04 潜伏
協力者さんの手引きで、こっそりとオーバンの街へ潜入。
そして、特務司法官御用達の秘密の隠れ家での、外出厳禁潜伏生活、開始。
この状況では、ヴォル君たちに会いに孤児院に行くことも出来ず。
協力者さんは顔出しNGとのことで、お世話になっているお礼を面と向かって述べることも出来ず。
「潜入任務中の特務司法官は、往々にして孤独なのです」
大変でしたね、マーリエラさんも。
「私は、ケルミシュのギルドではとても楽しくお仕事出来ましたよ」
「皆さん、とても親切にしてくださいました」
ですよね、賢くて性格の良い美人さんは、どんな職場でも大歓迎されるでしょうし。
イキイキしてましたもん、受け付け嬢していたマーリエラさん。
俺なんかのせいで、そんな楽しいお仕事を辞めることになってしまって申し訳ございません。
「いじわる……」
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早速、協力者さんに預けていた通信魔導具で本部に連絡をとったマーリエラさん。
直属の上司さんからの次なる指令は、しばらくはそのまま潜伏生活せよ、との待機命令。
要するに、諸々判明するまでは居場所がバレないよう大人しくしてろってことでしょうな。
俺は構わんのですが、マーリエラさんは大丈夫ですか、期間不定の待機任務。
「私としてはご褒美でしょうか」
「ノアルさんとひとつ屋根の下、誰にも邪魔されずにしっぽり……」
はいはい、協力者さんにご迷惑をおかけしない程度に、ですよ。
「応援してくれるそうですよ、その、いろいろと」
「珍しい食材とか持ってきていただけるそうですし、楽しみですね」
応援とは……
えーと、部屋の鍵とか、がっつり管理せねば。
「解錠能力は、特務司法官の必須技能ですよ」
マジですか……
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いかに外出厳禁の待機状態とはいえ、
流石に食っちゃ寝ばかりの生活はアカン。
ということで、せっかくなのでこの機会にいろいろとお勉強することに。
講師はもちろん、マーリエラ先生。
手取り足取りの懇切丁寧なご指導のおかげで、
この世界の一般常識プラスアルファ程度の教養は身に付いたかと。
お城で勇者候補の訓練生してた頃は、座学関連はスルースキルを鍛えるための場だったので、
こんな風に真面目にお勉強するのはいろいろと新鮮ですな。
まあ、講師がマーリエラさんということが、モチベーションアップの一番の理由ですけどね。
いいよね、素敵な女教師にいろんなことを教わっちゃうシチュエーション。
「ノアルさんも、あちらの世界のこと、いろいろと教えてくださいね」
はい、何なりと。
じゃなくて、出来る限りは。
いいよね、可愛い女子生徒にいろんなことを教えちゃうシチュエーション。




