第17話 迷走RUN
リョウに死亡フラグが立ちました。すいません。
※この作品はフィクションなので、作品中に出てくる人物や団体は、実際の人物や団体とは全く関係ありません。だからつっこまないでください。
最近昔の夢をよく見る。いや、昔のことを思い出すと言った方が良いか。
何故かは知らないが、随分と急である。
「なあ」
俺はリョウグループ(穂は気に入っている)の奴らに話しかけた。
「俺さ、死亡フラグ立ってるかも」
「…は?」
「何言ってんだお前」
「とうとう頭がおかしくなったのね」
「お前…ドンマイ…」
しかしみんなの反応は冷たかった。
仁までもが俺に対して冷たいのだけは納得がいかないが。
「俺、最近昔のことをよく思い出すんだ」
「お葬式には呼んでね」
「奏は絶対に呼ばん」
俺は断定口調で言い返した。
もうこいつらには相談しねぇ。
「昔のことってね〜…あんまり思い出したくないな〜」
穂はかなり嫌そうな顔で言った。というかお前のことじゃないから。
今話題にして欲しいのは俺のことだから。
「そうそう穂ってこう見えて昔は根暗で…」
ゴン!
「あいたっ!」
「誰に?」
「そういうよくあるボケはいいから!」
仁が思いっきり穂に殴られた。ちなみにそのあとに「誰かが必ず言いそうな」ボケを言ったのは奏である。
「なあリョウ。一つ訊いても良いか?」
「どうしたタカ?」
「その思い出っていい思い出なのか?悪い思い出なのか?」
タカが真面目に質問する。
まあこの中では一応真面目担当だからな。
「悪い…思い出」
「じゃあ大丈夫じゃない」
「へ?何が?」
奏が急に口を挟む。悪い思い出で大丈夫…ってこいつはまた人をからかうのか?
「悪い思いでは死亡フラグじゃないっていうこと。普通死ぬ人は死ぬ前にいい思い出を思い出すものじゃない?」
「う〜ん…そんな気がしなくもない」
「つまりアンタは一生生きて苦しめってことよ!」
「オイ、何で生きて苦しまなきゃいけない。むしろお前が苦しめ」
「ああ?何か言った〜?」
コイツ、本当に女かよ。言葉遣い悪すぎ。
「いや…仁はどうしようもないカスだと言った」
「はい?!いきなり俺?!しかもカスかよ!!今までで一番ひどいぞ?!」
俺はそんないつものような会話を交わして、帰る支度をした。
「ただいま」
「お帰りなさい、兄さん」
「お、朱里」
朱里はいつの間にか帰ってきていた。
確か今日の夜のはずだと思ったんだが…
「予想外に早く着いてしまいました」
「そうか…」
俺はまず何事もなく帰った朱里を見てホッとした。
「あの…兄さん。一つ訊いてもいいですか?」
「何だ?」
朱里が少し不安そうに俺のことを見た。
一体どうしたのだろうか。
「私とどうして一緒に暮らしているんですか?」
「…は?」
俺はそんな質問に拍子抜けした。てっきりもっと深刻な問題かと…
例えばもうお金ないからどうしましょう?とか、この裸の女性が載ってる雑誌は何でしょう?(すでにばれている)とか。
「変な質問をしてごめんなさい。でもどうしても訊いておきたくて…」
「はぁ…まあいいけど」
だから俺は当たり障りのない答えを口にした。
「妹と一緒に暮らすのって別に普通じゃないか?」
「そうですよね」
朱里もそれには納得していた。が、まだ何か言いたそうだ。
「じゃあ私が妹だから兄さんは一緒に暮らしているんですか?」
「…その訊き方が良く分からないが…そういうことになるな」
「そうですか…」
妹が妙に元気がなくなった。一体どうしてだ?
「お前、東京で何かあったのか?」
「え?!そんなこと全然ありませんよ。あはははは…」
朱里は何かを隠してる。特に俺とのことで。
しかし無理に聞きだすつもりは無い。だから俺は朱里の好きにさせる。
「そうか。じゃあ俺は部屋に戻るから」
「はい、分かりました。夕食が出来上がりましたら呼びますね」
「ああ」
俺は短く妹に告げ、自室に入った。
「…朱里」
最近ものごとを考えることが多くなった。
以前より内向的になり、インドア派になった俺は、妙に考え事をするのだ。
「何か…そう…何か…」
俺は何かに気づき始めていた。
元々何かおかしいんだ。
俺は記憶を辿るも、2年半前で途切れてしまう。
そう、そこからはうろ覚え。しかも朱里に教えられたことも多い。
つまり、一種の記憶喪失。
「朱里…」
俺は彼女の小さい頃の顔を思い出す。
しかし、それがどうも上手くいかない。
俺に妹はいた。それは確実。しかし、肝心の顔が出ない。
「何で俺は朱里のことを知らないんだ?」
あかり…あかり…朱里。口にすればなんとも言いやすい名前。
つまり、何年も口にしてきた証拠。
俺と朱里は兄妹で、ずっと一緒だった。そういうことだ。
「…面倒くさ」
しかし、急に考えるのが面倒くさくなってしまった。
なので、寝ることにする。おやすみなさい。
「鎌倉涼平くん…ですね」
「はい?」
翌日、俺は学校の帰り道で一人の男に呼び止められた。
「私はこういうものです」
男は名刺を出してきた。
週刊近代編集部…竹田哲也、と書いてあった。
というか週刊誌の記者?何でそんな人が俺に?ゴシップのタネでも探しているのだろうか。
「それで…何か用ですか?」
「少しお聞きしたいことがあるんですが、時間はよろしいですか?」
「…」
は?面倒くさいに決まってるだろ。何で俺が捕まる?
全くもって運が悪い。
俺は自分の心の中で小さくため息を吐いた。
「すいません。時間無いもので…」
「ですが、そういうわけにもいかないんです。元U−15サッカー日本代表エース、鎌倉涼平君」
「?!」
こいつ…まさか…?!
俺は読み間違いをしていた。
この人は何かネタを探しているものだと思っていた。
それは違う。初めからネタはあったのだ。
そうだ、俺はこいつらにとっては恰好のネタだ。
「…何が望みなんですか?」
「ちょっとインタビューに応じてくれるだけでいいんだ」
「…わかりました」
俺は了承してしまった。
でないと何を書かれるか、たまったもんじゃない。
―生徒会室―
「始まったみたいだね」
「何がだ?」
生徒会長がニヤッと笑みを浮かべ、風紀委員長を見る。
「マスコミさ。とうとう動いたみたいだね」
「経明お前…」
弁は黒い笑みを浮かべる生徒会長を見た。
そして嫌な考えが浮かぶ。
「これからいろいろ面白くなりそうだね」
「これはやりすぎなんじゃないのか?」
「何が?残念だけど僕には分からないよ」
「…」
これが生徒会長の最後の笑みとなった。
彼はその後、すごく真剣な目で窓の外を見ていたのだった。
次回…
リョウが…で、生徒会長が…し、…を…してしまう。
そして最後に朱里が…