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第六頁 ミランダの告白 3

「司書、見習い……?」

「ああ、ダメか?」


 ハリーお父さんは私を抱きしめるのをやめ、頭を撫でながら微笑んだ。

 ……確かに、司書は小さい時からの夢でそのために地球では頑張ってきたことだけど。

 違う形になったけれど、でも許されるなら。


「……二人は、私が転生者だって知って、嫌いになってない?」

「ええ、もちろんよ」

「当たり前だ」


 二人は、嘘のない笑顔で私に笑いかけてくれた。

 …………うん、覚悟を決めよう。

 私は顔を俯かせながら、(つぶや)いた。


「なら…………お母さんの仕事のお手伝いしたい。司書になるのは司書見習いをしてからでも、いいかな」

「……本当か? フィー」

「うん」

「フィー、ありがとう。お父さん嬉しいよ!!」


 ハリーお父さんは嬉しそうに抱きしめてくれた。

 私はハリーお父さんに抱きしめられながらも、二人に忠告をした。


「だから、お母さんもお父さんも今日からは絶対、前世の私の名前で呼ばないで。それが、私から出す条件」

「…………本当にいいの?」

「前世の名前を呼ばないなら、別にいいの。もしお母さんやお父さんが知りたいことがあるならその都度、ちゃんと言うから……大丈夫。名前だけ、絶対に言わないで」

「わかったわ、ごめんね。フィー……貴方を傷つけるつもりで言ったわけじゃないと、分かって頂戴」


 ミランダお母さんからも抱きしめられて、これでようやく私はこの世界での住人になれた感覚がする。

 いや、これからなっていくんだ。

 ……二人は、転生者(わたし)のことを、受け入れてくれたのだから。


「それじゃあ! この世界の魔法について今日から教えるわね」

「唐突だなぁ、ミラ」

「いいじゃない! 約束は守ったもの! 勉強できる時があるなら、それは幼少期から覚えている方がいいことだってあるのよ」

「はいはい」


 ミランダお母さんはえっへんと、腰に手を当てる。

 ハリーお父さんは生返事でお母さんに返事を返した。


「この世界ではどんな魔法があるの?」


 私が使ったのは、おそらく水だったから、水魔法だとか?

 でも、詠唱とかちょっと言ったりするのは気恥ずかしいなぁ。

 そういえば、地球にいた時のラノベとかSF作品って結構、詠唱は省いたものが結構多くなったんだよなぁ。


「フィーったら、慌てないのー! 後で部屋で魔法を教えてあげるから!」

「絶対だよ!?」

「はーい! 約束ね? あ、そういえばフィーのいた世界では約束事には決まり事があったのよね?」

「指切げんまんのこと?」

「ゆびきりげんまん……? なんだか、東の国の言葉みたいだな」

「え? 東の国? この世界にも東洋みたいな国があるの?」

「とうよう……?」

「あ、なんでもない。お母さん! まず指切しよ?」

「はいはい、慌てないの! お母さんはじめてだから、上手くできなかったらごめんね?」

「大丈夫! 私に任せて!」


 私とミランダお母さんはお互いの小指を絡ませる。

 そして、私はいっせーので言うよ? とお母さんに聞くと、わかったわ! とミランダお母さんは頷く。


「「ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」」

「けっ、結構、怖い約束なんだな」

「貴方も、私に一度でも嘘をついたらどうなるかは知っているものね」

「え? お母さんとお父さん、どっちか約束破ったことでもあるの?」

「そ、それは……」


 お父さんの顔は一気に青ざめたのを見て、たぶんお母さんの何か怖い部分を目のあたりにしたのだろうなと、すぐ察することができた。

 

「もう! ハリー!! 私はやくフィーに魔法を教えたいの! 国や約束の話は後でできるでしょ!?」

「わかったわかった。フィー、お母さんはスパルタだから無理するなよ」

「わかったー!」


 ミランダお母さんがほっぺを膨らませて怒るのを見て、苦笑するハリーお父さんのやり取りを見て、少し和みつつも私はお父さんに手を上げて宣言した。


「それじゃあ、行きましょうフィー」

「うん!」


 そして、ミランダお母さんと私はリビングを後にした。

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