第四話「赤いお遊戯会」
「人ならざる化け物を殺してもらう」
ペルセポネの瞳は空気がこわばるような…見てるだけでも不安になる。
他の「人間」たちも同様だ。いつものような雰囲気ではない。
怯えている人もいれば、気合を入れている人もいる。
だんだんと「化け物を殺す」という言葉に現実味が増してきた。
「化け物ってなんですか…?何か悪いことでもしたんですか…?」
不安げな声を出すと、一同に笑いが起きた。何が何だかわからない。
「ソリャ、オルタチモクアモンガナイトイケテケナイ
アクマコロシテ、メシヲクウ」
「人間」の一人が下手な日本語で答える。
「そう…私は必要ないけれど
この子たちには「ごはん」が必要だわ
でも食料が底をつきそう
だから…あなたには「化け物」をたくさん殺してもらうの」
やはりか、こんな荒地に動物がいるのかと思ってはいたが…
なんだか気分が悪い。
「…緊張しないで、これは試練なの
あなたの実力を試す機会だと思うし
いざとなったら「人間」が助けてくれる
二人にはなんにも危害は起こらないわ…私も一緒に行くから」
なんだよ。ペルセポネの瞳が怖い。俺だけなのか?
「人間」は誰一人として異常と思ってない。
これが地獄の普通なのか?
「人間」十数名が俺の先頭に立つ。その真横にペルセポネがいる。
いままでのんきに生活していたから気づかなかった。
あちらも「人間」なんだ。これは戦争なのかもしれない。
そう考えると背筋がスーっとなった。俺って今から殺し合いをするんだな。
「緊張しているでしょう?律」
ペルセポネが、下を向いている俺にしゃべりかけてきた。
「そりゃぁ俺人生初めてですよ…戦争なんて」
「初めて?子供の頃は戦争なんて日常茶飯事だったけど」え?
「いえ…忘れて…今はそういう時代なのかもね」
冗談だろうか?めちゃくちゃびっくりしたよ。
「そういえば律、あなたの名前って呼びづらいわ
この世界ではヒラガナなんてものはないでしょう?
今後、怪しまれるのもいやだし名前を変えてみてはどうかしら?」
けろっとした顔で答えるペルセポネ
こいつ失礼だなぁ……
でも、確かに従者として目立たないで生きていくならそれもあるかもしれない。
太陽 律ってここじゃ目立つしね。でも、何かいい名前あるかなぁ
ドーン!!
うるせぇ!!!
なんだよ急に…こつんところころ。「人間」の生首だ。
「人間たち!お前たちは前衛に!律!あなたは人間についていきなさい!
魔法が少しでも使えるものは後方!特に炎がいいわ!」
「人間」の雄たけびが響く
戦争開始だ
(以降敵側の「人間」は「化け物」とします)
「化け物」が半狂乱に攻めてきた「人間」も同様半狂乱だ
なんだよこれ、まさしく地獄絵図じゃないか
「・ー・ーー・・ーー・・ー」
ペルセポネたちが唱えると大きな炎の玉が出現した。
瞬く間に「化け物」に直撃し、一瞬の悲鳴のあと、塵となって消えた。
瞬く間に「化け物」の士気が下がる。これ、現実か…。
呆然としている俺に剣が降りかかる。
「あぶっ!?」間一髪だ
「ディスガーイーシーキール」
化け物はよくわからない言葉を発し、俺に襲い掛かってきた。
俺は頭が悪いんだ。外国語なんてわからないぞ。足が震える。
どうすればいい?殺しなんてしたことはないぞ?
ましてや「化け物」相手なんて…。またもや剣が降りかかる。
とっさに槍でガードしたが、腕がじんじん痛む
槍の下に、にゅるりと足を入れられ腹を蹴られる
ああくそ、痛い痛い
卑怯じゃないか
か弱い相手に
一対一なだけましか…
俺、死ぬのか?
重要な役目があるんじゃないのか?
意識が薄れていく…
ごめんな、にんげん、ぺるせぽね…
「二叉の槍」
気付くとそこには「人間」も「化け物」も死体となった。
ただペルセポネだけがいた。
「あなた、名前は?」