第十九話「未達世界の救世主」
意識が朦朧としながらも
尖っている鉄の棒を手に取る
「アラエル!」
「…え……あ…!…ひゃい!」
「槍を俺に!」
声を出すので精一杯だ。はやく槍を。突然の光景に慌てふためくアラエル。
あせあせと魔法を唱える。槍が宙に浮いたと思えば、俺の手にすぽりと収まる
「隠れ兜」槍が兜に変形する。姿が見えないようだ。
悪魔たちは滑稽にも思えるほど慌てている。
アラエルも口をぽかんと開けている。
そのあとは思い出したくもない。
見えない何かに一方的に殺される悪魔。必死に子供を守るかのように
命乞いをする者もいた。もちろん、全員殺してしまったが。
血まみれの姿でアラエルの方に歩く。
「え…えぇぇとぉ…」
なんと言葉を掛ければ良いか分からないという様子だ。
「とりあえずお体を綺麗にしましょう!」
「上から水を適度に出す魔法」
「・|・|・・・」
上から水が降ってくる。
といっても洪水のようなレベルではなく。
ホースから出た水を浴びているようだ。
体がきれいさっぱりになった。
「体が治る魔法」「・・・|・」
体にできた傷がみるみるとふさがっていく。
「ふぅ…助かりました」アラエルに視点を向けると、少し怯えているようだ。
「やはり…あなたは…」
いつものようなボケっとした表情ではなく、いつになく真剣な様子。
「…ひとまず戻りましょうか…お疲れさまでした」
にこりと笑うアラエル。だが、その表情はぎこちない様に見える。
~運転中~
「…やはりあなたには特別な力があると思います」
正面を向き、ぽつりぽつりとつぶやく。
「この未達の世界を定められる…王…いや…神でしょうか…」
「ともあれ…ガブリエル様があれほど言うのも納得です」
なんだか照れくさい。
正直、他の天使たちと同様に魔法が使えるようになっただけだ。
「とりあえず!これで野菜が作れるかもしれません!」
いつものように、元気よく
はきはきと喋る
そんな彼女に少し違和感を抱きながらも
ひとまず考えないことにした。
「……そうですね!
今日はハンバーグですよ!」
「やったー!」
無邪気に喜ぶアラエル
やはり野菜を欲していたのだろうか
夜になった
星空の下で
三分クッキングの開幕だ。
これはまさに青空レストランだろう。
いや、夜空レストランか。
「食物繊維やカロテンが含まれている野菜を出す魔法」
「・・・ー・・・・」
にんじんや玉ねぎが宙からぽろぽろと落ちてきた。
「おぉ…すごいな…」「ようやくお野菜が食べれます~」
涙目で喜ぶアラエル。それほど喜ばれると、こちらもうれしくなる。
「丸い鉄を出す魔法」「〇ー」
フライパンが出てきた。何故か取っ手がないが許容範囲だ。
「にわとりの卵を出す魔法」「・・・」
慌てて空中でキャッチする。落としたりでもしたら大変だ。
「木の皿を二枚出す魔法」「〇||・・」
これでひとまずは準備完了だろうか
アラエルが手際よくタネを作る
人数分作ると、炎の魔法を使い
フライパンの上にタネを置きゆっくりと焼く。
こんなお嫁さんがいたら幸せだろうなぁ。
時折聞こえる鼻歌が心地よい。
「アラエル特製ハンバーグの完成です!」
出来上がったハンバーグはとても美味しかった
美味しいと褒めると、アラエルがにまにまと笑い
思わず俺も笑ってしまった
寝る準備をする
「きょうはありがとうございましたぁ…」
ねむけにおそわれながらも
ぼそぼそとはなす…
「いえいえ!こちらこそ!
お陰でビタミンも摂取出来ましたし!
明日からは完全体アラエルです!」
なにいってるんだぁこいつ
「ほんとに…こちらこそ…ありがとう…
これからもよろしくおねがいします…」
今日の出来事で、少しアラエルとの距離も縮まった気がする
瞼を閉じる
三年後
ようやく着いた
ここが最初の目的地
「エーリュシオン」だ。
野菜などの地球にあるものは
天界の住人だと「イメージ」が難しいです。




