第三話「訓練」
すがすがしい朝、昨日はあんなことがあったけど気分爽快。
小鳥のさえずりが聞こえてくるようだ。
さて、まずはコーヒーでも…
「今日からあなたには訓練をしてもらうわ」
「ふぇ?」
間抜けな声が出てしまった
そうだ、俺帰れないんだった。
「訓練…ですか…?」
「そう、訓練よ」
昨日と変わらず、不愛想に答えるペルセポネ
「具体的には?
「そうね、あなたには私の従者になってもらう。でも、あなたはとても弱いわ」
むっ…俺はDQN男を倒したことがあるんだぞ
あまり舐めないでもらいたい。
というか何故いきなり従者なんか…
この荒野を一人さまようよりはましだが。
「すみません…話がよくわからないです
なぜいきなり従者にならないとなんですか?」
ペルセポネは少し悩んだ素振りを見せた後、口を開いた
「そうね…この世界には…あなたたちの世界で言うところの地獄と天国なの」
そうなのか、でも不思議と驚きはしない。
翼の生えた女の子もいたりするのだろうか
「私は天国にある…ある山に行きたいの
でも私一人ではいけない
だから…この地獄で特別な力を持つあなたが必要になるかもしれないの」
なんだか照れくさいな
「もちろん…そこへ行けばあなたを開放するし報酬だって用意する
巨万の富だって…不老不死だって」
おぉ、美女と旅を共にすることもできるし
なかなか悪い話じゃなさそうだ。
「だめ…かしら…?」
うるうるとした瞳を輝かせるペルセポネ
そんな悲しい顔するなよぉ…
「いえいえいえ!!もちろん!お供しますとも!」
ちょろいとか思われてるのかなぁ…
「それで…特訓というのは具体的に?」
「あなたはあちら側の人間なのよね?
なら魔法は使えないと思う
だからこの槍を使って特訓するわ」
魔法があるのか。それはずいぶんと夢のある世界じゃないか。
投げやりに渡された槍を慌ててキャッチした
槍だけに。
「この世界って魔法があるんですね!俺…魔法大好きです!」
「あなたにわかりやすく言っただけ…そんなに楽しいものでもないわ」
あいかわらず不愛想だなぁ。
特訓がはじまった
基本的には周りにいる「化け物」たちが訓練相手だ
最初は怖くてまともに目も合わせられなかったが
相手が手加減をしてくれると分かったとき
なんだかかわいく思えて、今ではなんとか訓練についていけてる。
この世界には太陽と月がないため、基本的に時間にルーズだ
どちらかが怪我をしたらいったん終了。
回復の魔法をかけ終わったらまた再開、基本的にはこんな感じだ
訓練が終わったらみんなで食卓を囲む(具材はあまり聞いていない)
あと、最近外国語を学び始めたんだ。もう恥はかきたくないからね。
ちなみに、魔法の使い方は「イメージ」らしい
単純に想像するのではなく、体内全てを意識、集中することで
魔法陣が完成されて魔法が完成する。
あとは頭の中に出てきた単語を唱えれば良いみたいだ。
なので漫画にある魔力切れとかはないみたい。
3年の月日が流れた。
同じような日々の繰り返しであるが、正直苦ではない。
目標もなく、ただバイトをこなしていた頃と比べたらずっとマシだ。
俺はいつかあの人たちの足を引っ張らないくらい強くなって
いろいろなところを冒険してみたい
「化け物」も俺が思ってるよりずっとよくしてくれる
最初に化け物と思ってしまったことを未だに後悔してるくらいだ。
あの人たちは「人間」だ。
きょうはステキな日だ
はながさいている
ことりたちもさえずってる
そんな感じがする
「おはようございますペルセポネさん、今日は早いですね
いつもルーズなのに」
「律」真剣な眼差しでこちらを見てくる。
「お前に人ならざる化け物を殺してもらう」