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12 バランス


 ご忠告通りに回れ右して、いま来た道をUターン。


 結局、ガルグリスタ王国とは縁が無かったんだろうな。



 あー、マーリエラさんがニコニコ笑顔ですよ。


 あの後、若い衛兵さんたちからいっぱいおみやげ貰ってたし、


 可愛い娘さんは何かと得だよね、ホント。



「あら、拗ねちゃってます?」


 はい、嫉妬心バリバリですよ。


 何だか、旅暮らしをやめて、ふたりきりで山奥に引きこもりたい気分。



「何処へでも、お供します」


 はい、一連托生ですもんね。


 それはそうと、これからどうしましょ。



 南はともかく、


 このまま西に向かってもオーバンに逆戻り。


 東は追い返されたばかりだし、


 後は北、ですかね。



「北にあるのは、ゼハリアの街」

「魔族領との玄関口、として有名ですね」

「特異な位置付けの街ですので、各国の間者が睨みを利かせながら牽制しあっているそうです」

「召喚者であるノアルさんが訪れた途端、静かに大騒ぎとなるでしょうね」


 そんな面倒ごとの種が凝縮されちゃってるような街は御免ですよぅ。



「さらに北には、クルゼス王国」

「国境は、今まさに戦乱の地」

「ノアルさんが今一番近付いてはいけない場所、ですね」


 もしかしたら、"勇者"としてそこに放り込まれていたかも、ですね。



 一緒に召喚された連中、今頃どうしてるかな。


 強い固有スキルをもらえたヤツほど調子に乗ってたから、


 俺なんかは仲間扱いされなかったけどさ。



 それでもやっぱり同郷ですから、


 イチヌケして申し訳ないなって気持ちもあるんですよ、俺なりに。



「私は、ノアルさんが戦争に巻き込まれなかった運命に、心の底から感謝しております」

「今のハルシェリカ女王の権勢は長くは無いだろう、というのが司法省上層部の見解です」

「異常な頻度の召喚魔法の行使、強大な力を持った召喚者たちを囲い込むやり方での国力増強」

「近年落ち着いていたクルゼス王国との関係を故意に悪化させて戦乱を招いたこと」

「為政に携わる重鎮や軍部の不満は、女王の固有スキル『カリスマ』を持ってしても抑えきれないほど高まっており、これ以上の好き勝手は女王自身の身を滅ぼす機会を早めるだけかと」



 あー、あの女王様ね。


 謁見の儀とやらで一度だけ会ったけど、ザコには全く興味無しっていうアレな態度、凄かったもん。


 強さが分かりやすい固有スキルを貰えたイケメンはハグしてもらえてたけどね。



 そっか、固有スキル持ちだったんだ、あのド派手な女王様。


 確かに『カリスマ』バリバリって感じだったね。


 なんて言いますか、何とか歌劇団のトップスターと年末歌合戦のラスボスを、混ぜるな危険しちゃったみたいな感じ。


 ガルグリスタの王妃さまたちが夢中になる気持ち、分からんでも無いけどさ。



「ハルシェリカ女王のハグ、そんなに羨ましかったのですか……」


 いえいえ、自信を持ってノーサンキュー、ですよ。


 俺、あんまりにもケバいと萎えちゃうんで。



 ああいう立ち位置の人たちって、立派に見せるために化粧とかが欠かせないってことも、分からないでもないですよ。


 でもさ、程度問題だよね、結局。


 あそこまでやっちゃうと、逆にマイナス効果しかないんじゃないのって思えちゃうよ。



「お化粧、お嫌いですか」


 えーと、時と場合と程度による、かな。



 例えば、結婚式とかには絶対に必要ですよね、ハレの舞台っていうくらいだし。


 私、化粧なんて大キライッ、なんてポリシーごり押しして、結婚式ですっぴんな人がいたら、ドン引きしちゃうし。


 でも、凄腕左官職人かよってくらいに塗りたくってるのも、やっぱりドン引きものだし。


 もちろん、すれ違った時のほのかな化粧の香りに惹きつけられて、二度見とかガン見とか、視線釘付けさせられちゃうことだってありますから。



 だから結局は、時と場合と程度による、なんだろうね。


 って、なんでこんな話ししてるんだろ、俺。




「とても参考になりました」

「もっと先輩方から手練手管を教わっておくべきでした」


 えーと、マーリエラさんは、普段はそのままでいいと思いますよ。


 それ以上綺麗になっちゃうと、変な虫の心配が今より増えちゃいそうだし。



「複雑です……」


 お互い修行中ってことで。


 一連托生なんですから、この先もいろんな楽しみがありますって。




「とりあえず、どうしましょう、行き先」


 あー、ようやく話しが戻ったね。



 そうだ、西に行ってみません?


 オーバンをスルーして海を目指すって、どうです?



「海……水着、どうしましょう……」


 大丈夫ですって、いざとなったら、かっぱのお姉さんたちみたいにおっぴろげでも。



「……」


 ジト目に殺気を込めるのは禁止ですよぅ……



 ---



 てな感じで、ぶらり旅なふたり旅、継続中。


 相変わらず、予定は未定な行き当たりばったり人生だけど。



 でも、マーリエラさんと一緒なら、


 バランスの取れたいい感じの人生を過ごせそうな気がするよ。



 まあ、旅暮らしの間は、そっち方面での進展は無いだろうけどね。



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