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神の騎士を契りたい  作者: さばサンバ
エピローグ
36/36

最終話


数年は歩いた。

戦争のせいで悪魔も動物も見てはいない。皆死んでしまったのだ。

一向に山も見えない。ガブリエルの手料理が

なければ餓死していたかもしれないな。

…正直魔法で食料はどうとでもなるんだが。



今日は随分と歩いたな。ひとまず寝るとしよう。

やはり一人で寝るのには慣れないな。

粗末なテントのチャックを開き夜空を眺める。

いつ見ても、星々が一つ一つ主役として輝こうとしているため

自然と目を引くものがある。なぁ…俺ってそんなに孤立主義だったのかな。

イザナギもガブリエルも、きっと死ぬだろう。なのに何も感じない。

これが神になったという証拠だろうか。…あまり考えるのはよそう。

神にならなければ、ミカエルを殺せなかったのだから。





数か月は経っただろう。ようやく山祇に到着した。

これが山なのだろうか?とても大きく、登るのを想像すると具合が悪くなる。

「はぁ…行くか…」溜息をつきながら、もそもそと登り始める。


花の匂いが辺りに充満している。


木の葉からちらっと反射する日光が心地よい。


一つ一つ、失われた時間が戻っていくようだ。


目から涙がこぼれ落ちそうになる。


本当にこの世界は楽しかった。


つらいこともあったし、帰りたいと思うときもあった。


時間がゆっくりに感じる。意識が極限までに研ぎ澄まされてるようだ。


あのDQNに骨折られたっけな。ははっと乾いた笑いをする。

「人間」今はどこにいるのだろうか。せめて安らかな場所にいてほしい。

みんなのアイドルで、元気溌剌で心優しく力強い彼女。

心強かった。たまに見せる弱音に少しきゅんともした。

天使のおっちゃんには申し訳ないことをしただろう。

結局恩を借りてばっかりだった。

ガブリエルの最初の印象は最悪だったなぁ。急に怒んなくてもいいだろ。

あの兄妹も、きっと天界にはいないだろう。

二人同じ場所で生きていることを願うよ。


涙がぽろぽろと止まらない。本当にみんな大好きだったんだ。

少しの休息も一緒に戦った強敵も、全部全部宝物なんだよ。


花の匂いがさらに充満してきた。

妖精のような生き物が、花の冠を作って遊んでいるようだ。

みんなと生きたかったんだよ。

運命というものがいるのなら、最後のお願いを聞いてください。


「大好きな人のいる場所へ連れて行ってください」


…いつの間にか頂上へ到達していたようだ。涙をごしごしと袖で拭く。

黄色い水仙の花が咲いている。「ここは…」


「待っていたわ」


そこには「彼女」がいた。

つんとしているが本当は弱く、誰かに寄り添うことが大好きな彼女。

幸せそうに笑う姿が大好きだった。一生一緒にいると思っていてた。

急にいなくなるんだ。寂しかった。つらかった。こわかったんだよぉ。

「…ずっとくるしかったんだ」

「ごめんね」

「みんなしんじゃってさ…きおくもあやふやになるし…」

「ごめんね」

「たくさんがんばったんだ…でも…ひとりじゃとうていかないっこなくて」

「…ごめんね」

「もう…だれもいないんだよ…」

「……私だってつらかった!」そう言う彼女は目に涙を浮かべる。

「なんですぐ来なかったの?!ずっとずっと待ってた!

こっちだって独りぼっちだった!誰の目にも留まらない…

こんなところで毎日毎日待ち続けたんだよ!」


俺の記憶には無い、素直な気持ちを思いっきりぶつける彼女。


「忘れられたと思うじゃない…」「…すみません」


二人見つめあう。涙を浮かべる姿に、どちらも笑ってしまう。

だが、そのおかげで緊張がほどける。


「ほんとうに…すみませんでした」

「いえ…私もあなたが頑張っていたことは知っているから」

「見ていたんですね」「えぇ」

「それと!せっかくお花置いてったのに捨てないでよ!」

…あの枯れた花だろうか。

「すみません…枯れていたのでゴミと勘違いしてしまい…」

「ゴミって…まぁ枯れていたならゴミだけどさ…」ぷいっとそっぽを向く彼女。


「…それで…この場所って何なんですかね…」「さぁ…」

黄色い水仙が辺りには咲いており、妖精が花畑で遊んでいる。

「それでね…律…いえハーデス…」頬を赤らめている。

「私たち結婚しない?」「けっこん?!?!」

なんなんだ急に?!そりゃこんな美女と結婚出来たら幸せだろうよ?!

でも、なんで急に…


頭がくらくらする。


「はいかいいえで答えてもらえると助かるわ…」

告白なんてしたことがなかったのだろう。彼女の体温の熱がこちらに伝わってくる。

「はい」無碍にすることもできないしな…。

「ほ…ほんと…?!…えへへ…!」気持ちを抑えきれないのか

ぴょんぴょんと飛び、喜ぶ彼女。なんだこれ、俺はこの顔を見たことが無い。


視界がぼやける。


「あ…きた…」彼女がそう言うと、ひひんと馬の声がする。

「さぁ…私の手を取って…」「………………」

目の前には馬車が停まっていた。「ふふっ…一緒に行きましょ…?」


なんだよこれ、絶対何かがおかしい。誰か助けてくれいやだいやだいやだ。


…全てどうでも良いか。きっと彼女がなんとかしてくれる。

彼女の顔は、悪魔に見えたし天使にも見えた。


じゃあきっと悪魔だな。


これが運命なのだろう。


あぁぁぁぁぁ生きたくない行きたくない。

全部忘れてしまいそうだ。


アラエル…イザナギ…イザナミ…君たちの元へ…


「全ては運命の巡り合わせ…何億もの世界のたった一つのエンディング」


今回は「神」になれたよ。

前日譚へ続きます。

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