03 渡河
渡河作戦、大成功!
無事にエルサニア側の対岸に到着。
人目につかないよう、オーバンの街からそこそこ離れた場所に連れてきてもらったので、ひとまずは安全かな。
正直、今は誰が敵なのかも分からん状況ですし。
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「今度はのんびり観光に来てくださいね」
皆さんには感謝しかありません。
本当にありがとうございました。
河の中から手を振ってくれているお姉さんたちに別れを告げて、
濡れネズミの俺たちは着替え出来る場所を探して近くの林へ。
うん、確かに裏ワザだったよ、
まさか、かっぱのお姉さんたちに紛れて渡河することになるとは。
「ちょっと眼差しがアレでしたよ、いかに非常事態とはいえ……」
あー、申し訳ない、
でも、致し方無しですよね、あの状況では。
あれだけの数のかっぱのお姉さんたちに囲まれると、どっちを向いてもかっぱさんですし。
そもそも、あの人数に紛れたからこその渡河作戦成功なわけで。
「……」
えーと、とりあえず着替えましょうか、風邪でも引いたら大変ですよ。
まあ、濡れ濡れマーリエラさんは直視厳禁レベルで色っぽいのですが。
「もう、知りませんっ」
ーーー
マーリエラさんが躊躇していた最終手段は、
ヒルデュ河の守り主、かっぱのお姉さんたちに渡河の手助けをお願いすることでした。
いえ、本物の"かっぱ"じゃ無いですよ、
河川の安全を見回りしてくれている水練達者なお姉さんたちの総称が、
"かっぱ"なんです。
古来より水難事故の多かったヒルデュ河の安全のために、
泳ぎの達者な人たちが集団で見回りする風習があって、
いつの頃からか、"かっぱ"と呼ばれるようになったそうで。
そしていつの間にやら、見目麗しい乙女たちが代々受け継いでゆくという、大変に結構な風習となっていたわけで。
えーと、なぜ大変に結構なのかと申しますと、
着衣で泳ぐことの危険性を知らしめるために、
お姉さんたちは、基本的には上半身ハダカでおられるわけで。
つまりは、先ほどの渡河の際、
大勢のハダカのお姉さんたちに囲まれながら、一緒に泳いで来ちゃったわけで。
うん、マーリエラさんが躊躇していた理由も分かりますよ、
冷たい水の中で頭やら何やら冷やしながらじゃないと、いろいろヤバかったもんな、俺。
「もしかして連絡先の交換など……」
いえいえ、そんなヒマ無かったでしょ。
えーと、着替えも済んだことですし、
そろそろ出発しましょうか。
とりあえず、目立たないよう注意しながらオーバンを目指しますよ。
司法省への報告は、落ち着く先が決まってからの方がいいですよね。
「今回の件、司法省の内部監査が済むまで、私たちは姿を隠しましょう」
「オーバンの街に潜伏している特務司法官は信頼出来る方ですから、まずはそちらへ身を寄せることに」




