攻略のヒントを探り始めた。
そして、ついに彼らは雨天を攻略する答えを見つけた。
——彼女は「変化すること」を恐れていた。
そして、眼前で新たに「身体能力強化」のスキルを開花したホズミに、徐々に雨天の心は大きくかき乱され始める。
変化し、成長していくこと。その強さを目の当たりにした彼女は、ついに「純粋の障壁」を発現することさえ出来なくなり勇者一行の前に敗北したのだった。
自暴自棄となり、勇者一行に殺されることを願った雨天。だが、セイレイ達はそれを許さなかった。
彼女の存在のそのものが「追憶のホログラム」であることに着目したセイレイは、ドローンに吸収されることを提案する。その案に従った雨天は、ついにセイレイ達の仲間入りを果たしたのだった。
次なる旅路へと出かける前に、クウリは自らが生活の維持の為に用いてきたダンジョンを攻略することを決意。そんな彼のささやかなわがままに、勇者一行は従うことにした。
「アカウント権限の貸与」を用いた雨天の協力も得て、着々とダンジョン攻略を進める勇者一行。
しかし、ダンジョンボスとして現れたのはゴブリンロードとホブゴブリン2体。
明らかな強敵である魔物達に、セイレイ達はスパチャブーストを駆使して対処していく。コメントの力も借りて、どうにか状況の打開を図るが思うようにいかず、ジリ貧な状況に陥る。
そんな中、クウリはホブゴブリンの一撃を食らい瀕死状態となる。一名が戦線から抜けたことにより、より一層状況は厳しくなっていく。
絶望がにじみ出る中、クウリはどこか遠い夢のような世界へと誘われていた。
そこで知るのは、クウリが「自ら望んで記憶を消した」という真実。その事実を知ったクウリは「自分が消した記憶の真実を知りたい」と強く願うようになり「風纏」を発現する。
彼のスキルにより一気に形成を巻き返した勇者一行。彼らはついにゴブリンロード達を撃破し、ダンジョン攻略に成功したのだった。