第九話「殺しのアルバイトをします」
ここが…天国。やはり青空の下というのは気分がいい。
太陽が出迎えてくれているようだ。そよ風が髪を横切る。
足のない人間が楽しそうに歌い、不思議と涙が出てきそうだ。
まるで、これまでの旅路を祝福してくれているかのよう。
「ねぇ」ペルセポネが口を開く。
まずい、手を握ったままだったことがが癪に障ったか?
「な なんでしょうかペルセポネさん…」こういうときは物腰柔らかくだ。
「その…ありがとう…たすけてくれて…もし…わたしひとりだったら…いまごろ
えいえんのくるしみをあじわっていたかもしれない…ありがとう…ほんとうに」
ペルセポネは頬を赤くし泣いている。ひどく切ない。
俺はペルセポネにどう対応すべきか。分からなかった。
ひとまず話題を作らないと。
「そ …そうだ!一旦あそこに見える宿に
行って荷物を預けましょう!俺がお金払いますよ!」
指の指した先には英語で書かれた宿がある。
外国語を地獄で勉強していてよかった
ちなみに
日本語で「宿」と書いてある。
そのまんまだ。
現世にいたとき。たまたまお金を持っていたのが幸運だったな。
福沢諭吉も異世界に行けるなんて思っても見なかっただろう。
「使えません」「え?」
天使のおっちゃんが口を開く。
あ、そうか…看板が英語ということは
アメリカの通貨ということじゃないか。つまりドルだな!
「あぁ…すみません…もしかしてドルでしたか
どこか通貨の交換所など知っていませんか?」
「いやね…お客さん
うちらの通貨はあんたんとこの世界の通貨と違うんだよ
ないならとっとと帰りな」
手であしらわれる。くぅ…ほかの客だっているのに
そんな大声で言うなよ。はずかしい…
顔を赤く染めていると
ペルセポネはどこからか金色の硬貨を取り出した。
「これでいいかしら?」
「おう…持ってるじゃないか…それなら…そうだな…
空いてる部屋が三階にある…それを使いな」
元気づけるためかっこつけたのにこれじゃ台無しだ。
「はぁ…」溜息が出てしまう。
「ありがとう…元気付けようとしてくれたのね…
もう大丈夫よ…私たちの今後について話し合いましょう」
ボソッと周囲には聞こえない声でしゃべりかけてくるペルセポネ。
やはり、この人には敵わないな。
「早速だけど」部屋につくや否やベットに腰掛けるペルセポネ。
ちょんちょんと、隣に座るように手で誘導する
くぅぅぅおかあさんおとうさん、いまぼくはしあわせです。
隣に腰掛ける。「お金がないわ」
やはりか。俺はペルセポネが金の硬貨を出すとき
怪訝そうな顔をしていたのを見逃さなかった。
「なので明日殺しのアルバイトをします」
もう少し言い方を考えてくれ。
「明日…ギルドに行って悪魔討伐の依頼を受けましょう」
この世界にも漫画に出てくるような場所があるのか。
なんだかわくわくする。
「今日はとりあえずこの町を見て回りましょう!」
ウキウキのペルセポネ。天界に来れたのがそんなに嬉しかったのか。
「わー!綺麗な町ね!天界に来たのなんて何百年ぶりかしら!」
目を輝かせるペルセポネ。犬の散歩をする人間。
見張りをする天使たち。走り回って遊ぶ子供。
俺の目から見ても美しいと思うずっと、こんな日が続けばいいな。
ちなみに通貨には
金硬貨 銀硬貨 銅硬貨がある
それぞれ日本円に例えると10000円 1000円 100円らしい
分かりやすくて良い。
建設をしている人間が目の前に現れる。あの日本人建設頑張ってるなぁ。
大和魂だ。
大体、天使が悪魔の討伐を行い、元地球の住民たちが建物を建設している
だから英語で「宿」なんて書いてたのか。
夜になった。やはり月があるのはいいな。
体内時計が狂わない。「そろそろご飯にしましょうか」
「やったー!」あ、声に出してしまった。
仕方ないだろう。まともな飯なんて地獄に来てから食べてないんだ。
くすりと笑うペルセポネ。くぅ…
「天下の台所」というところに来た
大坂かよここは。出てきた料理に二人は舌鼓を打つ
ちなみに、たこ焼きやお好み焼き、串カツが出てきた。
本当に大阪だったのだ。
宿に戻り、寝る準備をする二人
今日は楽しかったな。ごはんもおいしかったし。基本みんな良い人だ。
明日…また殺し合いをすることになるのか。
俺は、頑張ることしか取り柄がない。せめて役には立たないとな。
「今日は…色々とありがとう」ペルセポネが口を開く。
「いえ……あなたは俺の命の恩人です
せめてあのくらいはしないとですよ」
そういえば俺が初めて地獄へ来たとき
ペルセポネたちが助けに来てくれなかったら
出血多量で死んでいたかもしれないな
本当に感謝だ。
「私…あなたのこと結構好きよ」頬を赤く染めている。
「もう先に寝るわ!おやすみ!!」
え!え!マジか!ペルセポネって俺のこと好きだったのか!
くぅぅぅぅ俺も好きです!!!!
「なんて言えるわけないよなぁ…」
ありがとうペルセポネ。俺も感謝してるよ。
ペルセポネの寝顔を見ながらベットに潜り、眠りにつく。