番外編04 生徒会&担任編 リョウの伝説〜黄昏の兄君〜
さあ今回の登場人物は生徒会の4人。またもや朱里がいます。
そして担任の藤原先生です。
そしてちょいとサッカー講座やってます。
文化祭も無事終わり、俺は生徒会の手伝いとして片づけを手伝わされた。
まあ自分から名乗り出たんだけどね。結局文化祭では何もしなかった。
強いて言えばナンパのみ。うわ…最低だ。
「鎌倉涼平、これを教員室に持っていけ」
「はい…」
俺は風紀委員長の言うことに従って片づけをした。
ちなみに生徒会にナンパの件がバレ、俺は肩身の狭い思いをしている。
朱里と西岡には凄い目で睨まれ、風紀委員長にはパシリとされている。
ちなみに生徒会長はずっとニコニコしていたが。
「それと藤原先生からドライバーを貰ってきてくれ」
「はい…」
俺は言われるがままに従った。
ああ…今考えたら文化祭で仁と出会ったのが全ての失敗だった。
俺は何て馬鹿なことを…はぁ…
「あ、兄さん。ついでにここのダンボールも捨ててきてください」
「いや…俺持ちすぎな気が…」
「兄さん?」
何だか俺の方を見てる朱里の顔が怖い。
俺は恐怖を感じ、黙ってダンボールも持っていった。
うんうん、トレーニングの一環だと思えば余裕だ余裕。
「いえいえ何でもありません」
俺は愛想笑いみたいな引き攣った笑いを浮かべてダンボールを持っていった。
ああつまり愛想笑いは失敗してるってことですね。
ため息を吐きながら俺はこの場を去った。
「藤原先生、ドライバーを貸して貰いたいのですが」
「鎌倉君、精が出るわね」
「いえ…」
俺は珍しく先生に褒められていた。
まあ大荷物を持ちながら東奔西走をしていたので、邪険に扱われたら割に合わない。
「はい、ドライバー。あ、そういえば鎌倉君はサッカーをやってるのよね?」
「あ、はい」
俺に珍しく私的な話題を振ってくる藤原先生。
というか初めてか?
「どうして急にサッカーなんてやり始めたの?」
「いや、急じゃなくて、元々やってて再開したみたいな…」
詳細は省いて説明した。
陰鬱になることをわざわざ説明する必要は無いだろう。
「そうなんだ!サッカーやり始めてから何だかとっつきやすくなったわ、鎌倉君」
「そうっすか?」
妙にキラキラした目で話す藤原先生。
何かこんな先生は初めて見たぞ。
「そうよ!本当に良かったわ私…」
「どうしてですか?」
「折角赴任してきたのに、サッカー部が無いって言われたんだもん!私、サッカー部の顧問になるために教師になったと言っても過言では無いわ」
「…」
さすがに過言だろ。サッカー部の顧問になるために教師って…
「だから私、あなたのこと、応援してるわね!」
「あ、はい。じゃ、俺はこれで…」
「それで、ポジションはどこなの?!」
「え…」
何だこのマシンガントークは。俺、帰れないじゃないかよ。
「ポジションよ、ポジション!」
「えーと普通はMFですが、たまにFWもやります」
「と、いうことはトップ下ってこと?2列目ってこと?」
この人サッカーに妙に詳しいな。ちなみにトップ下というのはFWの一つ後ろのポジションのことである。
「まあそういうことっすね。一応サイドもボランチもやってましたが」
ボランチ:守備的ミッドフィルダーのことで、基本的にディフェンス面で活躍する。
残念ながらまだサイドは出来そうにない。豊富な運動量が必要なサイドは、スタミナが万全に戻っていない俺にはまだ無理だろう。
「へえ。中々ユーティリティな選手なんだ〜。それで、まさかファンタジスタ?」
ユーティリティ:比較的いろんなポジションもこなせる万能性ということ。
ファンタジスタ:いわゆるチャンスメーカーで、日本でいうと中村○輔がこれに当たる。
「それはどうですかね?まだまだですから」
「ふ〜ん。でもクラブの下部組織に所属しているということは、プロサッカー選手になるんでしょう?」
「まあそうですね」
一応夢は諦めたくない。そしてやはり俺の目標はワールドカップ。
まだ日本代表にすらなってないけど。
「楽しみね。試合とかいつやるか決まってるの?」
「夏休みに入れば結構…ですが、俺はまだスタメンじゃないんで、試合にはあんまり出られません」
そりゃそうだ。いくらテクニックがあっても、スタミナが無ければ意味が無い。
俺に欠けているのはこういう基本的な運動能力。
スタミナ、スピード、フィジカルのどれもがダメである。
まあ2年近く運動なんてしていなかったから、そのツケが今回ってきたというところだ。
「そうなんだ…でも頑張ってね。もしプロサッカー選手になったら、ファン第1号になっていいかしら?」
「あ、それは…」
俺は昔の約束を思い出す。
「どうしたの?」
「いえ、ファン第1号は先客がいるので…第2号でもいいですか?」
「先客?それって女の子でしょう!」
「?!」
何故分かった?!この人はエスパーなんか?!
「それくらい分かるわよ。ごめんね。野暮なことを訊いて…」
「いえ…」
何かこの人の口ぶりからして何かしら誤解してそうなのであるが、それが何だか俺には分からない。
「結構鎌倉君って女性教師の中でも最近は株が上昇しているのよ」
「へえ…」
「何だかフレッシュになったって」
まあ前まではただの問題児だったしな。
「貴方の心に変化があった証拠ね。はぁ…それに気がつかなかった私はちょっとショック…」
「いえいえ…」
俺としては早く会話を打ち切らねばまずいのだが。
「私ね、ここに来たときはもうやさぐれて大変だったのよ!でも生徒にそれを見せちゃいけないから…」
ガラガラ
そのとき、俺の背後から扉が開く音がした。
「鎌倉涼平!いつまで時間掛かってる?!」
「わっ!」
後ろには般若の顔をした風紀委員長がいた。
「藤原先生すいません。こいつが迷惑掛けて」
「ちょっ!俺は被害者!俺は親身になって担任教師の話を…!!」
「言い訳は向こうで聞く。それでは失礼しました」
「あ、うん。弁君も頑張って…」
藤原先生は唖然と俺達を見ている。
この教師、結局自分が引き止めたことについて何も言わなかった。
俺だけ損してるじゃないか!!理不尽な世の中になったものだ。というか最近ずっと。
「やあやあ。片付けは終わったかな?」
もう夕方になろうとしている頃、生徒会長がやって来た。
「いいえ、兄さんがモタモタしていましたから」
「あ、朱里…」
そんなに昨日のナンパはダメですか…
いつも俺の味方をしてくれるのに、今日は責めばっかり。
もう反省してるから許してください。
「ふーん。じゃあ後は僕と彼に任せて君たちは休んでていいよ」
「え?!」
何かとんでもないことを言い出したこの生徒会長。
俺は休んじゃいけないのか?
「解りました。会長の言葉に甘えます。朱里ちゃん、休憩しましょ」
「そうですね」
西岡と朱里は簡単に俺を見捨ててしまった。
彼女達にはもう一度謝っておくか…
「さて、仕事現場はこっちだよ」
「あ、はい」
俺は何故か人気の無いところにまで連れてこられた。
どういう意図だ?
「実はね、君にとある話が来てるんだ」
「はい?」
十中八九、サッカー関係のことだろう。
それくらいはさすがに分かる。
「とある学校がね、君を一週間だけ体験留学させたいって」
「体験留学?!」
俺は頭が真っ白になった。そんな答えは予想していなかったのだ。
「そうそう。君の過去を調べてね、君をとても気に入ったらしいんだ」
わざわざご苦労なことだ。
「残念ですけど、俺はここを離れる気はありません」
しかし、俺にとってはそんなものは何の価値もなかった。
すでにクラブチームの下部組織に所属しているし、俺はここが大好きだからだ。
「たった一週間でも?」
「はい」
「そうかいそうかい」
生徒会長は笑いながら俺の肩を叩いた。
「いやぁ、良かった良かった。実はもう断りの返事をしていたんだ」
「………は?」
生徒会長は笑みを崩さずに俺を見る。
「手違いでね、そういう風に送っちゃったんだ。でもわざわざ君に秘密にしなかったんだ。いい人だろう?」
「そーですね」
俺は棒読みで告げた。
この人は俺にとって将来的にも害になるようなことをしそうだ。
「話は以上。片付けはよろしく」
「俺一人にやらせるんですか?!」
俺は生徒会長に叫ぶ。
「昨日、校舎裏であったことをみんなに言っていいんだよ?」
「?!」
こいつ、覗いてやがったのか!なんて悪趣味な奴だ!
しかも止めろよ!
「じゃあ頑張ってくれたまえ」
「一つ質問していいですか?」
「どうぞどうぞ」
俺は真面目な顔で生徒会長を見る。
しかし対照的に生徒会長は顔にしまりが無い。
「俺がナンパしたって生徒会にバラしたのは会長ですか?」
「イエス!良く分かったね〜!」
「分かるわボケェ!!」
俺の怒号が廊下に木霊した。
そしてこれからは身の回りのことに気をつけようと思ったのだった。
サッカー単語意味分かりましたか?
まあ分からなかったら飛ばすか、質問してください。
次回はコメディ系の委員長編と、超シリアスな奏編をお送りいたします。
特に奏編は結構重要だったりします。サブキャラ的に。
以上また明日お会いしましょう。