ころしのあいず、にびょうまえ
「ここは…」
背中に乗った後
寝てしまっていたようだ
も~!
邪魔ですよ~!
そんなに~くっつかないでください~!
…ここは静かに見守ろうよ…
「あ!お兄ちゃん!起きたよ!」
イザナミの声がする。
「俺は兄ちゃんじゃないぞ……」
寝ぼけながら答える
日差しが温かい。
小鳥のさえずりが耳の奥を通過する
脳が幸せだ
ここは落ち着くな
二度寝としゃれこむのもいいかもしれない。
「あと5分だけ…」
そんなテンプレの様なセリフを言うことになるとは…あぁ…瞼が重くなってゆく…
「おい!お前!」
寝ぼけ顔を軽くはたかれる
なにをする
てんしさまに
わたしはいきているんだぞ
あらやだ!
……鈍い音が響き
頬が少しじんじんと
する痛みで目が覚める
…どうやら布団に寝かされていたようだ
上半身を起こし
あたりを見回してみると
そこには似た顔立ちの少年少女がいた
「聞きたいことがある!」
はっきりと、芯の通った声で
少年は口を開く。
「な…なんでしょうか…」
正面にはイザナミと…誰だ?美少年のようだ。
頭にはてなを浮かべているとイザナミが口を開く。
「お兄ちゃん!自己紹介してないでしょ?!」
「あぁ…確かにそうだったね…」
先ほどはあんなに芯のある声だったのに
今ではすっかり弱気な声になってしまっている。「僕の名前はイザナギだ」
一言発するとイザナギは黙ってしまった。
「ちなみに!私とイザナギは兄妹なのー!」
そうだったのか
どうりで顔立ちの良い訳だ。「俺は律です」
本来目の前の相手は殺すべき相手だ
無駄に喋る必要もないだろう。
その調子ですよ~!
「変わった名だな…」
怪訝そうにこちらを凝視する
「…まぁ良い…律…お前に聞きたいことがある」
空気が変わる
「お前…何者なんだ…?」
こちらへ敵対心を抱いているのを感じるが
畏怖しているようにも見える
「…お前…前世の記憶はあるか…?」
「あ…あります…というかまだ死んだこともないです…」
耐え難い雰囲気の中
声を絞り出す
「…足もあるな…記憶もある…死んだこともない…」
「…もしかして…」
頭を下げ
掌を頬に当てている
ぶつぶつと独り言をしているようだ
「え…え…何事?!」
割って入るイザナミ
この耐え難い雰囲気に嫌気がしてきたのだろうか。
だが、そのおかげで少し場の雰囲気が緩くなる
「別に大丈夫だよ
ただ…少し席を外してくれるかな?」
「わ…わかった…」
ふすまを開き
抜き足で歩くイザナミ
「……場の雰囲気を悪くして悪かったね」
「いえ…」
「律…お前は限りなく神に近い何かだと思う」
「…普通は神になると人間時代の記憶を失うんだがな…
神と人間のハーフだったりするのか…?」
考える仕草をしながら、ひとり空虚を見つめている。
それ程までに俺が特異体なんだろうか
「あの…」
「あ…悪い」
話を遮ると少し機嫌が悪くなったようだ
頭を振り、邪悪な考えを追い払ってるように見える。
「何か特別な…いつの間にか会得していたものはあるか?」
神…?
とりあえず槍のことだろうか「この槍のことですかね…?」
気付いたら手元にあったんだ。
多分これのことだろう。
亜空間から槍を取り出す。「お前…!魔法も…!」
仰天を隠せない様子だ「…まぁ良い」
「ここに来たのも運命なんだろうな…」「折り入って頼みがある」
正座をするイザナギ。
「僕たちと一緒に天使を殺さないか?」「…え?」
なんでいきなり
ミカエルと正反対のことを急に言った為、少々戸惑う。
「僕は…あいつらの奴隷じゃないんだ」
怒りの満ちた瞳をしている
「ただ毎日毎日天使様のために
奴隷のように働き…自由なんてあったもんじゃない」
「ここは…自由を求めた人たちが
やっとの思いで来る場所なんだ」
「律…お前も理不尽に感じるだろう?…どちらの味方に付くんだ…?」
言い聞かせるように声を震わせこちらへ語り掛ける。
この選択肢を間違えると一生後悔する気がする。
天使を恨む武力の人間
人間を恨む魔法の天使
俺は………




