いつかどこかで出会った彼女
「聞き覚えのある声が聞こえた気がした」 ━━━
診断メーカーの結果出た言葉で
物語を作ることになりました
更新頻度は決して高くないので
気長にお待ち下さい
聞き覚えのある声が聞こえた気がした ━━━
ふと、辺りを見回すが
変わらず静まり返っている。
深夜の公園………
自分以外は誰もいない
この公園には最近来るようになった。
イヤなことがあったり
考え事をする時
頭の中を整理するのにちょうど良い。
今日も仕事で色々とあったから
こうしてここまでやってきた。
必死になってこの年まで
仕事をしてきたが
昔自分が描いていた未来とは
ずいぶんとかけ離れてしまったように思う。
たばこに火をつけてひと息つく
口から出た煙が立ち上ぼり
見上げた空で、月がくすんで見える
小さい頃は料理人に。
20代には声の仕事に憧れた。
その関連の学校に通ったりもして
身に付いたものもあるが、
卒業してから全く違う職に進んだ。
後悔がないと言えば嘘になる。
出来るならまた舞台に立ちたい。
皆で作り上げるあの高揚を
未だに忘れられずにいる…………
あの頃より
筋力は減り体力も落ちた。
喉のケアは続けていたし、
声だけならどうにかなるか?
いや、ムリか……。
益体もないことに想いを馳せる
あの子の声が
聞こえた気がしたからだろうか?
もう30年近く前になるのに
なぜか未だに鮮明に覚えている声
思い返せば
アレはいじめだったのだろうか?
小学生当時は体も小さく
からかいの対象になっていた。
見かねた先生が
授業毎に少人数で受けるクラスを
紹介してくれた。
そこで出会った彼女…
ロングの髪に眠たげな眼差し
自分よりも小柄な人形みたいな少女
━━━ 一目惚れだったのかもしれない。
初めての会話は「よろしく」の一言。
文字通り鈴のような耳に残る声
ただ、見た目と違い気は強そうだった。
内向的だったぼくは
休み時間はよく図書室にいた。
その日も図書室で本を読んでいたのだが
ふと視線を感じて振り向くと、彼女がいた。
椅子に座るぼくの後ろに立ち
じっと見下ろしてくる。
よく辿ると
視線は手の中の本に注がれていた。
「これ見たいの?」
そう問うと
「別に……」
と、本から視線をはずさずに言う。
目は口ほどに物を言うとは
よく言ったものだ
仕方なくポケットの栞を
読んでいたページにはさみ
机の上に置き席を立った。
「どうぞ」
彼女は戸惑いながら
こちらに視線を向けた。
「なぜ?」
そう言われ、「読み終わったら教えて」
と言い残し図書室を後にした。
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その日から図書室で
よく彼女と出会うようになった
今までも見掛けていたのかもしれないが
本を読みに行っていたので
意識することもなかったのに
はっきりと彼女のことを
認識するようになった
お互いに示し合わせた訳ではないのだが
窓際に面した席
ちょうど木漏れ日が
眩しすぎない程度に
明かりになる場所
いつの間にかそこが
僕たちの指定席になっていた