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第8話 さまよえる赤い記憶

人間誰しも嫌な記憶を持っていますよね?


※このおはなしはフィクションです。これに出てくる登場人物、団体は実際の人物、団体とはまったく関係がありません。

「オイ、起きろ!」


何だ?俺の安眠を妨害する奴は?つうか誰だ?が正しいか?


「起きんか!!」


「!!」


俺は急いで飛び起きた。

何だかとっても嫌な予感がする。

例えば、授業中とか。


「鎌倉!授業をサボらないなとか思ってたら結局睡眠ばっかりだな!お前は何しに学校に来ているんだ?!」


まあ勉強のために来てるんだろうな。しかしまあ俺もよく怒られるものだ。


「すいません」


「全く…少しは妹でも見習わんか。それとも妹は猫被ってるだけか?」


「妹は関係ありません」


ちょっとイラっときちまったじゃねーか。

妹のことは話に出すんじゃねえ。


「お前が問題起こすたびに妹に迷惑がかかるんだぞ。それくらい分からんのか」


「…」


「何だ。文句でもあるのか」


「いえ…ただもうすぐ授業が終わるな、と思っただけです」


「貴様…!廊下に立って反省しろ!ついでに反省文も書かせるからな!」


「…分かりました」


俺は席を立って廊下へと出て行った。

いつもはこうなんないのに、今日は朱里の話を出されてイライラしてしまった。

あの教師の言うことも分かる。妹に迷惑がかかるのも分かる。でも俺は意地を張ってしまった。まだまだ子供だということを実感させられた。


「…」


俺は何をやってるんだろうな。今をこうダラダラと過ごして何を得るんだろうな。

希望や夢を持たない俺なんか朱里のお荷物なんだろうな…

ちょっとネガティブになってしまった。たまにこういう不安が一気に襲いかかってくることがある。

俺はその場にしゃがみ込み、耳を塞いだ。外界と自分をシャットして落ち着かなければ。









「らしくない」


「確かに」


俺は今、教室の掃除を真面目にやっている。ちなみに罰掃除。


「俺が真面目に掃除…だと?」


「リョウって時々壊れるわね」


奏に変な目で見られた。ついで穂も不審者を見るような目で見てる。


「あ、鎌倉君。ゴミ、捨てていかないと」


「ああ」


俺は木曽さんに言われ、ゴミ箱を持った。


「おいリョウ…あいつと…」


タカが俺と木曽さんを交互に見る。幸い木曽さんはそれに気づいていない。


「もういいんだ。収拾した。だからもう何も言うな」


「分かった。だが…」


「大丈夫だって。心配性だなお前は」


「いや、そうじゃなくて…」


タカが何かを言いかけたが、俺はゴミ箱を持っているので、タカに手を挙げて背中を向けた。

そして木曽さんの後ろを付いて行く。


「…リョウってやっぱりおかしいわよね」


「ああ。アイツって妙に冷めてるよな」


ちなみにタカと奏がこんな会話をしていたことは知らない。









「あのさ、こんなことを今訊くのはどうかと思うんだけど…」


俺は今年度初めて木曽さんに話しかけた。


「え?何?」


「その…木曽さんは未練無いのかな…って?」


「えー?何に?」


木曽さんは見当がつかないらしくポカンと俺の顔を見た。


「いや、その…」


説明しづらいな。あの出来事は彼女にとっても古傷だというのに。


「タカ…のこと」


「え?武蔵君のこと?これっぽっちも残ってないよ」


「そ、そうなんだ…」


俺はものすごく明るく言う木曽さんに違和感を感じた。

だっておかしくないか?全く未練が無い、って。俺ですらかなりかかったんだぞ。


「だから私は正真正銘のフリーで彼氏募集中なの」


「へえ…」


彼女は前に進んだのだろうか。俺が何歩も足踏みしている間に彼女は何歩進めたのだろうか。


「へえ…ってもっと違う反応無いの?」


妙に拗ねた顔をしてみせる木曽さん。

こんな彼女を見るのは本当に久しぶりだ。


「違う反応…木曽さんなら簡単に彼氏は出来るよ」


「うう…何であのときあんなことしちゃったんだろ…」


何だか木曽さんが困っているようだ。

どうしてなのかは知らない。


「まあいいじゃん。俺達は友達だろ?」


「そうだけどさ…私に未練ある?」


「はぁ?そんなものはもう無いから。これからは安心して相談してくれ」


「…」


何だか今の沈黙には寂しさが感じられた。

俺が言ったことは何かやばかっただろうか。


「俺何かマズイこと言った?」


「ううん。昔の私に嫌気が差しただけ」


「そ、そうか…」


よく分からないけど俺は悪くないんだよな?

俺達二人は友達らしい会話を久しぶり交じわしたのだった。












「朱里。おーい朱里〜!」


俺はその日、朱里を家で探していたものの、見つからなかった。

どうやらまだ帰っていないらしい。

ちょっと昔のアルバムでも見てみたいと思っただけなのだが…


「自分で探すの面倒くさいな…しょうがない。朱里か帰ってくるのを待つか」


俺は自室に帰り、ベッドの上に横になった。


「…眠い…な」


俺はすぐに睡眠に突入した。








熱い…


体が熱い…


体が焼ける…


「?!」


こ、ここは…

俺は見た光景は、灼熱の赤だった。

これは確か…2年半前の脱線事故?!

またこんな悪夢を見るのかよっ!!

俺は自分を見つけた。足があらぬ方向に曲がり、動けない俺を見つけた。

かなり苦しい表情だ。


「父さん…母さん…助けて…み――…どこにいるんだ…?」


ん?今、何かおかしなものを感じた。

さっき、俺、何て言った?


「イタイ…イタイ…!」


「熱いよ…!助けて…!」


しかしそんな考えは周りの阿鼻叫喚にかき消された。

何で今更こんな夢を…!!












「兄さん!兄さん!」


「はぁっ!!」


俺は誰かの声にベッドから飛び起きた。


「あ、朱里…」


「大丈夫ですか?すごい汗です。それにかなりうなされてました…」


「大丈夫…はぁ…ちょっと悪い夢でも見たみたいだ…」


俺は息を荒くしながら言った。

正直かなり気分が悪い。


「ちょっと風呂に入ってくる…あ、それとお願いがあるんだけど…」


「何ですか?」


「昔のアルバム…ちょっと久しぶりに見てみたいんだけど」


「アルバム…ですか?すいません、ここには無いんです…」


朱里が申し訳無さそうに言う。


「えっと…じゃあどこに…?」


「私も良く知らないんです…すいません」


朱里が心底申し訳無さそうに言う。


「そうか。ま、そこまでして見たいものじゃないからいいや。俺はシャワー浴びてくる」


「はい、私は夕飯の支度をしてますね」


俺は風呂場へ、朱里はキッチンへと、俺達は別々の場所へ移動した。


「ごめんなさい、兄さん…」


朱里のこの謝罪は何に対してなのであろうか…

俺はそれを聞いていなかったので、考えることもなかった。


執筆するのが楽しくなってきた。

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