番外編08 彩華編 失って気づく恋心
奏編⇒タカ編⇒彩華編という時間軸です。
短いので、さっさと掲載します。
しまった、と思った。
私、何て嫌な女なんだろう、と思った。
これじゃ武蔵孝紀という男の子にふられても仕方がないと思った。
でも、分からないでしょう?リョウ君が私を好きだなんて。
私、リョウ君は好きだった。友達として。
公園で初めて会ったときから、いい友達になれると確信していた。
彼は私にいつも優しく、相談事とかにもちゃんとのってくれた。
そんな彼が私を好きだったんだって。
信じられないでしょう?私、初めはそんなことを思った。
だから武蔵孝紀という男の子にそれを告げられたとき、バカみたいだと思った。
何で?私が悪いの?男にふられた私は可哀想じゃないの?
ううん。そうじゃ、ない。そうじゃなかったんだ。
私は彼が走り去っていく後姿を眺めた。それが彼の発言が真実だと物語っていた。
人は背中でも泣けることが出来たんだ。そんなことを呑気に思う暇も無い。
だってそのときの私は罪悪感でいっぱいだった。
自分の都合しか考えずに、相手の気持ちの何も理解していなかった。
かわいい女なんて一部の人間は言うけれど、そうじゃない。
私はとっても汚い、嫌な女。
「ねえ彩華、アンタ最近暗いよ?」
友達にそう言われることが多くなった。
2学期、あの事件から私は立ち直れず、未だに落ち込んでいた。
彼を傷つけたことを本当に後悔した。
「そ、そうかな?」
私は大事な一人の友達を失ってしまった…いえ、私が自ら捨ててしまったんだ…
元々、男の子の友達なんてそんなにいない。
大抵は私に近づいてくる、チャラ男ばっかりだったから。
でも彼は違った。そんな雰囲気もなかったし、ただ本当に私のことを考えてくれていた。
それでもこの事実は変わらない。私の大事な友人が一人、いなくなってしまった。
「夏休みに何かあった?」
「え?別に何もないし、普通だよ」
私は笑って誤魔化した。
「え〜!本当に〜?!まさか、男にフラレたとか?!」
「あ…」
私は言葉を失くす。
そういえば私、武蔵孝紀という男の子の何が好きだったのだろう?
顔はいいし、明るく、人付き合いもいい。プラス要素はたくさんある。
でも、今はそんな恋愛感情なんて全然ない。
「え?!まさか図星?!ご、ごめん…」
「い、いや…違うんだけど…」
友達がそんな風に謝ってくる。
しかし、私はそんなことなどどうでも良かった。
重要なのは今頭の中にいる人は、武蔵孝紀ではなく、鎌倉涼平という男の子ということ。
気がつけば彼のことばかり考えていた。良く考えれば、私のしたことは彼に重傷を与えた。
なのに彼は謝ったら二つ返事で許していた。彼は優しいのだ。だから彼は私にとって安らぎであったことに気がつかされた。
「本当に大事なものは…近くにあったんだ…」
「え?」
「あ、何でもない」
私は自らのしたことを心から後悔する。
誤りに行ったとき以来、彼とは一度も顔を合わせていないし、会いにも来ない。
だからって私から行けるのか、と訊かれると、そうではない。予想外に臆病な私は一歩を踏み出せない。
いえ、元々私達が前みたいに戻ることが出来ると考えること自体ダメだろう。
私が本当に必要としていたのは鎌倉涼平という男の子。
そう思うと、もう止まらない。私は彼を好きなんだろう。
ずっとそばにいて欲しいんだろう。でも…
そして、新年度を迎えた。
これがラストチャンス。なぜなら私はリョウ君と同じクラスになれたから。
しかも席は隣。
罪深き女の挑戦が今、始まった。
次回は今度こそ、蘭&敏樹編でございます…
あ、短編の「兄と妹のBROTHERHOOD」を掲載しています。
内容はコメディかつ、ぶっ壊れです。設定崩壊が嫌いな方は、読まないことをオススメします。