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第一次星間戦争  作者: 消耗品の集合体
1/1

復活

アームストロングは漆黒と青白いなんとも言えぬ光に分けられている月を眺めていた。地上ならば満月なはずだが、月軌道上にいるのだからこうなるのは当たり前だ。

そう、今彼はまもなく月面着陸船に移り、決死の月面着陸を行おうとしているところだ。

しかし、彼は今から降り立つ月の質量にも勝る不安に押しつぶされる寸前であった。それはただ月面着陸後のドッキングの困難さゆえではない。

先ほど、地球のレーダーで流星にしては奇妙な軌道の飛翔体の反応がアポロの近くにあった、という地球からの通信があったからだ。

地球のレーダーで観測しているのだからなにかの間違いという可能性が高いが、万が一にも月になにか生命体がいるのなら...

そんなことを考えている時、小さな窓から目をつぶりたくなるほどの光が差し込んで来た。

それを頭で認識する間も無く、アポロはデブリの中身入りとなった。


ホワイトハウスでは、臨時の会議が開かれていた。

この自体にはさすがのエリートたちも、落ち着きがなかった。

軍上層部の意見としては、ソ連からなにか攻撃を受け通信が途絶えた、というところに落ち着いていた。

しかし、アポロを追跡し、さらには極端な曲線軌道までしながら攻撃できる技術が本当にあるのか、

ただ爆弾かなにか仕掛けられてただけじゃないか、はたまた月の引力か何かの影響を受けた小惑星が衝突しただけじゃないかなど様々な憶測が飛び交い収集がつかなくなったため、この日の結論はただの事故として終わった。

無論表向きの発表も同様だ。

そのためアポロ11号が儚く事故で失敗したという発表は国民を絶望させた。

しかしこの絶望は突然衝撃に変わるのであった。


事故のことを報道しているテレビの雰囲気が突然変わった。そしてハーゲンクロイツをバッグに、何年も前に滅んだはずのナチスの制服を着た男が出て来た。そして、人々が異変に気付きテレビに注目したのを見計らったように絶妙なタイミングで口を開いた。


「我々は、そちらの歴史書によれば15年も前に滅んだことになっている、ドイツ国家社会主義労働者党の月亡命政府である。

大戦当時、我々が大量のロケットを投入していたのはご存知だろう。

だが君達劣等民族が未だに気づかない極めて重大なことがある。

あれはただの大砲としてではなく、月への移動にも使用したのだ。

そして15年遅れてようやく君達が当時の我々の技術に追いついたようだが、もう遅い。

すでに我々は地球の航空機と同じように、ただの移動手段としてではなく兵器として宇宙船を使いこなしている。

さすがに劣等民族もこの状況を見てどうするべきかわからないような馬鹿ではないだろう。

以上、ドイツ国家社会主義労働者党月亡命政府の発表だ。」


その後、通常のテレビの画面に切り替わった...のだがアナウンサーたちも動揺を隠しきれてないようだ。


一方、もう一つの超大国ソ連。

時の指導者、ブレ..おっとww2~の実名はアウトだ。えぇと...まぁ書記長でいいや。

その書記長は焦っていた。それは先ほど、月亡命政府からこんな電文が届いたからだ。


「我々は一刻も早く故郷の土を踏めることを望んでいる。

しかし貴国が我々の故郷、ドイツの半分を占領しているためそれは叶わない。

そこで我々は年内の返還を要求する。

この要求が達成されない場合は、武力行使も躊躇わない。」


アメリカにも同様の電文が来ているだろう。

しかし、まだ戦力もわかってない敵相手にこんな要求を飲めば、ソ連の威信はアメリカとともに崩れ去る。

それに、ドイツを与えたとしてそれでやつらの要求が終わるとは思えない。

大祖国戦争の時もそうだった。

かといってやつらと戦うのは無謀だ。

地球に降りてくるのであればいくらでもやりようはあるが、衛星軌道上からミサイル攻撃でもされたらどうしようもない。

一応、宇宙船をベースにした宇宙版ミサイルキャリアーの計画はあるが...そんなもので対抗できるのか、一日中悩む日々だった。

それはアメリカでも同じで、アポロの技術を使って核弾頭を月に撃ち込むだとか、開発中の弾道弾迎撃ミサイルを改造して地球の衛星軌道を防衛するだとかとにかく奇策が多い議論をしていた。


そんな調子で超大国二カ国それぞれが議論に議論を重ねて2週間後。

ある民間企業がペンタゴンに書類を送って来たのだが、この内容が衝撃的であった。

なんと、反重力エンジンが理論的には可能だというのだ。

怪しいが試してみる価値はある。

早速ペンタゴンはその民間企業の研究所に赴き、実現可能か調査した。

その結果、30分ほどは起動できそうだということだった。

ともなればさすが冷戦中、すぐに多額の予算が下され翌週にはエリア51で大統領も赴き実証テストを開始。

無人のヘリに取り付け、地上から有線接続し起動。

すごい勢いで上昇した...と思いきやバランスが崩れ墜落。

そりゃそうだ。姿勢制御装置が一切ないんだから。

しかしこれは歴史の分岐点とも言える偉大な発明だった。

もちろんこれを搭載した戦略爆撃機やミサイルは素晴らしいが、もう一つ搭載できるものがあった。

感のいい人はミサイルに使えると言うことで気づいているだろうが...

宇宙船だ。

一見、宇宙は無重力なんだし関係なさそうに見えるが、宇宙船だってずっと宇宙にいるわけではない。

そう、打ち上げと帰還だ。

帰還は落ちてくるだけだが、打ち上げは地球の重力と戦わなければならない。

大体はロケットで頑張るのだが、それだとあまり大きなものは運べない。

だが反重力エンジンは幸い電気で動かせるので、原子力発電機も搭載すればほぼ無限にものを運べる。

月亡命政府との宇宙空間での戦闘も夢ではない。

しかし、今から宇宙船を建造したところで、間に合うのか...間に合ったとしても

宇宙空間での戦闘なんてできるかどうか...

一応、既に開発に取り掛かっているが、まぁ実用的な案がまとまるのは数週間後になるだろうしそれまでは考えていてもしょうがない。

「大統領、報告書です。」

え?早くない、と思ったが内容が酷く、現在予備役のアイオワ級4隻に反重力エンジンと原発をつけ、宇宙船とするといった子供が考えそうな代物であった。

宇宙では月の引力下になるまで弾薬が直進するし、ミサイルより戦艦の方が効率がいいらしい。

しかし具体的な計画や予算が一切書いていない。

早いわけだ。

だがまぁアイデアは悪くないし、軍上層部の意見も聞いてみるか。 


空軍司令官「アイオワ級4隻じゃ火力が圧倒的に足りない。それだったら核をミサイルで運搬したほうがまだいい。」

兵站司令官「4隻が敵艦と十分に戦え、さらに月表面を焼き払うだけの弾薬をどうやって輸送するのか。」

海軍司令官「月の面制圧はそれでいいとして、アポロを攻撃した飛翔体の対処、似たような重装甲の艦艇を敵が運用していたときの対処はどうするのだ。敵艦は重力を発生させていないのだから砲弾を当てるのは無理だぞ。」


ふぅむ...まぁ色々問題はあるようだが、ここは我が国らしく艦艇を増やし、物量でなんとかなるだろう。

火力はアイオワの他にも海軍予備艦隊の艦艇を惜しみなく投入すれば解決する。さ

らに国防予備艦隊の商船も宇宙にあげれば補給も大丈夫だろう。

足りなければ同盟国の日本、英国にも要求しよう。

と思いまたもや上層部に聞くと...

今度は全員に同じことを言われた。

「予備艦艇を動かすだけの人員を現役艦艇から引き抜いたら稼働率が大幅に低下し、対ソ戦略が崩れる」

そりゃそうだ。なぜ私はそれを考えていなかったのだ。

だがまぁソ連とは一時的に不可侵条約を締結するなりやりようはある。

と、いうことで早速キューバ危機の際、お互いの勘違いでの核戦争勃発を防ぐためにクレムリンとホワイトハウス間で繋いだホットラインでソ連と交渉しよう。


一方ソ連

「反重力装置なんてものを本当にやつらが手に入れたのか?」

ブレジネフはkgbの高官にしつこく問い詰めた。

「えぇ。かなり信憑性は高いかと。」

これが本当だとしたら月どころの騒ぎではないぞ。重量関係なく核弾頭をソ連まで運べるのだから。

ブレジネフは真っ青になった。そこに外務省の職員が無言で文書を手渡して来た。

ホワイトハウスからの電報のようだ。その内容を簡単にいうと、


ナチスの要求を決して飲むわけにはいかない。よって、我々地球の超大国は団結してナチスに対抗すべきである。よってナチスを倒すまで不可侵条約を締結したい。


と言った感じだ。

まぁここまで言うということは、反重力装置は本当なのだろう。


アメリカ

「大統領、このような文書を国務省が持って来ました。」

ソ連からの返信だ。その内容は、


我が国も貴国と同じ思いだ。決してファシストどもの犬にはならない。しかし、ナチスの脅威は全世界共通である以上、月攻略戦は貴国だけではなく、国連軍として実行する方が好ましい。


と、いうものだ。

国連軍などとは言っているが、要するに自分らも作戦に加えろってことだ。

しかし、そうなると国連加盟国で作戦に参加する国すべてに反重力装置の技術提供もしなくてはならない。

困ったもんだ...

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