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番外編05 委員長編 永遠のライバル?

ちょっと早めに掲載、と。


朱里強し。もう朱里の勢いは止まりませんね。

文化祭が終了し、次のイベントは期末試験となる。

ちなみに自慢じゃないが、俺は一切勉強をしていない。


「お兄ちゃん〜」


「どうした美鈴」


そんな俺の部屋に美鈴がやってきた。

何だかとっても泣きそうである。


「分からないことがあるの〜」


「ん?」


美鈴は俺に「数学」の問題を見せてきた。


「す、数学とな?!」


「うん」


俺の数学の出来の悪さは学年トップである。まあこんなのでトップをとっても嬉しくはない。

ちなみに学年2位の出来の悪さは仁、3位は穂…俺達の頭悪すぎだろ!


「ど、どれ?」


俺は無謀にも美鈴の数学を見ることにした。

さすがに中学数学は大丈夫だろうという気持ちと、兄としてのプライドの二つがあったからだ。


「三角形の合同条件なんだけど…」


合同条件…


「相似比的にこことここは合同で…」


相似比…


「でね、ここに対角線を引いてね…」


対角線…


「それで…聞いてる?」


「あ、ああ。合同条件の相似比の対角線がどうしたって?」


「…朱里ちゃんに訊いてくるね」


「すんません」


合同とかそんな難しい単語(難しくはないです)を言われると頭の中がパンクしそうだ。

というかこれって中学の問題だよな?…俺って学力中学生レベル?!

美鈴が部屋から出て行くのを見計らった後、俺は机に向かって参考書を開いた。


「メネラオス、チェバ…えーと正弦定理と余弦定理…」


とりあえず乗っている単語を全て読む。これで覚えた気になれる。


「正弦定理!」


俺はポーズを取る。(どんなかは敢えて説明しない)


「余弦定理!」


俺はブリッジをした。


「メネラオス!」


俺は倒立をした。


「チェバ!」


そしてさらに俺は倒立腕立て伏せをした。


「単語だけは覚えたぜ!」


俺はそのままハンドスプリングでベッドにダイビングした。


「…頼みの綱は委員長だけか」


俺はポツリと呟いてみた。


















「じゃあ勉強会を開始するわね」


「は〜い」


リビングで美鈴の声が響いた。委員長はこうして美鈴の勉強を見てくれているのだ。

なので美鈴にとってはお姉さん的な存在だ。


「はーい」


そして美鈴に続いて俺も返事をした。

つまり、現在俺は美鈴の勉強会に参加させていただいているのだ。

委員長も優しい人だな…

去年、俺を叱りに叱って、常に角を生やしていた委員長はいなくなってしまった。


「じゃあ美鈴ちゃんはこの間の奴からね」


「うん」


美鈴がコクリと頷く。どうやら気合が入っているみたいだ。


「鎌倉君は…何を教えて欲しいの?」


「主に数学」


「分かったわ」


委員長は嫌な顔一つせずに、数学の教科書を机に出した。


「えーと…三角関数からでいい?」


「ああ」


確か三角関数はサインやらコサインの奴だったと思う。

さすがにその程度のことは分かるぜ!


「じゃあ復習ね」


「げっ!」


正弦定理、余弦定理に確かサインやらコサインやらがあった気がする。

しかし覚えたのは単語だけ。何てアホな頭脳をしているんだ、俺。


「サイン2乗とコサインの2乗を足すと?」


「サ、サイン2乗+コサイン2乗…」


「そのままじゃないの!!」


「うわぁ!すんません!」


でも間違ってないよな?


「答えは1よ!1!」


「へぇ…どうして?」


「それは原点中心の円を書いて…」


何かグラフに円を描いて俺に説明する委員長。

つうかもう眠くなってきた。


「原点から円周の1点に線を引いて…」


そういえば今の時間帯、Jリーグやってるかな…


「その線とx軸で挟まれた角をθとして…」


シータ…確か上空の城ラピタにそんな名前の人がいたな。あとモスカ…


「その円周の一点からx軸に垂線を引いて…」


うおっ!そういえばあのボスまだ倒してねぇ!

早くしないと鈍っちまうぜ!


「ここに三角形が出来るわけ。それでこの三角形を…聞いてる?」


「効いてる」


「…」


あれ?漢字間違えた?今の漢字だと委員長の攻撃が俺に「こうかはばつぐんだ」みたいに聞こえてしまうかもしれない!


「い、いや、こうかはいまひとつだよ?」


「誰がポケクリの話をしろって言った?!」


「すいませんすいません!」


数学は何故か集中力が切れてしまうんだよな…


「もう…!将来困るのは鎌倉君自身なんだからね!」


どこかでいつか聞いたことのあるセリフだ。


「すいません、春海さん、ここなんですけど…」


「あ」


その後、美鈴が委員長に質問をした。

結構真面目に取り組んでいるようだな、美鈴は。

少しだけやる気が出てきた。

俺は少し伸びをすると、再び教科書に目を通すことにした。

















時刻は午後3時。お腹が空いてきた。


「あ、兄さん。クッキー焼いたんですけど、食べます?」


「おうサンキュー朱里」


俺はナイスなタイミングでやってきた朱里に感謝した。


「美鈴ちゃんも一之谷先輩もどうぞ」


「ありがと〜」


「悪いわね。頂くことにするわ」


結局俺達は3人とも休憩に入り、勉強会はティータイムとなった。


「委員長ってさ、お姉さんみたいだな」


「え?!突然何?!」


俺は美鈴と仲良さそうに話している委員長に言った。


「いや、美鈴と姉妹みたいだと思っただけ」


「そ、そうなんだ…」


委員長は少し困った顔をする。何か悪いことでも言ったのかな?


「残念でしたね一之谷先輩」


朱里がツンとした表情で言った。

何やらこの二人はあまり仲が良くないらしい。

朱里にしては珍しいことだ。


「ま、まだまだチャンスはあるもの!」


「でも私の方があります」


「そ、そんなことはない!」


今度は言い合いになった。この二人って何で喧嘩してるんだ?


「お兄ちゃんも罪な男だね〜」


「美鈴、口にものを入れながらしゃべるのはやめなさい」


俺は保護者らしきことを言った。

全く俺も珍しいな。


「か、鎌倉君は私と朱里ちゃんはどっちの方が好みですか?!」


「私ですよね兄さん?!」


「は?え?」


何か俺が詰め寄られているのですが、どうすればいいんでしょう。


「鎌倉君!毎日夕暮れの教室で二人っきりで過ごしていますよね?!」


「いえいえ、私なんてホテルで兄さんと夜を共にしました!しかもシングルベッド!」


「おい朱里!」


「か、鎌倉君?!今のは本当なんですか?!」


うわあ!!何てこったい!!しかも事実なだけに言い返せない!!

俺は必死そうに俺を見る委員長と少し勝ち誇った顔をしている朱里を見る。

何かどちらとも今は選びたくない。


「本当ですよね?!兄さん?!」


朱里がすごい形相で詰め寄る。これを本当じゃないとか言ったらどうなるだろうか。

大変なことになってしまうだろうか。文化祭後みたいに。


「ま、まあ…だけどあれにはちゃんとした理由があってだな…!」


「ちゃんとしたも何もありません!兄妹でそんなところに行くなんて不潔です!」


「だ、だから違うのに〜」


俺は情けない声しか出なかった。いくらなんでも責めすぎですよ〜。


「ですが私、は、裸の兄さんの腕の中にいたり…」


「え〜!!お兄ちゃんそれは無いよ〜〜!!」


「鎌倉君?!」


「ぐは…」


俺の寿命を縮めさせないでくれ。そして美鈴、あなたも便乗しないでくれ。

それにあれは朱里が勝手にしたことで、俺は何も…

ていうか心の中で言い訳するぐらいなら、ちゃんと口で言えよ、ですよね。


「そ、それはあれだ!朱里が俺の風呂の中に…」


「ええ!!一緒にお風呂も入ったの〜〜〜?!」


「うわぁ!言い方考えりゃ良かった〜〜〜!!」


誤解が更なる誤解を招き、すでにカオスになっていた。

もう許してくれよ〜。


「あ、あのときの兄さんはとても優しくしてくれて…素敵でした」


朱里は顔を赤らめるな〜〜〜!!って俺の頬も熱い?!

そして美鈴と委員長はムスッと俺を見る。


「な、なあ朱里…これって文化祭のときの仕返し…じゃないよな?」


「そうです」


どうやら朱里はまだあのときのことを許しきれていないらしい。

確かにあれは軽率だったけど、許して欲しい。


「鎌倉君なんて地獄に落ちるがいいです」


「い、委員長!俺は!朱里とは!何でもない!」


俺は必死に弁明した。何で必死に弁明しているんだ?

まあ誤解されたままは嫌だからか。


「この澄んだような目を見てくれ!嘘をついているように見えるか?!」


俺は委員長の顔を自分しか見えないように固定した。


「か、鎌倉君…」


委員長は目をグルグルさせて頬を赤らめる。

きちんと見ているのか?


「わ、分かった…しんじるから…」


「ほっ…」


どうやら疑いは晴れたようだ。

俺は胸を撫で下ろし、ホッとした。


「む…」


「ん?」


しかし今度は朱里の顔がムスッとした。

最近こういうのが多いな、朱里は。今まで遠慮してたからな…


「兄さんのバカ。天然」


「な、何か俺悪いことをした?」


「いえいえ!もう何も言いませんから!」


そう言って朱里は俺の分のクッキーを食べてリビングから出て行った。

今日は厄日。そして長くなりそうだ。

俺はため息を吐きながらそう感じたのだった。



次回は奏編です。

おそらくタカ編と並んでシリアスになると思われます。


奏の過去や…っとこれ以上はネタバレですね。すいません。


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