第三十四話「その世界で生きていなくてもいいからさ」
「・ー・・・!」
ここはどこなんだ…先が見えない砂漠。
人が住んでいるとは思えないほど廃れている街。
「・ー・・・・・!」
で…お前は誰なんだ。透明な人間の様な物体がこちらを凝視してくる。
「………あぁぁ…?…ゼウスか!…久しぶりだな」
日本語は話せるようだ。
「当たり前だろう…ゼウス…貴様は我をなんだと思っている…」
あれ?今喋ったか?
「喋っとらん…ここは我の領域だ考えてることは全てお見通しだぞ」
「お前は昔からドジだなぁ」けらけらと懐かしそうに笑っている。
ゼウスって誰だ…?「お前ゼウスじゃないのか?!もしかしてお前の子供か?!」
子供…?よく分かりません…
「むぅ…そうか…力がゼウスに匹敵するものだからもしやと思ったが…」
「ひとまず…ここに呼ばれたのには訳がある」心なしか真剣な様に見える。
「お前死んだぞ」そっかぁ…
「結構あっさりしてるな」まぁ自分の実力不足のせいですし…
やっぱり人間程度天使たちにとっては造作もないのかなぁ。
「もし…もう一度生き返れるとしたらどうする?」
出来ることならそうしたいですよ。「お前にはその資格があるんだよ!」
「お前は自分のことを人間と言ったな?違うんだよ…」
「これは全て運命の巡り合わせだ…さぁどうするんだ!神の手下よ!」
何故か、全てこの人の言うことが腑に落ちる。
透明になれるのも、瞬足で動けるのも全て俺の能力だ。
「生き返らせてください」
「あぁ!もちろんだ!”コレー”を救ってやってくれよ!!」
「そして…もう一つお前に良い報告がある」
「お前…今回初めて死ぬんだよな?」えぇ…
「神に選ばれたものは何でも一つ…願いを叶えられる」
「お前の望むものはなんだ?」
そんなの決まっていることだ。
「俺を強くしてください
これ以上誰も死なない様にしたい」
「あぁ!いいだろうとも!行ってこいよ!運命を変えに!」
はい、行ってきます。「名を授けよう!ハーデス!お前の名はハーデスだ!」
「やぁ」「え?」後ろ姿のミカエルに話しかける。
体の傷も腕も治っている。体も妙に軽い。
「今際の際で言うことはあるか?」「…やっぱり生意気なんですけど~」
槍を構える。ミカエルも同様、手を震わせながらも剣を構える。
全部どうでも良かったんだ
他人事だったから
今理解したよ
腐りきったこの世界は、全て運命って奴の仕業だ。
0.00001秒、誰にも見えない速度でミカエルは
一度きりの運命を動かすチャンスのため剣を振るう。
…おめでとう
槍がミカエルの心臓を一突きにしていた。
「言い残すことは」「ははっ別に無いし~」
精一杯笑顔を取り繕うとしている。痛みでそれも難しいようだが。
「ねぇ…私精一杯やれていたかな~」「しらん」
「ペルセポネちゃん…可愛いんだよ~?知ってる~?」「…しらん」
「ゼウス様の子供でね~妙に賢いんだ~」「…」
「実はペルセポネちゃんに魔法を教えていたこともあるんだよ~?」
「”……あなたたちにもペルセポネちゃんのこと…分かる日が来るよ”」
「私…いつからこんな駄目天使になったんだろうね~」「……」
「もしさ…時の神様に出会ったら言ってよ」
「世界をもう一つ作って…今度こそ彼女を幸せにしてくださいって」「………」
「私はその世界で生きていなくてもいいからさ」涙を流すミカエル。
「じゃあ地獄で待ってるね~」目の光が無くなる。
大嫌いだ、お前らも俺もみんなみんな。
死ねよ…死んでくれよ…




