第10話 IT'S CAMPING TIME!
コメディはいりま〜す
※このおはなしはフィクションです以下略
努力してもどうしようもないことがある。
絶対に叶わない夢や希望もある。
俺の枯渇の原因もきっとそこにあるのだろう。
「鎌倉涼平」
人間が誰でもぶつかるであろう壁。すなわち挫折。
それを乗り越えてこそ人は強くなる。成長する。
しかし俺のように弱い人間は…
「鎌倉涼平!!」
「うわっ!!」
俺は驚きで転びそうになってしまった。
突然横から大声で名前を叫ばれたら無理もない。
「俺について来い」
「風紀委員長…?」
俺を呼んだのは予想外の人物であった。
そう、俺のことを目の仇にしているはずの風紀委員長、弁慶次(先輩です)だ。
「俺何か問題起こしましたか?生徒会から注意を受けるんですか?!」
呼ばれる理由も無いので混乱する。それとも意識していないだけで、俺はとんでもないことでもしてしまったんだろうか。
まさかカツアゲとかじゃないよな?仮にも風紀委員長だし。
「来れば分かる」
「はい?」
多分この人は教えてくれないだろう。全く…難儀な人だな。
そうやって俺が連れて行かれた先は普通に生徒会室。
「あの、俺ってやっぱり何か…」
「入れ」
「あ、はい」
確かにいつもは校内放送呼び出しなのに、今回は直接接触。
違和感と不審な点がいくつか。別の用件なのか?
「失礼します」
「待っていたよ」
入ると、いつもと同じ微笑を浮かべた生徒会長と俺のよく知る副会長、そして朱里がいた。
「な、何事ですか?!」
一応朱里は生徒会役員なので、ここにいてもおかしくはない。
おかしいのは何で俺がここに呼ばれたのか、だ。しかもみんな勢ぞろいで。
「そう、君を呼んだのはほかでもない。生徒会合宿に参加させるためだ」
「はい?生徒会合宿?」
俺は頭に疑問符を浮かべる。生徒会なんて俺にはある意味でしか縁が無いと言うのに。
「彼女からの推薦なんだけどね」
「西岡?」
どうやらこの提案をしたのは俺の元クラスメートの西岡静らしい。
どうして彼女がこんな提案なんてしたのだろうか。
「最近のあなたはそこそこ更正してると思うの。だからこれを機に一気に更正させようという魂胆なわけ」
「俺もそれなら…と思い賛成した」
西岡の他に風紀委員長までもが賛成したらしい。
でも正直面倒くさい。合宿なんてしんどい行事、誰が好き好んでする?
「私も賛成です。兄さんとお泊りなんて…」
「朱里、誤解を招く言い方をするな」
正確にはみんなとだぞ。
「それで、君はどうするかな?」
「俺か…(面倒くさいな)」
「もちろん参加して見事に更正したら今までのスタンプを全て取り消そう」
「参加します」
俺は即答した。今までのが帳消しになるのなら参加した方が身のためだろう。
それに朱里がいるから暇もしないだろうな、うん。思い直すの早いな、俺。
「じゃあこれが資料だ。目を通しておくんだよ」
俺は生徒会長から資料を渡された。
随分と細かい字で書かれている。うわぁ…読むの面倒くさ…
「じゃあ1週間後だからね。忘れずに来るんだよ。忘れたら停学ね」
「は、はい…」
何か今生徒会長の黒い一面が見られたんだが…
「じゃあもう用は済んだから。帰っていいよ」
「分かりました。失礼しました」
俺は最後に一礼して去ることにした。
何だか朱里と西岡が俺に意味ありげな視線を向けていたが…よく分からん。
俺は気にせず教室に変えることにした。
「ええ?!お前が生徒会合宿に?!」
「ああ」
案の定、教室でその話をしたらみんなから驚かれた。
「どういう風の吹き回し?」
奏が不思議そうに俺を見る。
「今までのスタンプ帳消しを条件に出された」
「ああ…」
「なるほど…」
「面倒くさがりのリョウが応じるわけね〜」
奏、タカ、穂が思い思いを口にする。
「ていうか生徒会ってあの西岡がいるんじゃね?!く〜〜〜〜〜!女と旅行かよ!!羨ましいぜチクショ〜〜〜〜!!」
仁は一人悔しがっている。
「お前な、風紀委員長もいるんだぞ」
「…リョウ、お前に同情するよ」
「アリガトウ」
俺は棒読みで仁に感謝した。
「それにしてもお前はいい変化してるんじゃないか?」
「そうか?」
俺自身は2年半前と何も変わっていない…いや、むしろ人間的に悪くなった気が。
「まあ無事に帰れれば何よりね」
「奏、お前は生徒会合宿を出征とかと勘違いしてるだろ」
奏は悪びれもなく目を細めてニヤッと笑う。
タカ、こいつのどこがいいんだ?かわいいんだ?教えてくれないか?
「じゃあ今日はあれね、リョウの出征祝いとしてリョウに奢ってもらおう!」
「何だ出征祝いって?!しかも俺が奢るのか?!」
「ダメ〜?」
穂が組んだ両手を前に持ってきて上目遣いで俺を見た。
「ダメだ」
「しちゃ…ダメ?」
「…かわいく言っても何故かときめかない。不思議なくらいのお前の色気のなさ」
「コイツ…!」
俺は額に青筋を浮かべた穂をあしらって教室を出た。
生理現象を済ませるためだ。
「さあ兄さん、準備できましたか?」
「まあな」
1週間後、俺は朱里と共に出発の準備をしていた。
ちなみに集合場所は学校である。
「じゃあ行くか」
「はい!」
朱里は元気よく、俺は少し気だるく出発した。
「あ!鎌倉君!」
「い、委員長?」
俺達が学校までの道のりを歩いていたら委員長が出現。
「合宿行くんでしょ?行きましょう?」
「え?委員長も行くんですか?」
何故敬語?というかこれ前にも言った気がするのは気のせいか?
「そうよ。あなたのお目付け役として!」
「私は結構忙しくなりそうで…」
どうやら朱里がお目付け役を名乗り出たのらしいが、1年の生徒会役員は結構忙しくなるらしく…
でも委員長を持ってくるのはちょっと…なんか好き勝手出来なさそう…
「だから行動中は常に私の傍にいて私の言うことを聞くように!」
「げえっ…」
「わ、私だって好きでやってるんじゃないんだからね?!」
「はいはい。分かってます分かってます」
これは予想以上に大変な合宿になってしまうかな?
風紀委員長だけでなくクラス委員長もいるなんて…面倒くさいことこの上ない。
そんなこんなで俺達は学校に到着。
「やあ。ちゃんと遅れずに来たようだね。感心感心」
「当然のことだ」
すでに生徒会長と風紀委員長は到着していた。
さすが、というところなのか。しかし西岡だけまだ来てないんだが。
「す、すいません!」
と、思ったらこっちに大きな荷物を背負って走ってきた。
「まだ集合時間前だぞ。何で謝る?」
俺はつい口からその言葉を出したことに後悔した。
「別にアンタには関係ないし」
「そうかいそうかい…」
俺から絡むとろくなことが起きなそうだ。
「…遅れずに来たのね」
「当然だ…って風紀委員長が」
「それもそうよね」
俺は珍しく西岡と刺々しくない会話を交わした。
ていうか久しぶりか。こいつとこういう風に話すの。
「うんうん。みんな遅刻せずに来たようだね。じゃあまだ早いけど出発しようか」
こうして生徒会合宿が始まった。
しかし俺はまだ生徒会長の真意に気づいていなかった…
さあ生徒会長タイムか?!妹タイムか?!次回はヤバいですいろいろ