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第24話 You're the only ONE

の、喉に激痛が…!




リョウのターンまであとわずか…リョウと朱里の接点は?!

「み…す…ず…?」


「うん。アタシ、美鈴。お兄ちゃんの妹の美鈴だよ」


俺の頭は真っ白になった。

目の前にいるのは俺の記憶の中に出てくる妹とそっくりな少女。

名前も同じ少女、美鈴。

彼女は…生きていた…


「お前…」


「私も諦めかけていた。何せ2年半も眠っていたからね」


そんなとき叔父さんが話し始めた。


「でも最近になって急に目を覚ましたんだ」


「急に?」


「ああ。科学では起こりえぬことだ。私も…絆というものの深さを知ったよ」


叔父さんが優しい声で言う。

人を一人でも助けることが出来て満足のようだ。


「ねえお兄ちゃん!私ね、今日退院できるんだって!」


「え?!もう?!」


「うん、もう日常生活には差し支えないんだって」


「そうか…」


でも良かった…これで今日はパーティに出来るかもな。

美鈴の退院パーティ…ん?

朱里?朱里は本当に喜んでくれるだろうか?

俺は未だに朱里と美鈴の関係が不透明だ。

そして俺との関係も。


「まあ積もる話もあることだし、しばらく話してなさい。でも帰りの新幹線に遅れないように時間になったら呼ぶからね」


「はい」


「はーい!」


俺と美鈴は同時に返事をした。

叔父さんはそれを見て微笑んで、外に出た。


「お前…よく生きていたな…」


俺は美鈴の頭を撫でた。


「えへへ…すごい?」


「いや、まあ…すごいよ」


そういうと美鈴は俺に抱きついてきた。


「おいおい…」


妙に幼いと思ったら、美鈴の時間は2年半前に止まっていたことを思い出した。

だから実際は高1なのだが、心は中1だった。


「お兄ちゃん、随分と身長伸びたね」


「そりゃあの頃から2年半経ってるからな」


「それに格好よくなった」


美鈴が照れながら俺に言う。


「そうか?お前は変わってないな」


「当たり前だよっ!!」


「ははは」


俺は美鈴と共に楽しい時間を過ごした。


「なあ美鈴…お前はどれくらい覚えてる?」


「うーんとね…パパとママが死んじゃったのは聞かされた…」


「そうか…」


美鈴もやはりショックを受けているみたいだった。


「でもね、お兄ちゃんと朱里ちゃんの叔父さんが良くしてくれていたから」


「?!…お前…朱里を知っているのか?!」


美鈴は朱里を知っている?!

やはり朱里は俺と繋がりがあったんだ…

俺はホッと胸を撫で下ろす。抱えていた不安が飛んでいきそうであった。

しかし、次の一言で俺は奈落に落とされた気がした。


「朱里ちゃん?うん、私ね、よく知らないんだ」


「え…朱里を知らないのか?」


「うん。何かね、よく分からなくて…」


美鈴が難しそうな顔で頭を捻る。

一体これは…どういうことなんだ?


「な、なぁ…俺って朱里と今住んでるんだ…」


「うん。知ってる。院長先生…から教えてもらった」


「お前と朱里は…知り合いじゃないのか?」


「う〜ん…分かんない」


美鈴はまた難しそうな顔をする。

まだ目覚めたばっかりだしな…俺と同じで記憶に問題があるかもしれない。

俺はそうであることを祈った。


「ところでお兄ちゃん、アタシって…学校どうするんだろう?」


「あ…」


そういえばこういう場合ってどうすれば…


「一応院長先生から中学の卒業証書は貰ったよ。でも…高校は無理かなぁ?」


確かに中学1年生までの勉強しかしていないんだ。

その学力で高校に行くのは無理があるかもしれない。


「高校、行きたいか?」


「うん!」


妹は元気良く返事をする。

そりゃそうだよな…学校生活したいよな…


「よし!勉強ちゃんとするか?」


「うん!」


「分かった。じゃあ俺と…いろんな奴らで勉強を教えてやろう!」


「ありがとう!お兄ちゃん!」


そう言って美鈴は俺にしがみついてきた。

さすがに俺一人じゃ教えるのは限界あるからな。主に成績面で。


コンコン


「あ、はい!」


そのとき、ドアがノックされる音が聞こえた。


「そろそろ時間だよ」


そんなとき叔父さんのそんな声が聞こえた。


「はい!美鈴、いくぞ?」


「うん!」


俺は美鈴と一緒に外に出た。

ちなみに美鈴の服は叔父さんと叔母さんが買ってくれたらしい。

本当に世話になりっぱなしだ。


「私は仕事の都合上、東京駅までしか送れないけど、大丈夫だね?」


「はい」


さすがにもう高校2年生だ。それくらい出来なきゃやばい。


「よし。じゃあ、乗り込んでくれ」


俺と美鈴は後部座席に乗り込んだ。


「久しぶりに外が見られる〜。ワクワク」


「あんまりはしゃぐなよ」


「分かってますよ〜だ!」


美鈴のそんなむくれた顔も今となっては微笑ましい。

これからは美鈴の分の夕食を作ったりなどしなければいけないから朱里も大変かもな…

そんなことを思いながら俺は窓の外を見ていた。













「ただいま」


「たっだいま〜!でいいの?」


家に帰ったとき、美鈴が大きな声でそう言った。


「ああ。当たり前だ。今日からお前もこの家の住人だ」


「えへへ〜」


美鈴が嬉しそうに笑った。

こいつ、やはり年不相応に子供っぽすぎるな。


「お帰りなさい」


「?!」


俺達を出迎えてくれたのは意外な人物だった。


「叔母さん!」


「お兄ちゃん…この人が…朱里ちゃん?」


「違うわい」


美鈴、お前は面白いボケを言うのが好きだな。


「ご飯はもう出来ていますよ。仕度して」


「あ、はい!」


いや、今日は珍しい日だな。

まさか叔母さんとも会えるなんて。


「あの…朱里は?」


「朱里ちゃん?」


叔母さんが首を捻る。


「そうですよ。朱里…」


「朱里ちゃんは今日、友達の家に泊まっていくそうですよ」


「友達の家…」


何だよ…折角俺が帰ってきたのに朱里がいないなんて物足りないな…

俺は少し残念そうにして、自室に戻った。


「はぁ…」


俺は妙に綺麗になった部屋を見た。

朱里がわざわざ片付けてくれたのか…


「ん?」


そんなとき、机の上に何かを見つけた。


「朱里の髪留め…?」


そしてそこに何かが留められていた。

そう、髪ではなく、紙が留められていた。


「?!」


俺はそれを見て驚愕した。





兄さん、今まで楽しかったです。



『さよなら』






俺は体が震えた。


「あ…か…り…?」


そして急に頭痛が俺を襲う。


「う…あかり…ぐうっ…」


俺の頭に何かが入ってくる。





わたし、あかり。


涼平さん、また会いに来てくれますか?


私、涼平さんの夢、応援してます!


涼平さんは…格好いいです…


涼平さん!涼平さん!…兄さん!!兄さん!!







「そうだ…!朱里は…!」


俺は急いで下に降りた。


「叔母さん!俺、ちょっと出かけてきます!!」


「え?!ちょっとどこに行くの?!」


「お兄ちゃん?」


二人が俺を見る。

多分朱里が友達の家に行ったのは嘘。

朱里は帰ったんだ。元々自分がいた世界に。

だから朱里はこれで元通りになったと思ったんだ。

でも…それは違う!!


「すいません!」


俺は外に出てとある人物をコールした。


「もしもし!」


「おや?君か。僕に電話をかけてくるなんて珍しいね」


相手は生徒会長。今はこの人しか頼りになる人がいないんだ。


「用件は分かっているでしょう?!」


俺は怒鳴った。この人は焦らすのがとんでもなく好きだ。

でも今はそんなことに構っていられない。


「…ふふ。確かに。君が僕に電話をかける理由は分かるよ」


やっぱり。俺の考えが正しければ、朱里はウチの学校に退学届けを出したのだろう。

それはあの生徒会長のこと、しっかりと耳に入れているはずだ。

そして好奇心旺盛のあの人のこと、理由を知りたがるはずだ。

そしてこうも思うはずだ。俺が朱里の居場所を知りたがるだろう、と。


「じゃあ教えてください!彼の…平泉敏樹の電話番号を!!」


「とうとう…辿り着いたようだね。分かった。その代わり早くしてくれよ。退学届けは受理前に僕が隠したんだ。早くしないと僕が大変なことになるからね」


「…すいません!恩に着ます!!」


俺は初めてこの人に心から感謝をした。

この人はそれに満足したのか、明るい調子で彼の電話番号を俺に教えてくれた。


「僕も彼女のような優秀な人材は失いたくないからね」


「はい…絶対…帰らせます!」


俺は確かな思いを胸に抱きながら決意をした。


「お兄ちゃん…」


「?」


そのとき、後ろから美鈴の声がした。


「美鈴…」


「アタシも…思い出した。だから!絶対朱里ちゃんを連れ帰して!!」


「ああ」


俺は実の妹の声援を背中に受け、歩きながら携帯電話を開き、会長に言われた番号に電話をかけた。


プルルルル…


「もしもし」


その声はとても懐かしい声だった…


次回は少し異色の雰囲気です。


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