第22話 バクダンの愛
ここに絶倫超人、鎌倉涼平が誕生したのだった…
いや、誤解ですよ?
「まったく…参ったよ」
俺は朱里に今日教室であったことを話した。
「何か俺が倒れたことが変な風に広まってやがった」
「そうでしたね…私もビックリしましたよ」
俺は今日あったことを回想した。
ガラガラ
俺はいつものように教室に入り、いつものように挨拶されて、いつものように着席するはずだった。
「ん?」
しかし俺は教室に入ったとき、ふと違和感を感じた。
男子生徒達の視線がきつい。女子生徒達は俺を見てコソコソ何かを話している。
「何なんだ?」
俺はいつものように席に着いた。
「あ、リョウ!」
「穂…」
そんな中、俺に気安く話しかけてきたのは穂だった。
どうやら彼女だけがいつもどおり…みたいだな。
「先に謝っておく。ゴメン。後は頑張って!!」
「はぁ?」
穂はそれだけ言うとダッシュして教室から出た。
「何だ一体?」
「鎌倉…」
「うわぁ!!」
そのとき、クラスメートの男子生徒達が俺の席の周りに集まった。
「お前…クラスのマドンナの木曽さんちに行っただと〜〜〜〜?!」
「え?!」
何でこいつらがそれを知っている?!
「しかも部屋にまで侵入したと聞いたぞ!!」
「はぁ?!」
いや、事実なんだがね…
「しかもその後木曽さんとピーやピー!あげくの果てに××しただとう〜〜〜?!」
「そこまではしてない!!出鱈目だ!!」
「しかもその後××しすぎて病院に運ばれたのに、看護婦さんたちとも××したらしいな!!」
「お前ら騙されてる!絶対騙されてる!!」
「そしてお見舞いに来た妹や木曽さん、壇之浦とも××して自分の男らしさを見せ付けたらしいな!!」
「意味不明だ!もう訳がわかんねぇ!」
さり気なく奏がいない。これは男子生徒が彼女に恐怖しているであろうか。
「くっ…コイツ…予想外に絶倫だったとは…」
「こうなったら処刑するしかないな!」
「は?」
何やら不穏な言葉が聞こえたのですが。
「島流しか?!死刑か?!」
「いや、面倒くさいから両方やっちまえ!」
「は?は?!は〜〜〜?!」
俺は男子生徒に囲まれ、退路がなくなった。
「う…」
俺の人生はここでジ・エンドのようだ。
しかも絶倫と誤解されたまま。
「それだけは嫌だ!!」
「こら!貴方達!何をやっているの?!」
「げっ!委員長だ!」
「しかも副会長まで!!」
俺を助けにきてくれたのは委員長と副会長の西岡さんだった。
「騒がしいと思ったら一体何?!」
西岡さんが男子生徒達を睨みつける。
「ひっ…」
なかなか鋭い眼光だ。俺も浴びせられてた方だから分かる。
結構鋭い眼光を持ってる。
「あ、ありがとう…」
そのおかげで男子生徒達が散らばった。
しかし、これがまた負の連鎖を生んだのだった。
昼休み…
ピンポンパンポン♪
「2年の鎌倉涼平君。2年の鎌倉涼平君。主に女性関係で確認したいことがあるので、至急生徒会室に来なさい。繰り返します――」
「うわぁ!!」
俺は急いで生徒会室に向かった。
「あっちゃ〜。予想外に大事になっちゃった〜」
ちなみに噂を撒き散らした犯人は、今頭を抱えた穂である。
「お前、どういう説明したんだ?」
タカが穂に尋ねた。
「リョウは昨日彩華ちゃんの家でいろいろあって病院に運ばれて、その後もまあいろいろあったんだけど、リョウはもう大丈夫らしいよ、と説明した」
「…その「いろいろ」をちゃんと説明しろよ」
タカが呆れる。
「ごめんね〜。何か面倒くさくなっちゃって〜」
「謝る相手はリョウだろ…はぁ…」
「謝ったけど〜」
最後に穂はそう口を尖らせた。
そんな会話が教室で交わされている間に、俺は生徒会室にやってきた。
コンコン
「2年の鎌倉涼平です!入ります!!」
「やあ。君もやってくれるね」
「何もやってません!!」
俺は強く生徒会長に言い返す。
というか校内放送であんなことを言いやがって〜〜〜!
誤解がまた誤解を生んじまわぁ!!
「とりあえず席に着け。弁明時間を与える」
俺は風紀委員長に促され、席に着く。
今、生徒会室にいるのは生徒会長、風紀委員長、副会長…といういつものメンバーだ。
「じゃあいくつか質問するからね」
「はい」
「好きなタイプはツンデレだ」
「ぬぁんだこの質問は〜〜〜?!」
俺は生徒会長に詰め寄った。
ヤバイ、今日は珍しく熱いぞ俺。
「まあ冗談はこれくらいにして…」
生徒会長はニンマリと笑みを浮かべ、俺を見る。
本当に意地の悪い生徒会長だ。
「じゃあ行くよ?」
「は〜い」
俺はダルそうに返事をした。
「昨日の夕方、君はクラスメートの木曽彩華さんの家に行った?」
「というか強引に連れ込まれました」
「で、彼女の部屋にも入った、と?」
「はい。それはそうです」
「そして段々気分が盛り上がった君は彼女の服を脱がし…」
「してない!俺はしてない!!」
「そう?じゃあ一応信じてあげるとしよう」
彼は何やらペンで紙に何かを書いていた。
「彼女が救急車を呼んだ理由は?」
「俺が頭痛で倒れたからです」
何これ?裁判?おかしくない?
「ふ〜ん。で、頭痛の原因は?」
「え…」
ちょっと待て。これって他人に言っていいことじゃないよな…?
「過労です」
「ふーん。過労ねェ…部活をせず、生徒会にも所属せず、アルバイトもせず、家事もせず、勉強もしない君が過労ねぇ…」
「ぐうっ!いいから次にいってください!!」
「救急車で君は病院に運ばれた。目覚めたら看護婦が君に群がり…」
「何そのハーレム?!むしろその光景見てみたいよ!!」
「ふ〜ん…看護婦さんたちとピーもガセか…」
何故か残念そうな生徒会長。本当にムカツクなこの人。
俺で遊んでいるだけじゃないのか?
「その後、お見舞いに来たのは妹、壇之浦穂、北条奏、木曽彩華、平仁、武蔵孝紀の6人?」
「はい、間違いないです」
「その後、北条奏、平仁、武蔵孝紀がいなくなった間に残った3人と第3Rをしたのは…」
「してません!!というかなんで第3なんだよ?!第1も第2も無い!それにその3人はいなくなってない!」
「これも否定、と…」
「何その言い方?!信じてないみたいじゃん!!」
「だってこれじゃ面白くもなんともないからね」
「アンタは真実よりユーモアが大事と言うんですか?!」
それじゃいつぞやの週刊誌の記者と変わらないじゃないか。
「…僕はあそこまでタチが悪くない」
あ、気分を害したようだぞ。
って…それって逆効果じゃね?!
「さ、気分を取り直そう。そして今日の朝、君は男子生徒達からその噂を聞いたんだね?」
「はい」
「つまりそのとき初めて聞いたと?」
「そうです」
「男子生徒達に囲まれてるときに助けに来たのは?」
「委員長とそこの…西岡さんです」
俺は西岡さんを指した。
「ふむ。何故彼女たちは君を助けたのかな?」
「知りませんよ。困ってたからじゃないですか?」
「はい、君は鈍感、と」
「はい〜?」
何だか段々関係なくなってきたぞ。
「ま、ここまでが君が聞いた噂で間違いない?」
「はい」
「そうかい。でもね、実はその後また噂が出来たんだよね…」
「え?!」
それは初耳だ。一体何なんだ?!
「委員長とそこの彼女…西岡さんが君に服従させられていると聞いたんだが…」
「はいぃぃぃぃぃ?!」
俺は変な声が出てしまった。
「どうやら彼女たちがすでに君の虜として夜な夜なピーを繰り返して…」
「出鱈目だ!絶対出鱈目だ!!」
俺は噂の発信源を殴りたくなった。
「それにそれなら西岡さんに聞くのが一番じゃないですか!」
俺は至極まともなことを言った。
「でもね、彼女に聞いても否定しないものだから…」
「否定しろよ!!」
俺は西岡さんに言った。
「ま、以上なんだけどね。何か質問は?」
「新たな噂の発信源は生徒会長ですか?」
「イエス!良く分かったね〜!」
「分かるわボケェ!!」
俺の怒号が生徒会室に木霊した。
「あんまり大きな声出さないでよ。マイクがいかれちゃうでしょ?」
「は?」
「以上、鎌倉涼平の弁明でした」
「オイィィィィ!マイク入ってたんかい!!」
今のは全て校内に…?!
ウギャァ!!!!!
俺は今日、ある意味のスーパーヒーローとなった。
「はぁ…」
「クス、兄さんっていろんな人たちから愛されてるんですね〜」
朱里が茶化すようにそんなことを言った。
「茶化すなよ…はぁ…こんな愛なら俺は断固拒否だ」
「ふふっ。あ、兄さんちょっと明日、叔父さんが用事あるらしいんですって」
「叔父さんが?」
何だ一体?叔父さんが俺に用事?
「はい。明日、正午に東京駅でだそうです」
「東京?!」
よりにもよって東京かよ…あんまりいい思い出無いんだけどな…
「あんまり行きたくないけど、しゃあねぇか…」
「叔父さんの頼みですもんね」
「ああ」
あの人に世話になってるからな。
本当に感謝してるよ、叔父さんには。
「だから今日は早く寝た方がいいですよ?」
「そうだな…俺はもう部屋に戻るよ」
俺は一人自室に戻っていく。
「はい、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
俺は朱里と挨拶して、部屋に戻った。
「…兄さん、ごめんなさい」
一人残った朱里は、自分の髪留めをテーブルの上に置いた。
「最後まで、うそつきの妹でごめんなさい」
彼女は兄の部屋にお辞儀をして、部屋に戻っていったのだった…
もう疲れたよ(*´ο`*)=3
これからどうしよう