第十六話「山にも登るし手紙も書くよ」
「山の名を山祇と言います
ここからずっと東にある
街に向かい…更にそこから南に向かい
地域紛争があるところを抜けて少し歩けばあります」
料理に舌鼓を打ちながら会話に参加する。「どれくらいかかるのでしょうか…」
「そうですね…普通に歩けば人の子だと20年は掛かるでしょう」
20年…その頃には立派なおじさんだ。さすがに待てない。
「…どうにか早めることはできないのでしょうか」
「えっとぉそうですねぇ…」しどろもどろと慌てているのが分かる。
「…あまり良い手段とは言えないのですが…仕方ないか…」
ボソッと喋ると
ふぅと息を吐いて
アラエルは立ち上がった。「…今日は解散しましょうか」
情けない俺を見て呆れてしまったのだろうか。
「お会計6銀貨と銅貨6枚になります」
アルバイトの地球人のようだ。相変わらず足がない。
「一万円札で」
「…それは使えませんよぉ」にやけ顔の地球人
そういえばお札は使えないんだったな…「いいですよ!流石に払いますから!」
あせあせと慌て、花柄の財布から硬貨を出すアラエル。
奢られるなんてみっともないなぁ…
「なんかすみません…奢ってもらっちゃって…」
申し訳なさそうな顔をしている顔を見てアラエルはにまにまとする。
「ふふっ…ペルセポネさんにも同じこと言われたなぁ」
懐かしそうに空を眺めている。
「一旦帰りましょうか!
律さんも考えをまとめておいてくださいね!」
びゅんと空を飛び、空中を駆け抜ける。「それでは!さよならぁ!!」
元気がいいなぁ。惚れてしまいそうだ。
冗談はさておき俺も宿に戻るか。
…あれ?俺宿代持っていたか?
その日は土下座をして
出世払いということで勘弁してもらった。
早朝、大きなクラクションの音が鳴る
「うるせぇ…なんだよこんな早朝に…」
カーテンを開く「律さーん!律さーーん!」
周囲には人が集まっている……正直他人のふりをしたい。
というかなんだあれ。車らしき物の中からアラエルの声がする。
このまま叫ばれるのも迷惑なので急いで下へ降りる。
「なんですか…こんな早朝に…」「ふっふっふっ!」
自信気な顔のアラエル。
「なんと!ギルドの退職金で車を購入しました!」「しかもSUV!」
無邪気にはしゃぐ姿を見て思わず笑ってしまう。
「どうしたんですか!いきなりそんな高価な物買って!」
思わずテンションが上がってしまう!
「律さんのためにわざわざ買ったんですよ!」「やったー!」
「聞いてください!この音を!」エンジンの音が早朝の町に轟く!!
「かっこいー!!」「ですよねですよね!!」
「さらに!車内を私のお手製ぬいぐるみで埋めてみました!!」
「うおー!かわいいー!」「えへへへー!」
ギルド内にいた天使たちがとりこになるのも無理はない!!!
「試運転がてら乗ってみましょう!!!」「行くぞー!!!」
爆音を鳴らし燦々と煌めく太陽の下!!!!
人間と天使は車を走らせていったのだ!!!!
その後、俺たちは見回りの天使に
怒られるまでこの町の暴走族になっていた。




