第二話「おはよう 你早 Selamat pagi」
どこだよ、ここ。言葉が出ない。そりゃあ痛みで声が出ないのもあるが
ここは現実とは思えない。だが変に冷静だ。
どこかで見たことあるような…。ゲームのやりすぎか?
荒れ果てた荒野、不気味な植物に
…なんだ?白色の髪の人が遠くにいる。
そして周りには「化け物」がいる
オタサーの姫はここでもあるんだなぁ
「………痛!!」そういえば怪我をしていたんだった
血が出てる、骨も折れているだろう。
近くに「化け物」がいなくてよかった。
さっさと戻ろう
数十分後…
くそぅ この年にもなってハイハイで動くなんて思ってなかった。
痛いよぉ…ままぁ…
「はぁ……はぁ…くっそあの馬鹿力どもめ…
今度あったら金玉むしり取ってやる…
うぅぅ…ゲートには規制線があったはずなのに…」
ぽつぽつと苛立ちを覚える。あぁむしゃくしゃする…
なんで俺がこんな目に…
ザッザッザッ…
なんだこの音
近づいてきてる?
地を踏む音が近くで聞こえる。
おいおいなんだよ
ザッザッ…
後ろを見ると
すぐ近くに「化け物」が来ていた。生きていることを確認すると
「化け物」はにやりと笑い、こちらに小走りで向かってくる。
変に冷静だ
もうすぐ食べられて死ぬから?なぜ受け入れられている?
俺は死にたくない。
生きて、病院に行って家族のみんなに
心配をかけてごめんなさいと言いたい。
今回あのJKを助けて少しだけ考えが変わったんだ。
一歩踏み出す勇気をもらえたんだよ
もし生きていたらどこでもいい、正社員になろう。
資格も取ろう、合コンにも行こう。
付き合って、いつか結婚して
頑張って頑張って、普通の幸せを手に入れてみたい。
「死にたくない…死にたくない…」
無情にも、足音は俺の真後ろに
あ
俺は激痛の中、意識がこと切れた。
「ん…」
どこだここ、家のようなところに連れられてきたのか。
そういえば死んでいない。傷もない。
なんだ?もしかして異世界の住人は優しかっ…
静かに扉が開く
「おはよう…你好…Bom dia…Bonjour………」
なんだこの女性。外国語ができる自慢か?
なら俺だってやってやる!
「あ…あんにょん…」
「ああ…あなた日本人ね」恥ずかし!!
「私はペルセポネ…あなたは?」「り…律です」
凛とした表情の彼女。あれ?こいつさっきの白色の髪の人じゃないか。
なかなかのべっぴんさんだ。
「ところであなた…なぜ生きていられるの?
ここだけは普通生きていけない場所なのよ。」
「ここだけ?」
「ここだけはここだけよ」
なんだこいつ…
「…自分でもわからないんです」
「…そう…ここには何の目的があってきたの?」
キョトンとした顔をしている。
俺がここにいるのは珍しいことなのだろうか。
「目的なんてないですよ?俺はただ家に帰りたいだけ…」
「あきらめなさい…あなたにはやってもらうことがあるわ
いきなりで悪いけど悪く思わないでね」
突如強い口調で喋るペルセポネ
「え…急になんなんですか?」
この女の人が嘘をついていないということだけは何故かわかる。
ただ、感覚がないんだ。もうこの世界でしか生きられないという感覚が。
「少し…寝かせてくれませんか?」
「寝る?そうね…いったん考えをまとめなさい」
どこなんだここは。もう帰れない?やってもらうこと?
話をまとめよう。
俺は死んではない痛みもあるし、感情だってある。
ここは何もない荒野だ。とても暑くて、普通の人は生きられないだろう。
なのに俺は生きている。そして「やってもらうことがある」
「…うん……よくわからないなぁ…とりあえず今日は寝て…明日考えよう……」