第1話 ブラザーフッド
初めまして。
小説なんて初めて書くので緊張しています。
良ければ読んでください。
何かを感じる…
何だこの感じ…
まさか夢の中?
目の前には二人の少女。
彼女達は…誰だ?
どうにも上手く思い出せない。
そう、記憶には引っ掛かっているんだ。
…それにしても
俺は何でこの光景を見ているのだろうか。
出来ることなら夢くらいもっと楽しい方がいいのに。
例えばハーレムとか?
…やめよう。あいつみたいになる。
さて…これからどうしよう…
とりあえず…
「起きてください!!」
「おわっ!!」
ドタンとベッドから落ちた俺。
頭から落ちたせいか、かなりぼうっとする。
目の前の女の子の顔をただぼうっと見つめていたのだ。
「兄さん、今日から高校2年生ですよ。もっとしっかりしてください」
「…ああ、そうか。妙にかわいい女の子だな、とか思ってたんだけど、俺の妹か!」
「っ…!そ、そんなことより早く着替えてください!」
その後妙にドタバタした動きをしながら我が妹は部屋を出て行った。
それにしてもあいつ…
「どうしたんだ?」
俺はその場で首を傾げるだけだった。
ちなみに俺、鎌倉涼平は妹と二人暮らしの高校2年生である。
まあ今日からなんだけどな。
妹の名前は鎌倉朱里といい、家事を何でもこなしてくれるスーパーウーマン。いや、ガールの方が適切か?
まあとにかくそんな万能な妹のおかげで俺は今日も無事に生きているというわけなのだ。
両親は俺が中学二年のときに他界している。理由は事故死。電車の脱線事故と言うやつ。
俺も大怪我を負ったものの、命に別状はなかった。そして妹はたまたま別の電車だったおかげで助かっている。
まあしかし俺はそこまで悲観はしていない。確かに不慮な悲しい事故ではあったが、俺には妹が残っていた。
だから俺は…おっとこんなことを思い出している暇は無いのであった。
早く着替えなくては。さすがに初日早々に遅刻はやばいですからな。
俺は黙々と着替えを始めた。
「それにしても今日からまたダルイ1日が始まるんだな」
「休み中でも兄さんはダルイって言ってましたけど?」
「…」
俺は妹の作ってくれた朝食を平らげることに専念することにした。
「そ、そういえばお前も今日から俺の学校に通うんだな!」
「今頃気づいたんですか?」
朱里がジト目で俺を見る。
そんな顔をしないでくれ。俺は悲しくなる。
まあ確かに忘れていた俺も悪いんだけどね。
「そ、それより早く食べろよ!遅刻しちゃうぞ?」
「私は食べ終わりました。しゃべっている暇があったら早く食べてくださいね」
「…はい」
まあぶっちゃけ妹に弱い俺は妹に口げんかで勝てたためしが無い。
まあ喧嘩になる前に俺が白旗を揚げるのだが。
「さ、朝のお祈りも済ませたことだし、行こうぜ」
「はい、兄さん」
俺達は何とか遅刻しない程度の時間に家を出ることに成功した。
そのまま家の前の門を開けると、先客が立っていた。
「おはよっ!リョウ!そして朱里ちゃ〜ん!!」
「おはようございます、平先輩」
「人の妹を気安く呼ぶな」
このお調子者でバカそうな男は認めにくいが、俺の友達。
名前は平仁という。名前が短いのがまあ特徴である。
「今日は遅刻しないで来たようだね」
「お前も常習犯だろうが」
ちなみに俺とコイツ、仁は遅刻の常習犯である。
「お前と一緒にするなよ。お前は遅刻しない時間に起床しても、ダルイダルイ言いながらノソノソ歩いて遅刻したりしてるじゃんかよ〜」
「説明口調有難う」
俺は長文を語る仁に謝辞を述べた。
「それより兄さん、早く歩いた方がいいですよ」
「そうだな」
「俺も俺も!!」
こうして俺達は3人で登校することにした。まあ約1名はお邪魔虫であるが。
かわいい妹との会話に横槍とか入れてたりするからな。コラ、シスコン言うな。
「じゃあ私は体育館に行ってます」
「おう。変な男に捕まるんじゃないぞ」
「大丈夫ですよ兄さん」
俺は妹と別れ、仁と一緒にクラス分けの紙を見に行く。
「…人が多いな」
「おっ。新学期早々ダルイ病が発病か?」
ニヤニヤした顔で仁が俺に言う。
「別に。単に人ごみが嫌いなだけだよ」
「そうですかそうですか。ま、代わりに見に行ってやるからお前はそこでジッとしてろよ」
そいつは俺に向かって親指を立てると、全速力で人ごみの中へ駆け込んだ。
その3秒後にはあいつは人ごみの先頭に立っていた。すごい奴だな、お前。
「あ、リョウ発見!」
「ん?」
俺は声がした方に顔を向けた。
そこにいたのは去年から見慣れた顔、アイツ…仁の幼馴染の女子、壇之浦穂だった。
「アンタまさか仁に自分のクラスを見に行かせたでしょう?」
「いや、アイツが勝手に行っただけだが」
俺は嘘はついてない。本当にアイツが勝手に行った。
まあどうして行ったのかとかはさすがに察することが出来るが、こいつの手前、認めたくない。
「ふ〜ん。へ〜え。ほ〜お」
「何だその嫌らしい笑い方は。女をとうとう捨てたか」
「あん?何か言った?」
「…何でもないです」
俺はこいつから目を逸らした。どうせ口では勝てないのは分かってる。
口論しても、言い返すのが面倒くさくなって、俺が白旗を揚げるのは目に見えている。
「それにしてもアイツ遅くない?」
「確かに」
俺達は一緒にアイツのいた方を見る。
「「あ」」
俺達はとある光景を見た。
それはアイツが見事に生徒達の下敷きになっていた光景だった。
まあアイツらしいといえばらしい。
「まあアイツは放っておいて行かない?」
「俺は自分のクラスを知らないんだが」
「アタシと同じだから大丈夫大丈夫」
「初めからそう言ってくれ…」
俺と穂は一緒に階段を上がって教室に向かう。
「それでアンタ、部活とかは入らないわけ?」
「当たり前だ。面倒くさい」
俺は少し語尾が荒くなりながら返した。何せこいつはおせっかい焼きだから俺にとってはいちいち面倒くさい。
「アンタねえ…結構運動神経いいと思うんだけどねえ…」
「俺よりタカの方があるぞ」
「まあそれはそうなんだけど」
ちなみにタカというのは武蔵孝紀という俺の親友。
イケメンで彼女持ち。運動神経抜群だが、バイトが忙しいらしく、俺と同じく帰宅部。
「タカはアンタと状況が違うじゃない?アンタは何も無いけどタカはバイトやってるでしょ?」
「…俺も家でやることがあるんだよ」
「さあ何かな?言って御覧なさい!」
ニヤニヤ笑いで俺に詰め寄る穂。ああ、言い返すんじゃなかった。
「…レベル上げとか」
「何のかなぁ?まさか例のドラドラクエスト9じゃないでしょうねぇ?」
こいつのニヤニヤ笑いは止まらない。だから女を捨ててることに気づけ。
「…あ。教室に着いたぞ」
「話を逸らしたわね」
「さて、席はどこかな?」
俺は黒板に貼られている席順表を見ることにした。
後から何やら文句を垂れている声が聞こえてきたが、俺はシカトした。
「お前はあそこ」
「え?」
そんなとき、聞き覚えのある声が俺の隣から聞こえた。
「タカ!」
「よっ。リョウ」
「ぐっもーにん、リョウ」
「あ、奏も一緒か」
俺に話しかけてきた男はさっき話に出た武蔵孝紀、通称タカ。そしてその隣にいる奏という女子は、タカの彼女の北条奏という。
「まるで私はついでみたいね」
「いや、そういう意味じゃなくて…」
「アンタら二人また見せつけてくれてるわね〜」
そんなとき、アイツも会話に混じってきた。もちろん穂のことだが。
まあ俺達5人…俺、タカ、仁、穂、奏は去年も同じクラスだった仲良しグループって奴だ。
朱里もこのグループに入るのだが、如何せん去年は学校が違うために、よくつるむのはこの5人だ。
それにしても朱里はだいじょうぶなのかな…
「はい問題!今、リョウは何を考えているでしょう?」
「オイ、何だいきなりその問題は」
俺はテンションの高い穂に槍を刺してみた。
「「妹」」
「即答かよ!しかも同時に言うなんて相変わらずラブラブだなオイ」
しかしそんな槍はタカと奏のラブラブパワーの前にもろくも崩れ去ったのだった。
「そう。私達ラブラブ」
「…羞恥心無いんですか?」
この二人の桃色空気に犯されるとおかしくなりそうだ。
「まあアンタも似たようなものよ。シスコンだし」
「シスコンは単に家族愛だ!俺は正常な人間です」
「まあそんなことより席に座ったら?先生来たわよ」
「うわっ!」
俺達がくっちゃべってる間に、いつの間にか担任教師だと思われる女性教師が教壇の上に立っていた。
しかもやつはすでに自分の席に着席していた。ちゃっかりした奴だ。
「みんな席に着いたようですね」
どうやら最後に席に着いたのは俺らしい。しかし一つ空席が…ああ、仁か。
どうやらアイツは無事に帰還出来ずじまいだったようだ。
「私は――」
担任の挨拶を俺は机の上にうつ伏せになりながら聞き流した。
別に担任のことをよく知る必要が感じられないし、眠いし、面倒くさいし…
俺はそのまま睡魔に呑まれることにする。
キーンコーンカーンコーン
起きたのはちょうど入学式が始まったときであった。
全く…何て運がいいのだろう。
「鎌倉くん、初日から寝るなんて…春休みボケが治ってないぞ?」
しかし先生はさすがに気づいていたらしい。単に注意しなかっただけか…
ちなみにこの先生は藤原栄子と言うらしい。まあ黒板にそう書いてあるし。
「…すいません」
「隣の木曽さんに感謝しなさい。あなたのプリントを全部たたんでおいてくれたのよ」
「え…木曽…さん…?」
俺が驚いたのはプリントを全部たたんでおいてくれたことではない。
俺の右隣に木曽さんという人物が座っていることであった。
「え、えーと…」
俺が隣を見ると、彼女は困ったように愛想笑いを浮かべた。
まあそうだろう。俺も気まずい。俺は彼女…木曽彩華から目を逸らした。
「…ありがとう」
「う、うん…」
俺達の間に気まずい空気が流れる。しかしまわりは何人ももうおしゃべりしているので、誰も俺達のことなど見ていなかった。まあそれは救われたところだ。
「おーい!リョウ!」
「ん?」
考え事をしている俺に仁の能天気な声が聞こえてきた。今はそれに少し感謝した。
「今、ちょうど入学式だよな?!」
「そうだな」
無駄にテンションが高いアイツ。どうせロクでもないことを考えているに違いない。
「お前は心配じゃないのか?!」
するとそいつは途端に声を低くして俺に話しかけた。随分と深刻そうな表情だ。
「妹の朱里ちゃんが変な男に目をつけられていないか?とか!」
「…心配だな」
「だよなだよな?!じゃあ一緒に体育館に行こうぜ!!」
「何を考えているんだお前は」
俺はダルそうに息を吐いた。
「まあいいだろ?行こうぜ行こうぜ?」
「…どうせ暇だからな」
俺はそう理由をつけて体育館に行くことにした。
入学式の最中に体育館に忍び込むのは勇気がいる。
何せ扉をあける音は静かな体育館ではよく響くからだ。
「おっ、やってやってる」
ちょうど校長の式辞のときであった。
朱里は…いた。背筋をピンと伸ばして真面目に話を聞いている。
まさに優等生という感じだ。さすがは我が妹。中学の頃は学年トップの成績だったしな。
そんな朱里がこの高校に入学した理由は多分俺だ。俺のよくない噂を聞いて入学したのだろう。
確かに俺はお世辞にも優等生とは絶対に言えない。何せ遅刻の常習犯だし、成績は赤点ばかりだわ、授業中はほぼずっと寝てるし、酷いときはサボタージュだ。
どちらかというと問題児って奴である。
「俺なんかのために…アイツ…」
「おおっ!」
そんな俺の呟きは隣から聞こえた能天気な声に掻き消された。
「あの子レベル高くね?おっ!あっちも!」
「…」
どうやらコイツは単に新入生でかわいい女の子を探しているだけのようだ。まあ予想なんて簡単についたが。
「う〜ん…お前はあの子とあの子のどっちが好みだ?」
「…朱里の方がかわいいな」
「そりゃあ朱里ちゃんは別格だよ!比べることの方が間違ってるって!」
どうやらこいつから言わせると、俺の妹はとんでもなく可愛い部類らしいのだ。
普段はアテにならないこいつの発言も、女の子のことについてなら信憑性はすごく高くなる。まあダテに万年発情児なだけはあるな。
「お前今失礼なことを考えなかった?」
「お前の女を見る目の素晴らしさを褒めただけなのだが」
「そうか?照れるぜ!」
そしてこいつは女の子の物色を再開した。
時々目が血走っていることは敢えて言わないことにしておいた。
「朱里、変な男に捕まらなかったか?」
「何ですか突然?」
俺は帰宅後、一応朱里に聞いておいた。
「いや、仁がさ、お前可愛いからそうなるかもって…」
「平先輩がですか?」
朱里は俺の目をジッと見た。
何かかなり真剣そうだ。
「どうしたんだよ」
「兄さんはどう思うんですか?」
「は?」
俺はちょっとアホっぽい声を出してしまった。あんまりこういうのは俺のキャラじゃないんだけどな。
「兄さんは心配だったんですか?」
「まあそりゃあ…な」
一応妹だし。変な男に捕まっていないかどうかは心配だ。
「…どうしてそういう風に思ったんですか?」
「そりゃあお前が妹だから心配に決まって…」
「何で平先輩の言ったことを信じたんですか?」
「え?そりゃあ…アイツは女を見る目があるからな」
俺は珍しく仁を褒めた。多分アイツを褒めることなんてこういうときしかないだろう。
「…そうですか」
朱里は少し気を落としたみたいだ。理由は不明だ。
まあ女心は複雑と言う奴だからか?俺も身を以って経験したしな。
「でもまあ…やっぱりお前は可愛いからな。これからも気をつけろよ」
「に、兄さん?!」
朱里は俺を見ながら軽く頬を染めた。
おいおい…そんなに恥ずかしがることか?
「じゃあ、俺はレベル上げしてくるから。夕飯になったら呼んでくれ」
「はい!分かりました!今日はいつもより気合入れますね?」
何で?
まあそんな疑問は部屋に入ってドラドラクエストを見たときにすぐに消失したのだが。
とにかく俺の高校生活が再び始まったのだ。
波乱万丈な…そんな生活が、ね。
まずは継続を目指します。