番外編09 蘭&敏樹編 一生懸命になれること
夏休みがもう少しで終わってしまうので、掲載時間を早めます。
今回はちょい息抜きです。
今回には関係ないんですが、実は恋愛描写を書くのは苦手です。
書いてて恥ずかしくなってしまうんです…
夏休み。俺はいつものごとく冷房を効かせた部屋に寝転がっていた。
ってそんな暇なんてあるわけないだろーに!!
俺はサッカーの練習で忙しく、休みもあんまり取れない。
そんなとき、あいつから電話が掛かってきた。
「久しぶりだなリョウ。少し休みがあるから、今からそっちに行く。というか向かっている」
「ええ?!」
なんと敏樹がこっちに来ることになるのだった…
「あ、蘭ちゃん」
「久しぶり〜。元気にしてた〜?」
私は久しぶり友達の蘭ちゃんに会った。
待ち合わせをしている訳でもなかったので、偶然である。
「相変わらずブラコンしてる〜?」
「ちょっと!別にブラコンというか…」
男女の愛情だし…なんて言ったらどうなるだろうか?
「まあまあ。久しぶり家に行っていい?」
「今から?」
多分兄さんは悪いとは言わないだろう。
私は自分の思考の中心にいつも兄さんがいることがおかしくなった。
「うんうん。確か美鈴ちゃんもいるんでしょ?久しぶりだもんね〜」
美鈴ちゃんの存在は私達の近しい人たちには結構知られている。
元々隠す気なんてないので、その言い方はおかしいかもしれないけれど。
「久しぶりだし、いいわよ」
私達はそう言って一緒に家に入った。
「おう朱里。お帰り」
「ただいま兄さん」
家には兄さんがいたのだが…
「お邪魔しま〜す」
「ああ。朱里の友達か」
兄さんは蘭ちゃんの方にも顔を向けた。
そして…
「久しぶりだな朱里。お邪魔してる」
「敏樹さん!!」
そう、私の従兄妹の平泉敏樹さんもいたのだ。
兄さんや私、美鈴ちゃんに会いに来たのだろう。
「格好いい…」
「え?」
そして私の隣の蘭ちゃんはその敏樹さんを見て目を輝かせていた。
まさか…まさかとは思うが…
「ら、蘭ちゃん?」
「わ、私!石橋蘭っていいます!!」
「うん。僕は平泉敏樹だよ。よろしくね」
「はうあ〜」
敏樹さんの天使のような微笑に蘭ちゃんは完全に力が抜けた。
意味不明な言葉をしゃべっていたし、相当重傷だ。
そして私はライバルが減ったとか思ってたり思ってなかったり…
「ね、ねえ!朱里ちゃん!」
兄さんと敏樹さんが二人で出かけた後、私は目をキラキラさせている蘭ちゃんに詰め寄られた。
「な、な〜に?」
私は引き攣った笑いで答えた。
「あの敏樹さんっていう格好いい人!朱里ちゃんの従兄妹なんでしょ?!」
「ま、まあね」
私はその勢いにたじろぐ。こんなに押しの強い女の子でしたか?
「いいないいな〜。何で紹介してくれなかったの?!」
美鈴ちゃんは我関せずでお煎餅を食べながら単語帳を読んでいる。
夏休みに入ってかなり勤勉になっている。
「それは言う暇が無かったというか・…存在を忘れてたというか」
すいません敏樹さん。兄さんのことで頭がいっぱいだったので忘れかけてました。
「どんな女の子が好みなのか知ってる知ってる?」
「い、いえ…」
別に敏樹さんの好みの女性など興味が無かったので、私は知りません。
むしろ兄さんの好みの女性の方が…
「じゃあ訊いてきてよ〜!」
「自分で訊かないの?」
むしろ私が兄さんに訊いてきてと言いたいんですが…
「だ、だって…恥ずかしいもん…」
珍しく蘭ちゃんが両手をもじもじさせてどもり始める。
彼女も花も恥らう乙女なのだろう。
「そ、そう…仕方ないわね。兄さんに頼んでみます」
「ありがとう!!」
蘭ちゃんは思いっきり私に抱きついたのだった。
「え?敏樹の好みを聞けって?」
私は仕方なしに兄さんにそうお願いした。
兄さんにお願いするのは本当は心苦しいのだけれど、私が訊いたら誤解しかねない。(むしろこっちの方が誤解される)
「よし!可愛い妹の頼みだ!訊いてやる!」
「ありがとうございます!」
兄さん、妹は余計です、なんて言いたくなったけど、我慢した。
「え?僕の女性の好み?」
俺は敏樹にそういう質問をした。
そういえばこういう会話は俺達はしたことがない。
「ああ。何か朱里が訊いてほしいらしく…」
「ふーん…そうだねぇ…」
敏樹は俺の方をじっと見つめる。
「性格はリョウみたいのでもいいな…」
「は?」
何だかおかしいぞそれ。
「いや、もしリョウが女性だったら…結構好みなんだけどな」
「キモチワルイことを言うな」
俺は寒気がしたので、敏樹をシッシッと追いやる。
「ひどいな〜。ま、それはともかく、頑張っている。そうだね、一生懸命何かに打ち込んでいる女性は好きだね」
「サンキュ。初めからそう言えよ…」
俺は敏樹から離れて朱里にそういうことを伝えた。
ちなみにその際、朱里は妙に不安そうな顔をした。
「一生懸命何かに打ち込んでいる女性…」
私が蘭ちゃんにそう告げると、蘭ちゃんは一言そう呟いた。
「…」
しかし私の心境は少し複雑。
「ようし!頑張ってみよう!」
そう言って蘭ちゃんは拳を振り上げた。
翌日、蘭ちゃんが家にやって来た。
昨日から家に泊まっている敏樹さんに会いに来たのだろう。
「おう昨日ぶり」
「こんにちわ」
兄さんと敏樹さんは同時に蘭ちゃんを迎えた。
というか一緒にいすぎです。少し離れてくださいとか言ったらいけないですよね…
実は私、敏樹さんに嫉妬しています。
「こ、こんにちわ敏樹さん!!」
ちゃんと敏樹さんに「のみ」挨拶をする蘭ちゃん。
何でしょう、この徹底ぶりは。
「わ、私!実はテニスをやっているんです!」
「へえ…そうなんだ」
敏樹さんは兄さんと違い、真面目に話を聞いていた。
兄さんは興味の無い話なのだろう。
「その…小さい頃からやってて…えーと…まだあんまり上手くないけど、頑張ってます!!」
自分でこんなことを言って大丈夫なのかな?
私は敏樹さんの反応を待つ。
「そうなんだ。テニスやってるのか君」
敏樹さんは意外と興味があったのか、話に乗ってきてくれた。
しかし…
「敏樹、俺はちょっと寝てくる」
「あ、兄さ…」
兄さんが立ち上がったとき、隣にいる敏樹さんのコップを倒してしまった。
「わっ!」
「す、すまん敏樹!!」
兄さん、何をやってるんですか!!
私は兄さんに雑巾を急いで渡して床を拭いてもらった。
「あ、敏樹。服が…」
そして敏樹さんの服にも零してしまったことに気づく兄さん。
まさか…まさか…
「いいよ別に」
「いやいや。俺の服貸してやるから!ちょっと部屋まで来い!」
「仕方ないね」
敏樹さんは笑いながら兄さんに着いて行く。
何か怪しい。私は隣の蘭ちゃんを見る。
蘭ちゃんもそれを呆然と見ていた。いや、見るしかない。
「…ねえ朱里ちゃん」
「言わないで。兄さんが汚れるから」
「朱里ちゃんのお兄さんってサッカーに打ち込んでるんだよね?」
「…」
それは私が考えないようにしていたこと。
「敏樹さんの好きなタイプって何かに一生懸命になってる人だよね?」
「…蘭ちゃん」
「つまり…」
「いえいえ!兄さんは正常です!…と信じたい」
まさか去年の経験からもう女の子は受け付けなくなったのだろうか。
そしてその反動で今は…
「くっ…考えちゃダメよ朱里!」
「朱里ちゃん?」
私は発狂したくなる衝動を何とか抑えこむ。
これは由々しき事態。女として見てもらえないのでなく、女に興味が無ければ全ておしまい。
「で、でも兄さんも女性が裸になってる写真集や、「妹」がヒロインであるゲームもやっているし…」
「お兄さんはまだいいよ。でも敏樹さんは…」
「…」
私のライバルは従兄妹になってしまうんでしょうか…
初めて敏樹さんを疎いと感じました。
その後、敏樹さんが妙にニコニコと部屋を出てきたのがさらに不安を煽った。
「私、頑張るわ!」
蘭ちゃんが私に見せてきたのはテニスの雑誌。
表紙には今話題の女子テニスプレイヤーが載っている。
「これで敏樹さんと話題づくりしてみせる!」
私達は目の前の妙にボディタッチが多い二人のじゃれ合いを見る。
ごめんなさい敏樹さん。これからあなたは私の敵になりそうです。
「敏樹さん!」
「何?」
敏樹さんは蘭ちゃんの声にちゃんと反応してくれていた。
「テニス、どれくらい知っていますか?!」
「え?」
蘭ちゃんはテニス雑誌を敏樹さんに見せた。
敏樹さんはそれを見て、「あ」と呟いた。
そして表紙の女性を指差す。
「僕の彼女だ」
その場の空気が凍りついたことはいうまでもない。
次回は穂編です。掲載時間は午前9時前後かと思われます。(あくまで予定)
その次は最後の朱里編です。
朱里編はあーあーあー…