13 海
徒歩、時々、馬車便乗、そんな感じで西へと向かうふたり旅。
オーバンの街を華麗にスルーしたら、海を目指してひたすら西へ。
こっち側の街道は、草原と荒れ地を切り拓いた、それなりに整備された道。
例によって、街道沿いに点在している集落で休憩を取りながら、
極力目立たないようにして進んでおります。
それでも、避けられない闘いはあるわけで。
飢えた魔物とか、ちょっかい出してくる野盗とか。
大所帯の野盗に囲まれた時は、流石に"スイッチ"を入れようと覚悟したのですが、その必要も無く。
正確には、あれよあれよという間に、野盗壊滅。
何と言いますか、マーリエラさん無双。
凄腕特務司法官マーリエラさんの戦闘スタイルは、
やたらと切れ味鋭いナイフの双刀使い。
速度全開で突っ込んで、
回避特化の身のこなし、
急所狙いで一撃必殺。
元々、裁く側のお仕事ですので、一切容赦無し。
返り血を浴びない立ち回り、お見事。
「命の大切さを理解していない輩に、掛ける情けはありません」
ごもっとも。
でも、ご自身の命こそ、大切にしてくださいね。
「そろそろ新しい命を……」
えーと、旅暮らしを終えたら、考えましょうか。
「つまり、ノアルさんが落ち着いて子育てしたくなるような安住の地を見つけるための旅、なのですね」
もうそれでいいです……
屍の山を片付けながら、ふと、考える。
マーリエラさんに頼りすぎだろ、俺。
アレなおっさんだからと言い訳せずに、
もっと頑張らねば。
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そんな感じの長旅の果て、ようやく見えてきましたよ、海。
いいよね、海。
俺、あっちの世界では、海と縁遠いとこで暮らしてたから、
見るだけでテンション上がっちゃうんだよね、海。
「海は、ちょっと怖いです……」
あー、そうでした。
こっちの世界って、海は禁忌でしたね。
このリヴァイスっていう大陸、もちろん海に囲まれてるんだけど、
よその大陸とは全く交流無し。
確か、外洋に出るとシャレにならないクラスの魔物がウヨウヨ。
それで、古来より海は禁忌扱い。
当然、遠洋航海技術なんて発達せず。
海にまつわる産業というと、
近海漁が細々と続けられている程度で、
海洋レジャーなんてもんは、影もカタチも無し。
水着のお姉さんと海辺でバカンス、
そういうの、他の召喚者たちが広めてくれないかな、
禁忌なんてモンは召喚者パワーでブッ壊してほしいよ。
せっかくの召喚者の凄いチカラ、
国同士の争いなんかに使ってないで、
よその大陸との交流にこそ役立てるべきでしょ。
おっと、そういえば以前、マーリエラさんが水着って言ってたよね。
つまりは、水着文化はバッチリあるってことですな。
どんなのかな、マーリエラさんの水着。
どっちかっていうとまだ発展途上ですし、
過剰に露出させるビキニ系よりも、
体型を素直に彩るワンピース系の方が似合いそうだよね。
「…………」
あー、申し訳ない。
ってか、こんだけ長くふたり旅してると、
ナニ考えてるのか分かっちゃうんですね、口に出さなくとも。
「発展途上……」
おっと、口に出してたっ。
誠に申し訳ございません……




