第一話「運命ってやつ」
ある昔、突如地球上に大きなゲートが空から降ってきた。
もちろん世界中大騒ぎで、地球外生命体が侵略してくるだの
天使様のお迎えだの、あることないこと言われていたらしい。
神の気まぐれなのか悪魔のいたずらなのか。
だが、それは人間のちっぽけな好奇心を
満たす為には十分なおもちゃなのだ。
運命は巡り合わせ。同じクラスの仲の良い友達。
その子と誕生日が一日違いだったとする。
それは偶然なんかじゃない、きっと運命の仕業なんだよ。
俺の名前は太陽 律(18)中卒フリーターだ。
勉強はしたのだが全くと言っていいほど覚えられなくて無事中卒になった。
今日も小銭を稼ぐ為街を歩く。
「相変わらずコンビニのバイトって時給安いな
そろそろ別のバイト探してみようかな……」
「…ん…」銀色の柱が目の前に覆いかぶさる。
上を見上げると、鳥居のような形をした建造物があった。
名を「ゲート」という。何度見てもゲートの大きさには目を引くものがある。
きっと、子供はこの先の世界にあこがれるんだろう。
あっちの世界は地球と環境が違うから
行きたくてもいけないんだけどな。
今は調査のために特別な防護服を着た、ごく少人数の人しか行けないみたいだ。
「はぁ…バイトめんどくさ…」そんなことより、思わず溜息が出る。
毎日毎日、奴隷の様に働いているんだ。給料は雀の涙程しかないが…。
それでも、生きていくためには働かないといけない。
「ゲートあたりに来てよ!12時に集合ね!」
JKがゲートの柱にもたれかかり、待ち合わせの電話をしている。
「いいなぁ休みがあって…俺は年中バイトだってのに…」
くそが、苦労を知らなそうな顔をしやがって…
あーあ…俺だって高校生になって青春したかったよ…
高卒だったらもう少しまともな職にも就けただろうに…
そんな叶わぬ妄想をしながら一人歩く。
「やめてください!警察呼びますよ!」
なんだ、さっきのJKが何か言ってるぞ?
「そんなこと言わずにさ!どこかでお茶でもしようよ!」
ナンパされているようだ。
一人の女性に複数の男が囲い込むなんて卑怯じゃないか。
「誰か!誰か助けてください!
この男の人達が付きまとってきます!!」
誰か助けてやれよ。
こんな大声で人目の付くところで叫んでたら迷惑だろう。
「うるせーな
無理やり犯してやろうかなぁ」
ぼそっと会話が聞こえる。こいつらマジでやりそうだ。
全く、人目の付くところでやるなんて馬鹿だなぁ。
これは俺よりバカだな。
「うっ…ひっ…誰か助けて…」女の子は泣いていた。
泣き落としなんてかわいいじゃないか。
どうする?このままだとあのJKは乱暴されて
一生心の傷にされる可能性が高い。
お先真っ暗な俺が男どもをボコボコにして
この子と連絡先を交換。ゆくゆくは結婚をする。
そんな可能性を信じて助けに行くのもいいじゃないか。
あいつら馬鹿そうだし
一発かましたらすぐ逃げるだろう。
「おい女…そろそろ黙らないと殺すぞ?」「ひっ…!…すみません…」
さらにJKがおびえているじゃないか。待ってろよかわいこちゃん!
俺があいつらをボコボコにしてやるぜ!
必殺!
「金的ぱーんち!」
一人の男が苦しそうな顔をして崩れ落ちた。「見たか!これが俺の…」
「なんだお前!いきなり人のこと殴っといて正義ずらしやがって
こいつ殺そうぜ!お仕置きが必要だ!」
胸倉をつかまれる。そうだ、こいつら複数いるんだった。
俺もバカでした。
体をホールドされ殴る蹴るの暴力だ
痛い、複数で全身を殴るのは卑怯だろう。やるなら正々堂々一対一で…
「なぁ!こいつをゲートに入れたらどうなると思う?
噂じゃゲートには見たこともないような
化け物がうじゃうじゃいるらしいぜ?」
「賛成~俺らに歯向かったこと死ぬほど後悔させてやろうぜ
まぁ今から化け物に食われて死ぬんだけどな」
誰か助けろよ。そうだ、あのJKは?
いない、後ろ姿がうっすらと見える。
どうやら逃げたらしい。くそが。
死ぬのかな、誰も助けてくれはくれない。
皆見て見ぬふりをしている。
俺の人生情けなすぎだろ。18年間何か成し遂げてきたのか?
体が動かない。ふわりと宙をまう。
やはり走馬灯というのはあるものなのか
宇宙にいるような、無常力に感じる。
「いだ?!」鈍い音が体内に轟く。
どこかの骨が折れたようだ。
体が思うように動かない。
……俺死んでない…?
ここは確か人が生きられる環境ではないはず
空気も満足にないといわれているんだ。
「一体何者なんだ…?」
そんな、おとぎ話の主人公のようなことを言うと同時に熱風が吹く。
顔を見上げるとすぐに地球ではないことに気が付いた。
「ここは…どこなんだ…?」