07 夜営
楽しそうに野営料理してるマーリエラさんを見ていたら、
なんだか世の中のめんどくさい諸々なんてどうでもいいやって思えてきちゃうんだよな。
やっぱり惚れちゃったんだろうな、俺。
普段のツンとしたお澄まし顔も可愛らしいし、
さっきみたいに感情のままにエキサイトしちゃう姿も愛おしいし。
以前、一蓮托生って言われたけど、
この人となら、何があっても生涯添い遂げられそうだなって。
「はい、お待たせしました」
「今日は、グラナダヒキガエルのすり身団子のスープです」
「疲労回復に抜群の効果があるそうなので、たくさん食べてくださいね」
「鼻血やら何やらが我慢出来なくなる程ではないそうですから、遠慮なくどうぞ」
……いただきます。
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お味の感想は、食べた人のみぞ知るってことで。
とりあえず、例のスッポンみたいに、そっち方面に効きすぎる料理じゃなかったようでひと安心。
いい感じに疲れが取れたのは、プラシーボでは無いと思うよ。
後片付けを済ませたら、焚き火を囲んでまったりタイム。
「私って、重たい女でしょうか」
まだお姫さま抱っこしてませんので正確には把握できておりませんが。
「…………」
……にらまないでくださいよぅ。
重たいっていうより、一生懸命が止められないのかなって。
飼い主が好きすぎて甘噛みの加減が出来ない、血が出るまで噛んじゃう子猫、みたいな。
「なんだか微妙な評価をされちゃいました……」
この場合のポイントは"子猫"であること、ですね。
成長したら、さぞや甘噛み上手な美猫さんになるだろうなって。
「今の私では役不足、なのですね……」
子猫には子猫の良さがあるので、無理に大人っぽく振る舞わなくても良いのでは。
「ちなみに、ノアルさんには子猫を愛でるご趣味は」
俺の趣味は終始一貫してますよ。
"子猫でも大猫でも、ネコミミは等しく尊い"
たった今出来たばかりの座右の銘です。
「からかわれているような、真理を語られているような」
「でも、それでこそノアルさんです」
まあ、夜営でのよもやま話しなんて、こんなもんでいいんじゃないかと。
「夜番、どうします?」
うかつに眠ると美味しくいただきますされそうなので、極力起きてるようにします。
「いじわる……」




