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第14話 ハッピーバースデー

最古の話です。(時系列的にはここでOK)



―放課後―


ピンポンパンポン♪


「あーあー。2年の鎌倉涼平くん。至急生徒会室に来なさい。繰り返します2年の――」


「…は?」


俺は校内放送に耳を疑った。


「リョウ、アンタ何かしたの?」


「いや…」


俺は穂の質問に首を横に振った。

生徒会室に呼ばれることに関していいことなど何一つ無い。

注意、または生徒会長による俺の公開弄り。

まあとにかく呼び出されて行ってもロクなことはない。


「でも行った方がいいんじゃない?」


奏がニヤッと俺に向かって笑いかける。


「当たり前だ。行かなかったら多分平気で停学にする」


あの合宿さえなければこんなことにはならなかったかもしれない。

単にあの人が去年俺に甘かったのも全てこのための布石。

そう考えると寒気がしてきた。あの腹黒生徒会長に。

俺はため息を吐きながら生徒会室へと足を進めた。









コンコン


「2年の鎌倉涼平です。失礼します」


俺は慣れた素振りで生徒会室へと入る。

出来れば慣れたくない行動なのだが。


「よく来たね」


「いや、来ないと何かしでかすでしょう」


「まあそうなんだけどね」


「…」


否定しろよ。

生徒会室にはいつもと同じ笑み(黒い)を浮かべた生徒会長、相変わらず鋭い目の風紀委員長、なぜかあんまり目を合わせてくれない副会長がいた。


「それで、今度は何で俺を弄るんですか?」


俺は精一杯の嫌味を言ってやった。

どうだ!言ってやったぞ!虚しいだけだけど。


「やだなぁ。今回は君を祝おうという企画を立てたんだ」


「はぁ?」


「明日、君の誕生日だよね?」


「…そういえばそうだった気が」


残念なことに、俺は今日の日付を覚えるような人ではない。

なので、明日誕生日であるかどうかは自分はよく知らない。


「それをここで祝おうと思うんだ!そう!お誕生日パーティ!」


「俺は生徒会の人間じゃないからそれはマズいんじゃないですか?」


「ま、細かいことは気にしなくていいよ」


「…」


この生徒会長。自分の楽しみのためなら様々なことをアバウトにしやがる。

全く、とんでもねぇ奴だ。


「分かっていると思うけど君に拒否権は無いよ。後ね、このことは明日みんなに伝えてくれる?サプライズとして」


「へいへい」


俺のやる気無さげの返事にもニコニコで対応する生徒会長。

本当にこの人はすごい人だよ。

俺は考えるのが面倒くさくなったので、会長の話もそこそこに、廊下に出て行った。










「で、何だった?」


仁たちが教室に戻ってすぐに俺を取り囲んだ。

ちなみに退路は無い完璧なフォーメーションである。


「いつもと同じ俺弄り」


「お礼尻?」


「仁、お前の頭は残念すぎる。Go to hell!」


俺はいつもとは考えられないくらい素晴らしい発音の英語をしゃべった。


「スマンリョウ。その英語の意味分からない」


「…お前…」


しかしあまりにもバカなこいつの頭には効かなかった。

というかこいつ英語で罵倒されても気づかないんじゃないか?


「俺が知ってる単語はf○ckとかs○xとかだからな〜」


コイツ、死んだ方がいい。


「仁、アンタ羞恥心ってもの無いわけ?」


さすがに穂も呆れている。

タカも奏も言わないだけでひどい目をしている。


「裸になるのに羞恥心は必要ないだろ」


「何で裸になるんだ、何で。わけを言え。わけを」


俺は少し退きつつも冷静でいられることが出来た。

つうか自重しろ。


「生徒会の勧誘じゃないのね」


「当たり前だ」


奏が俺に向けて口を出した。


「そう。でもあの会長、あなたがお気に入りだから分からないわよ」


「それを言うな」


俺のことをある意味気に入っていることはさすがに分かる。

しかし…しかし…嫌なものは嫌なんだ。

俺はリョウグループ(奏命名)での会話もそこそこに、家に帰宅した。












「おう朱里。何か嬉しそうだな」


家に帰ると朱里が妙にニコニコしていた。


「それは当然です」


朱里はニコニコ笑いのまま言った。

何か嬉しいんだろうか。まあ俺が気にすることじゃないか。


「兄さん、明日は早く帰ってきてくださいね」


「ああ」


俺はこのときの生返事を至極後悔することになる。

こういうとき、面倒くさがりというのは困る。


「ごちそうさま」


俺はそれを気にせず席を立つ。

早く自室に戻ってゲームの続きでもしよう。

最近ゲームばかりしているような気もしなくもないが、仕方がない。

ゲームはいい。他人と無駄に関わりを持たなくて済む。

俺はいつものようにそう考え、自室に戻った。












「今からお前の誕生日パーティを生徒会で〜〜〜〜?!」


教室に仁の声が響き渡る。つうか声デカイ。耳が悪くなる。


「というかアンタの誕生日だということをすっかり忘れてたわ…」


「穂の誕生日にはプレゼントなしだな」


「や、やだなぁ。冗談よリョウ。じょ・う・だ・ん」


俺はしらけた目で穂を見る。


「そんなこと言って…結構前からプレゼント用意してたでしょ、穂」


「な、何でそれを?!」


奏がニヤニヤしながら穂を見る。いつも思うのだが、こいつに弱みを握られたら人生が終わりそうだ。


「タカ、元気に生きろよ」


「なあ、俺の死亡フラグ立たせるの止めてくれるか?」


しかし俺の励ましはタカには逆効果であったらしい。

死亡フラグは仁に立たせるべきか?だがこういうキャラは中々死なないんだよな。


「とにかく、来たい奴は来てくれ」


「そんなこと言わなくても俺達は全員行くぜ」


仁が嬉しいことを言ってくれる。たまにはいい奴と思ってやろう。


「わ、私も行くわ!!」


「い、委員長?」


俺が振り向いた先にいたのは委員長だった。


「ク、クラスの代表としてやっぱり出席しないと!」


「意味分からん」


最近思ったのだが、委員長って結構頭がおかしい。

真面目かと思っていたのだが…意外と謎な行動を起こす。


「とにかく私は行くからね!」


そういうと委員長は急いで教室から出て行った。


「リョ、リョウ君…」


「ん?」


今度は俺の右隣から声が聞こえた。


「私も行っていいかな?」


声の主は木曽さんだった。意外や意外。あ、でも友達なら普通か?


「もちろん」


俺はタカ達を見たが、彼らも頷いた。

まあタカだけが複雑な顔をしていなくもないが。


「ありがとう!」


木曽さんは俺に抱きついてきた。


「うわっ!」


俺がドキッとするのも束の間、突然俺は木曽さんと離された。


「?」


引っ張ったのは穂と仁だった。


「リョウはみんなのものだから抜け駆けは厳禁よ彩華ちゃん」


「そうだそうだ!(く〜〜〜!コイツばっかりいい思いしやがって〜〜〜!!!)」


やはり仁だけは言葉の裏に何かありそうだ。例えば女の子に抱きつかれて羨ましいとか。


「お前ら…保護者すぎ」


「う〜ん…リョウ君の周りにはライバルが多い…」


木曽さんがブツブツ何か呟いたが、すぐに笑顔になった。


「じゃあ生徒会室でまた会いましょう?」


「ああ」


俺は彼女と別れ、タカたちに向き直る。


「お前、結構モテモテだな」


「タカ、お前が言うとやはり嫌味になる」


俺は短くタカに言った。やっぱり勝ち組は違うのか。いや、奏の彼氏にはなりたくないけど。

ロリコンじゃないし、マゾヒストでもない。


「そういえば何か大事なこと…朱里?!」


俺は朱里にこのことを伝えるのを忘れていた。


「いきなり妹の名前を叫ぶ兄。シスコンもここまで来れば重症ね」


「悪い奏。今はお前にツッコミを入れる暇は無い」


俺は携帯を取り出し、朱里にコールすることにする。


ブーブーヴー


「うおっ」


しかしそれより先に携帯のバイブレーションが鳴った。

どうやら朱里が電話してきたみたいだ。


「もしもし」


「あ、兄さんですか?今日は何時ごろに帰ってきます?」


「ああ…それなんだけど…」


何で朱里に言うの忘れてたんだ俺。朱里なら昨日言っても問題なかっただろ。

俺は自分を責める。


「今日は生徒会室でパーティやるらしいからさ…家では食べないと、思う」


「え…」


朱里のひどく落ち込む声が分かる。


「だからさ、お前も生徒会室に来いよ、な?」


「…兄さん…っとそういえば私、今日は蘭ちゃんに用があるんでした!ごめんなさい。どっちにしろ祝うことは出来ませんでした。テヘ」


「…朱里」


俺は朱里が来られないことを残念に思った。


「まあ帰ったら祝ってくれよ」


「はい」


俺はそう言って電話を切った。


「朱里ちゃんは?」


「何か用事があって来られないらしい」


「へぇ…」


みんなが微妙な目で俺を見つめる。

俺はその視線を気にせずに生徒会室に向かう。


「じゃあ行こうぜ。遅れると何か言われそうだ」


タカたちは無言で俺に付いてきた。














電話が切られた後、私は呆然としました。

今まで毎年祝ってきた兄さんの誕生日。いつも家で私と一緒に過ごす兄さんの誕生日。

でも今日は叶いそうにない。

パーティに出席すればいいのかもしれないが、生憎私には後片付けが残されてしまい、行けそうにない。

私はテーブルの上に置かれたケーキを見つめた。

兄さんのために作ったのに…無駄になってしまった。

どうせパーティ会場でもケーキを食べるのだろう。だからもうこれはいらない。

私はそのケーキをどうするか悩んだ。さすがに捨てることはできない。

結局私は少し思案し、後で何とかすることに決めた。

どうせまだパーティは終わらない。

私は自然と潤む目を隠すように机に伏せた。


「兄さん…」


私はそのまま寝てしまいました。











パチン


「ただいま〜」


「え?!」


私は突然の声に顔を上げた。


「おう朱里」


「に、兄さん?!」


私は時計を見た。さっきより1時間ほどしか時間が進んでいない。


「あれ?このケーキ…」


「あ!それはその…」


私はいい言い訳が思いつかず、困惑した。


「美味しそうだな。食べて良いか?」


「え…兄さん?」


「お預けとか止めろよ。腹減ってんだから」


「でも兄さん…パーティで…」


いくらなんでもパーティが終わるのは早すぎる。


「いやいや調子悪くなったんで途中で帰った。あ、でもこのケーキ食べれば治るかな」


兄さんがおどけた調子で言う。

兄さんは優しい。私と一緒に誕生日を過ごすために嘘をついてでも帰ってきた。

兄さんがいない誕生日パーティなんて意味ないの分かっているのに。


「でもいいんですか?主役が途中で帰って」


私はそう言いながらも顔は笑っていた。

何だかんだいって、かなり嬉しかった。


「いいっていいって。みんな俺の誕生日に託けて騒ぎたいだけし」


「クスクス…兄さんったら…」


兄さんはちょっとため息を吐いて呆れていた。


「じゃあ今からケーキを切りますね!」


「ああ頼む」


私は嬉しさを隠せないままケーキを切り始めた。

あ、そう言えば言い忘れていました。


「誕生日おめでとうございます」


「あ、ああそういえば言われてなかったな…ありがとう」


「あと…」


「何だ?」


私は言葉に詰まる。


「な、何でもありません」


「…ま、いいや。いただきます」


兄さんは私の作ったケーキを一口、口に含む。


「お、うまいなこれ」


兄さんの嬉しそうな声が聞こえた。

それだけで私は幸せなんです。

兄さん、これからもずっと一緒にいてくださいね。



次回からシリアス風味と言うか…


リョウの…が…で、…がリョウに…するみたいです。

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