第二頁 はじめての魔法
「あぁー」
「どうしたのフィー? お腹が空いたの?」
「あー!」
「うふふ、わかったわ。ちょっと待ってて」
母親であるミランダお母さんは、今日も私に笑いかけてくれる。
さすがに、おっぱいを貰うのは赤ん坊なら当然だと思うので、素直に飲ませてもらっている。
ある程度腹が満たされたのを感じると、お母さんのおっぱいから口を離した。
「あぅー」
「今日はもうお眠?」
「うー」
「わかったわ、ベットに行きましょうね」
私はミランダお母さんに赤ちゃん用のベットに寝かせられる。
ミランダお母さんが静かに扉を開けて去っていくのを見て、私はパチリと目を開けた。
「うぅ」
あれから、数か月後。よちよち歩きもできるようになったのは本当にいい。
近くに置いてある鏡で、自分の顔を見る。
「うー」
やっぱり、地球での私、もしかしたらブスかもしれん。
いや、この世界での私の家族の顔面偏差値が高かったからだけか。
それに自分の外見はハリーお父さんの遺伝子がどうやら強いようであることがわかる。
瞳の色が金色で、ハリーお父さん譲りの綺麗な目だ。
赤ん坊だからか、くりくりお目目だし自分で言うのもあれだが、余計可愛い。
自分の体をどう見ても、赤ん坊サイズだ。
「むー」
私は腕を組もうとしたが、うまくできず後ろに転がってしまった。
「うぅー……!」
――――いや、そんなことはあまり関係はない。
強いていうなら、異世界だという確証を得たのは数日前、ミランダお母さんが料理をする時に魔法で料理していることがあった。たぶん本当に小説投稿サイトで見た異世界転生や異世界転移系のコンテンツの分類だと察して問題はないだろう。
ラノベをあまり読まない自分でも、そういうジャンルは知っている。
しかし、それよりも一番に気になるのはこの世界の名前だ。
自分の知っている作品なら、大抵は悪役令嬢だよな……元々読んでいたからもあるけど。
異世界転生する作品で一番に多いジャンルの一つだと私は睨んでいる。
……知らない世界なら、それはそれでいい。
「…………」
でも、異世界転生に欠かせない神様にも出会ってことはないってことに関しては、そっちの路線はあっているのかどうか不安になる。
うーん、色々考えても仕方ないよな。とりあえず、私に今できることをしようかな。
強いてあるとするなら、やっぱり異世界なんだしあれでしょ。
私は起き上がり、自分の手を見る。
「あっふー!」
うー! うまく発音できないのがもどかしい……!
でも、とりあえず掌に集中する。
適当に、水を手の上に集まってくるイメージ。
それをより鮮明にさせて、より明確にさせて。
掌にすっと視線を向けた。
だんだんと空気の水分を集めているのが見える。
夏祭りの屋台にあったりする水風船みたいなぐらいの大きさで水は膨らんでいく。
私はさらに集中して、最期に天井に近いくらいに水を上に上げた。
「……へ、へ、っくしゅ!!」
私は思わず、くしゃみをすると、パンと水は音を立てて弾ける。
自分の上に上げていたせいか、水を全身に被ってしまう。
「フィー!? どうしたの!?」
ミランダお母さんが慌てて扉を開けると近くに寄ってきてくれて、私をすごく心配してくれた。
私は、言葉にならない声で、ミランダお母さんに笑いかける。
「フィー?」
……一体、何の話を切り出されるのかな。