第6話 Don't leave us
シリアスが多くなるかな?
護持は大丈夫かな?
↑誤字です。
GW中、俺と朱里の家に泊まることになった穂、仁、奏、タカ。
そんな俺達には様々なハプニングが続いたものの、今日が解散日となった。
「ああ…もう朱里ちゃんと暮らせないのか〜!」
「殴って良いか?」
仁のために俺が作ったものは握りこぶし。
「まあ最後っていってもいつでも会えるしさ。今日はこれから行く祭りでも楽しもうぜ」
そう、俺達はお祭りに行くことになったのだ。もちろん6人で。
「じゃあそろそろ行きましょ」
奏の合図に俺達6人は歩き始めた。
「さてと、「お祭りといったら何だ?!」ゲーム!!」
「却下」
「うそん!」
俺達は仁のラリった発言をシカトして神社に入った。
「混み混みね〜」
「こりゃ大変だ」
神社の中はものすごい人の量で溢れかえっていた。
まあ休み中だし、仕方のないことですな。
「まず何やる何やる?」
「アタシはもちろん食べる!」
穂は予想通り食い意地を張っていた。
「リョウ〜?何か言いたそうだね」
「お前は何を食べるんだ?」
「はぁ?たこ焼きとか焼きそばに決まってるじゃない!」
無事話を誤魔化せたようだ。
「そんなのお祭りじゃなくても食べられるだろ」
「馬鹿ね〜。お祭りで食べるのがいいんじゃない!」
「そういうものか?」
俺自身そんなにお祭りに行ってないので、分からない。
というか昔は近くでお祭りなんてほとんどやってなかった、と言った方が正しいのかもしれない。
「まあ俺はカナと気ままに回るさ」
「ブイ」
奏はVサインを俺達に向ける。つまり二人で行動したい、と。
相変わらずこの二人は…
「じゃあ俺達4人で行動するか」
「そうですね」
俺と朱里と穂、そして仁と一緒に行動することになった。
「じゃあまずどうする?」
「食べるに決まってるじゃない」
「決まってるのか、食欲大魔神」
「今さり気なく変なことばを口滑らさなかった?」
「悪い、つい…」
「ついじゃないわよ!」
俺は穂にド突かれ、倒れそうになる。
「危ないじゃないか」
「ふん、アタシのたこ焼きは絶対あげないんだから」
「…いや、それはいらん…」
「何?」
「何でもないです」
俺達はほのぼの(?)とした空気を纏いながら先へと進んだ。
「わぁおぅ!!射的だぜ!!」
仁が射的を発見する。
随分と大はしゃぎのようだ。お前は子供か?
「俺の腕前を見せてやるぜ!」
そう叫ぶと仁は射的の金を2倍払った。
「さあ!俺の2丁銃の力を見せてやるぜ」
「何?!」
さすがに仁が2本の銃を使うとは思ってもいなかった。
こいつ…馬鹿なのか?!それともすごいのか?!
穂は呆れているのか、何も言わない。
「ふっ…射的はセコイ小細工が為されている…」
店主の前で何てことを…
「そう!!銃の威力が弱いのだ!ならばどうすれば強く出来るのか?!それは簡単。同じ場所に連続で打ち込めばいいのだ!しかし残念ながらこの銃は連射なんて機能などついているはずがない。そこで考えたのはこれ、と言うわけさ!!」
仁が2丁の銃を俺達に見せる。
「これを使えば少なくとも2連射が可能となる。口を使って3連射なんてことはとある海賊じゃないから無理だとしても、2連射は可能なのだよ!」
「た、確かに…理屈は間違っていない…」
仁の言っていることは珍しく筋が通っていた。
まさかコイツ、射的の神なのでは?!と思ってしまう。
「すごいですね」
朱里も感心している。
「…」
唯一穂だけが微妙な表情。まさかコイツのこのネタは既出だったのか?
「ふっ…俺の腕前に酔いな」
「…」
「…」
射的後、仁は無言だった。
それもそのはず。こいつはとんでもないミスを犯したのだ。
元々両手で持たなくてはいけない銃を片手で持つのは結構大変だ。
しかしそれは力がある程度あれば大丈夫だ。
だが、同じ場所を狙うという行為は片手でしっかり銃を固定しなければならない。それを2つ。至難の業なのだ。
なのでこいつは銃を乱射しまくり、最終的に店主を撃ってしまい、思いっきり怒られやがった。
まあ結果的にこいつはバカだったというわけだ。(そのバカを信じた自分を棚に上げる)
「で、次はどうする?」
「もちろん食べるわよ!!」
「…そうか」
穂に訊いた俺が間違いだったか。こいつの答えはわかりきっているのに。
そう言いながらぼうっと歩いていたら…
「キャッ!」
「おっと!」
前から来た人とぶつかってしまった。悲鳴を聞くからに女性である。
「だ、大丈夫ですか…?」
「は、はい何とか…」
俺は彼女を立ち上がらせた。しかしそんな俺は彼女の顔を見て驚愕した。
「き、木曽…さん…」
「か、鎌倉君?!」
そう、俺とぶつかったのは俺の右隣の席に座るクラスメート、木曽彩華であった。
俺は突然の出来事に頭が真っ白になる。
「偶然だね。鎌倉君も友達と来てるの?」
「あ、ああ…木曽さんも?」
「うん…でもはぐれちゃった…」
木曽さんがしょんぼりする。そりゃこの人ごみの中ではぐれてしまうのは心細いに違いない。
しかし俺にとって重要なのはそんなことではなく、こんなところで彼女と会ってしまったことの方が問題だった。
「そ、そうなんだ…」
俺は極力冷静に周りを見渡す。すると、とあることに気づいた。
「ヤバイ…俺もはぐれた…」
「ええ?!もしかして私のせい?」
「いや、そんなことは…」
俺は携帯を取り出す。とにかくここに二人でいることなんて出来るはずがない。
しかし携帯が反応を示さない。
「しまった…今日充電するの忘れてた…」
このままでは朱里たちと連絡がつかない。どうすれば…
「ごめんね。私のせいだね…」
「いや…木曽さんは携帯持ってないの?」
「私も電池が切れちゃって…」
そう言って俺にピンクの携帯を見せてきた。確かに電源が入ってもすぐにオフになったりしていた。
このままでは面倒くさいことになる。俺の中のダルイ感が表に現れ始めた。
「…」
俺がどうしようか思案していると…
「ね、ねえ…この際さ、一緒に回らない?」
「え?」
それは予想外の台詞だった。まさか彼女がそんなことを言うとは思ってもみなかった。
彼女もこの気まずい空気に嫌気が差しているはずだと思うのだが…
「鎌倉君が…よければ…だけど…」
彼女が俺を上目遣いで見つめてくる。遠い昔においてきた感情が甦りそうになるのを抑え、平静を装う。
「…」
しかしここでダルイとか言ったらどうなるのだろうか。
世の中本心を言い続けられるほど甘くない。それに彼女も悲しい顔をしてしまうかもしれない。
「いいよ。行こうか」
「ホントに?良かった…」
彼女も一人で心細かったのだろう。そして俺的にも、ここでジッとしているよりも祭りを回った方が気を紛らわせるかもしれない。まあ所謂利害の一致(ちょっと違う)って奴だろう。
「じゃあ行こうか」
「うん」
俺は祭りを回る、と言いつつも周りをチラチラ見ては知り合いを探していた。
俺の目標は祭りを回るフリをしながら、朱里たちを探すことであった。
言っちゃ悪いが、この空気にあんまりいたくはない。
「ねえ鎌倉君、私といるのやっぱり嫌?そりゃそうだよね。私って嫌な女だもんね。だってあのときも…」
「ゴメン、何のことだか良く分からない」
「ごめん…なさい…ごめんなさい」
彼女が急に謝りだす。俺はどうすれば良いか分からなくなる。
だって手を差し伸べる資格すら俺には無いのだから。
「…祭りってさ、楽しむためにあると思うんだ」
「え?」
「俺も楽しみたいからさ、もう謝らないでくれるか?」
「う、うん…」
俺の口からまだこんな言葉が出てくるとは。一体面倒くさがりというのはどこに?
人を気遣うことほどメンドイことは無いんだぞ?
「それにあのときのことは…もうあんまり覚えてない」
「ありがとう…」
こう改めて感謝されると照れてしまう。
「あ、あのね?私にこう言う資格なんて無いんだけれど…お願いを聞いてくれる?」
「…何?」
「これからは…私のことを避けないでくれる?普通に鎌倉君と話したいの…」
「!」
そうか、そうだったのか。
俺は思い込んでいたのか。
俺が避けてるのは彼女が気まずく思うから。
彼女のことを考えていたから。
そう、思い込んでいた。
でも本当は違うんだ。
俺は俺自身がまた傷つくことを恐れていただけなんだ。
自分が避けている理由を彼女に付け、自分から逃げていた。
「…そうだな。これからはちゃんとするよ」
「え?」
「これからよろしく…」
俺は彼女に手を差し伸べた。
「い、いいの?私に握手する資格なんて…」
「もういいんだよ。気持ちの整理はついた」
「それはそれで複雑…」
「え?」
ボソッと何か言ったので、俺には聞こえなかった。
それはさておき、俺も向き合わないといけないな。
俺は去年の夏を思い出し始めた。