第八頁 この世界の魔法について 2
「じゃあ、他の魔法はやっぱり攻撃魔法とかばっかり?」
私がいた地球なら、光属性とかが治癒魔法を扱えるとかはおそらく定番だったはず。
お母さんは私の姿のまま顔を横に振る。
「いいえ、それぞれの属性はみんな攻撃ばかりではないわ。各属性に合わせて、それぞれ治癒魔法も含まれているの」
「え!? 光言とか無言だけが治癒の魔法を使えるとか、そういうわけじゃないの!?」
「もちろんよ」
ミランダお母さんの返答は意外なことだった。
各属性ごとに治癒魔法も完備とか……私の知る異世界物でもなかなかなかったものの気がする。
「例えば、火の精霊がいたとしたら火の魔法を使ったら傷が癒える、みたいな感じかしら。各自分の特性に合っている魔法であれば回復できるわ。逆に合っていなかった場合は攻撃魔法として傷つくことになるの」
「でも、それって精霊の場合に関してになるんじゃ……?」
「いいえ、それぞれこの世界の住人にとっては回復魔法にもなる属性がある、と言うだけの話。言葉って、使い方によっては相手が傷つきやすい物があるのは当然よね?」
「う、うん……つまり?」
「例えば、熱い言葉は心が震えたり、寒い言葉は辛かったりするでしょう?」
「うん、確かにそうだね」
「じゃあ、それは熱い言葉が火言で、寒い言葉が水言と捉えたら、どう?」
「……確かに、鼓舞されるってなることもあるかもしれないよね」
情熱的な言葉で鼓舞されたら嬉しかったりするし、逆に冷たい言葉をかけられたら興奮する変態とかいるとか……そんな感じの話なのかな?
本当にこの世界って言葉は大切なこと、ってことかな。
お母さんは変身魔法を解いて、元の姿に戻る。
「そういうこと! 他にも、軽やかな言葉なら風言、どっしりとした言葉なら土言、眩しい言葉なら光言、暗かったり重い言葉なら闇言、わからない言葉なら無言、みたいな感じね」
「あー……そういうこと、なの?」
「ええ、わかってくれた?」
「まだ、なんとなくー……かな」
私は頬を掻きながらあはは、と笑う。
そういう言葉だから、と受け取っても問題ないけど、言葉に属性がある、みたいな発想はなかったから、これからもっとお母さんに魔法のことを教えてもらえれば分かっていくことなのかな。
「後は、いろんな人と関わる時に分かっていくことだと思うわ」
「最果ての図書館の司書って、いろんな人と関わるなんてことあるの?」
「司書見習いの場合は、この世界の各地を巡るから多少はね」
「え!? そうなの!? つまりそれって旅をするってこと!?」
「旅というか、フィーにはこの世界のことを学んでもらわないといけないと思ったから定期的に出かけてみようか、って話よ?」
「あ、そ、そういう……」
も、もしかして私、お母さんに司書になると言っていれば、引きこもれてたってことかな。
だとしたら、この世界のことを知れるかもしれないからいいとは思うけども。でもオタク気質な私としては、異世界の種族とかそういうのは気になる方だからよかったと捉えるべき、なのかな。
だって、異種族を生で見れるとか、異世界でしかできない経験だと思うし。
「ええ、でもフィーの前世は、地球にいた時はあまりそういうのが好きじゃないかなと思ったんだけど……」
あー! お母さん私の過去を見たから、あえて司書にならないかって言ってくれたのか。
だったら、素直にうん、って言えばよかったかも。
でも、前世の名前言われてたわけだし……しかたなかった、かな。