第七頁 この世界の魔法について 1
「それじゃあ、まず。この世界での魔法について教えるわね」
「はーい!」
お母さんと私は私の部屋で互いに隣の形で椅子に座っている。
「まずフィーのいた世界でいうところの七つの属性があるわ」
「七つの属性?」
「ええ、まずフィーのいた世界で言う火、水、風、土、光と闇、そして無の七つよ」
「おー……!」
ミランダお母さんは一つ一つテーブルでそれぞれの属性をクレヨンで表現していく。
わかりやすく、それぞれの属性に合わせて色を変えて絵を描いてくれた。
私はお母さんの言葉を聞いて、自分がいた世界でいうゲームや漫画にもよく出てきた属性に興奮する。こういうので興奮するのは、男の子の特権だけじゃないと思いたい。
「異世界っぽい?」
「うん! とっても!」
「例えば火属性なら火言って言って、属性じゃなく言葉の言を付けるのよ」
「こごん……?」
「そう! 他にも、水の言葉なら水言、風の言葉なら風言、土の言葉なら土言、光の言葉なら光言、闇の言葉なら闇言、無の言葉なら無言になるの! 面白いでしょう?」
「う、うーん……む、難しいね」
私は頬を掻きながらたはは、と苦笑する。
絵の上にそれぞれクレヨンで書き込まれていく文字は、やはり私がいた世界での文字ではなかった。
それについては追々覚えていくことにしよう。
聞いてなんとなく思ったけど、つまり察するに全部属性の最初の方のヤツに関しては、全部音読みかな? だいぶ前に異世界系漫画で出てくる属性で、色々ネットのヤツで音読み訓読み見ていた時期あったし。それにわりとキャラクターの設定資料とか漁るのが好きな私なら、はやめに覚えられそうだ。
ミランダお母さんは楽しそうに話す。
「そう? でも、こういえばわかりやすいと思うんだけど……この世界、マギカループは無垢の神という神様が作ってくださったの。その神様は言葉を大切にし、世界にそれぞれの言葉と世界を創造されたわ」
「へー……そうなんだ」
「魔法と言うのも、神様がお作りになった魔法の言葉だから、それぞれの属性の力の総称を魔法と呼んでいるの!」
「そうなの?」
「ええ、だから魔法を覚える時は、間違った言い方は失敗しやすくなるから気を付けて?」
「イエス! マム!」
「いい子ねぇフィーは! 大好きよー!」
「え、えへへ……」
私は手を上げて宣言すると、いい子いい子と言って頭を撫でながらお母さんに抱きしめられる。
えへへとか、かわいい子限定なセリフなのに言っちゃったけど、ちょっと照れくさい。
でも神様が世界を作った、か。なんか、地球でのとある神話の神様たちが浮かんだ気がするけどスルーしよう……にしても、言葉かぁ。なんかキリストの聖書とかで「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。」とかの、あれに近い感じなのかな……?
聖書とか、そこまで読んだことはなかった気がするけど。
「それで、フィーはどの魔法を先に覚えたいの?」
「んー……無言はどんな魔法が使えるの?」
「そうね、基本的に身体強化、変身、時間操作……あげたらきりがないから、実際に試してみる?」
「お願い!」
身体強化とか時間操作とか、絶対習得できるならしたい!
時間操作なら料理をすぐ作れたりしそうだし! それに、身体強化だってドジな私にはこけそうになった時踏ん張れそうだし!
お母さんは椅子から立ち上がり、宣言した。
「わかったわ、かわいい娘のためだもの! お母さんが見本を見せてあげる!」
「やったー!」
お母さんはふふん、と腰に手を当てる。
とても誇らしげに目を伏せるミランダお母さんに期待が膨らむ。
「じゃあ、わかりやすい変身の魔法にするわね?」
「はーい!」
「よーし、いくわよぉ? ――――カフカ!」
お母さんが魔法を唱えると私の姿になった。
鏡いらずとはこのことだな、と強く思う。
私の姿になったミランダお母さんに近づき、ジーと見つめる。
「どう? フィー」
「な、なんか不思議な気持ちになるね」
「それはそうでしょうね、貴方の姿に変身してるんだから」
「…………んー」
大人でナイスバディだったお母さんには、地球でいた時とは違い、期待をしていいのかなとじーっとお母さんの胸を見る。
「な、何? そんなにじろじろ見て……」
お母さんは私の視線に耐え切れなくなったのか、少し距離を開けて胸を手で隠す。
私より乙女力ないか、この母親。
「だって……大人になったらお母さんみたく大きくなりたいなって」
本音を漏らす私は、自分の胸に触れながら言った。
絶壁ではなくとも、女としてちょっぴりでも誇れるくらいのサイズにはなりたいと思うのが貧乳だった女子みんなに言えることだと思う。
ミランダお母さんはもー! と言って怒った。
「なれるわよー! フィーも好きな人が出来たら、いっぱい揉んでもらいなさい!」
「……ふーん、お父さんにたくさん揉まれたんだ」
「え? 私は元からよー! 何言ってるのぉこの子ったらぁ」
「後でお父さんから聞こっと」
「こらー!」
お母さんが顔を真っ赤にして私の胸をぽかぽかと叩いて来た。
私とお母さんはふふっと笑って魔法の話の続きをもう一度始めた。