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第2話 おでかけしましょう!

第2話投稿です。

爆弾にならないように気をつけます。

朝起きてみたらもうすでに陽が高く昇っていた。

あり?もうすでに昼なのでは?

学校は確実に遅刻である。しかし普通は朱里が起こしに来てくれるはずだ。

まさか朱里の身に何かあったのか?!

俺は急いで部屋を飛び出してリビングに向かう。

まさか朱里…


「朱里ぃぃぃ!!」


「キャッ!!何ですか兄さん。大声出して」


「あれ?朱里?」


俺は目の前にいる昨日と変わらぬ様子の朱里をジッと見た。


「そうですよ。兄さんの妹の朱里ですよ」


「あれ?今日って学校ない…のか」


俺は隣にあるカレンダーを見た。そこには今日は日曜日であるという色が今日の日付を彩っていた。


「クス。兄さん、朝ごはん食べますか?」


「いや、もうすぐ昼だし、昼食を多めに作ってくれ」


「はい、分かりました、兄さん」


そういうと朱里は手元に目を移した。

どうやら先ほどから何かを読んでいるようだった。


「何読んでるんだ?」


「あ、これですか?夏物のカタログですよ」


「へえ…」


正直俺はファッションにあんまり興味が無いので、見てても全然面白くない。


「あ、そういえば今日私、夏物の服を見に行きたいんですけど…兄さんも行きます?」


「いや、俺はいいよ。どうせ役に立ちそうにないし」


「そうですか…」


「…」


「…」


「…」


「…」


「…」


「…」


「分かったよ」


「ありがとうございます!」


俺は妹の甘え目に負けてしまい、行くことになった。

本当はダルイのだが、かわいい妹のため、頑張ってみようじゃないか。






「しかし…」


「兄さんもオシャレするぐらいいいじゃないですか」


「いやまあ…」


俺はいつもと同じ格好で外に出ようとしたのだが、その格好を見た朱里によって部屋に引き戻された。


「たまには兄さんもオシャレした方がいいですよ」


「だって着替えるの面倒くさい」


「私が着替えさせてあげます」


「ちょっ!意味分かってますかね?」


「そりゃあ…って何言わせてるんですか!兄さん!!」


「俺は何もしてない!無実です!」


つい敬語になってしまった。正直俺の中で唯一頭が上がらないのは妹の朱里だけだ。

そして結局…朱里の選んだ服を着て俺達は出かけることにしたのだ。

まあたまにはこういう日も悪くないな、多分、うん…







「じゃあ次はあっちに行きましょう兄さん!」


「お、おう…」


こういうときって女の子って体力あるな…

俺はもうへとへとだ。正確には買い物前からへとへとだが。


「どうしたんですか兄さん?まさか疲れてるんですか?」


「…そんなことはないぞ。まだまだ元気いっぱいだ!」


「そうですか。じゃあ休みましょう」


「…」


俺のことについては何でもお見通しなんですね。さすがは我が妹。

良く分かってらっしゃる。


「ここの近くに喫茶店は…あ、あそこですね」


朱里が指指した先にあったのはスターマックスコーヒーだった。


「ちょっと高くないか?」


「大丈夫ですよ。叔父さんたちからたくさんもらいましたから」


俺達は両親がいないので、金の工面は叔父さんたちがやってくれている。

本当に感謝してもしきれない感じである。


「そうか…本当に迷惑かけるな…」


「はい…だから私達も将来恩返ししましょうね?」


「そうだな」


俺達は朱里と一緒に喫茶店に入る。まあ予想通りというか周りはカップルだらけである。

ここにタカと奏がいてもおかしくはないな。


「で、兄さんは何にします?」


「俺か?そうだな…一番安い奴のトールサイズにしてくれ」


「いいんですか?」


朱里が上目遣いで俺を見つめる。もっと使ってもいいと言いたいのだろうが、あいにく俺は小遣いを最近発売されたドラドラクエスト9に使ってしまったので、少しは遠慮したい。


「ああ。どうせコーヒーとか分からないし。席だけ取ってるぜ」


「分かりました」


俺は2階に上がると、空いている席を探してみた。しかしかなり混んでるためか、中々見つからない。


「リョウじゃない。こんなところでどうしたの?」


「奏…と、するとタカも一緒か?」


「いえ。今日は女二人でお買い物よ」


と、すると奏の今日の相手は穂ということか。


「で、リョウはどうしてここに?デート?」


奏が悪戯っぽく笑う。俺の周りってこんなんばっか。


「妹と買い物だよ」


「何だ。やっぱりデートなんじゃない」


「え?!何々?!リョウがデート?!」


う、うるさいのが来てしまった…

多分お手洗いに行っていたであろう穂が戻ってきた。


「話をややこしくするな。俺は単に妹とだなぁ…」


「そう、ここ空けるから座っていいわよ」


奏がそう言ったので俺は遠慮なく座ることにする。

さすが、空気が読める女ということか。まあ読めないのはもちろん…


「あ、私の席に座ったわね。穂より私の方が好みかしら?」


「へ〜え。タカに殺されるぞ〜」


「お前らやっぱりヒドイ奴…」


そして結局そんなことしている間に朱里が来た。


「あ、兄さん!…と奏さんと穂さん!」


「ヤッホ〜」


「どうも、いつも兄に迷惑かけられてるわ」


「それはすいません…」


「ってお前ら!俺を虐めるのそんなに好きか?!」


穂と奏はともかく朱里まで俺を虐めるのか…


「じゃあ私達は行くわ」


「朱里ちゃんまったね〜!リョウ、アンタは遅刻しないようにするのよ!」


「お前は俺の親か」


こうして騒がしい奴らは去っていった。

そして束の間の静寂が訪れる。


「…なんか喫茶店に入って逆に疲れた気がする」


「すいません。私も悪乗りしちゃって…」


朱里が心底すまなそうに謝ってくる。何か逆にかわいそうになってきた。


「いやいや朱里は悪くないって!悪いのはあの二人!それでいいだろ?」


「いや、あんまりよくないですよ」


「確かに…」


無理にまとめようとしたんだが、さすがに無理すぎたか。


「じゃあ今日はこれで帰りましょうか」


「え?お前はそれでいいのか?」


「はい、また来週行きましょうね」


「げ…」


しっかり来週に約束取り付けられてしまったし…

まあ妙に朱里が嬉しそうだからいいか。俺はそんな風に考え、コーヒーを吸った。







「あっ!兄さんちょっと先に帰っててください!」


「どうした?」


帰り道、朱里が突然叫びだした。


「夕飯の買い物を忘れていました!ちょっと買ってきますので、先に帰っててください!」


「あ、ああ…」


俺が返事をした後、一目散に元来た道を引き返した朱里。

待っててやるべきだろうか?いや、帰れって言われたから素直に帰った方がいいかもしれんな。

でも夜遅くなったら危ないし…

俺はそんな思考を自然とめぐらせて立ち止まっていた。

そのときふと横を見たら土手が目に入った。そういえばここって近くに川が流れてたな…とか思いつつ、目を凝らしてみた。

すると一人の少年がサッカーボールでリフティングをしていた。見た感じ小学4年か5年ぐらいだ。

ハッキリ言って彼のリフティングはかなり下手だった。下手するとサッカーやってない人よりリフティングが下手かもしれない。

それでもめげずにやっているのは負けず嫌いなのか、努力家なのか…



数分後、別の小学生達がやってきてその少年に絡み始めた。

予想だがあまりに下手なのをバカにしているのだろう。そして挙句の果て、少年はサッカーボールを遠くに飛ばされてしまう。

さすがにこれはやりすぎだろう、と俺がそう思ったとき、一人の青年が小学生達を注意し始めた。

小学生達はそれを聞いて一目散に逃げ出してしまう。しかし、俺は見た。ボールが川に入ってしまう瞬間を。


「あ!」


少年が声をあげたとき、すぐさま気づいた青年が川に飛び込んでボールを取り返した。

今どきこういう若者っているんだな…

俺は呑気にそんなことを考えた。

無事青年はボールを少年に渡し、少年は頭を下げた。しかし少年はその場から去ろうとせずに、再びボールを蹴り始めた。


「あれ?兄さん?」


「あ…朱里」


後から朱里が俺を呼んだ。


「まだ帰ってなかったんですか?」


「あ、ああ…一人で帰るの面倒くさかったからな」


「クス…なんですかそれ」


朱里は少し笑った。


「兄さん、何かをジッと見てましたよ」


そう言って朱里は土手を見る。

そこにいたサッカーボールを蹴る少年を見て朱里の顔がさっと曇る。


「に、兄さん…」


「帰るぞ。もう随分日が暮れちまったからな」


「はい…」


朱里は晴れない顔のまま俺に付いてきた。

大方マズッたとでも思っているのだろう。

俺はさっき見た光景を忘れることにして家に帰ることにした。


「朱里、気にするな。お前が気にすると俺まで暗くなる」


「そうですよね…」


結局朱里の表情は晴れずに今日一日が終了したのだった…




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