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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
はじまりのはじまり
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さよなら限定

スライムのようなものも一緒に粒子となって消える限定破魔矢を見送り、その場に体育座りして拗ねていれば、オロオロと白狐が私の周りを周り、寄り添うように隣りに座った。

さっきまでの偉そうな態度とは真逆で、心配そうに、もしくは困った様に目じりを下げ私の顔を覗き込もうとしてくる。


「ふっ……あははっ!めっちゃ心配してくれてる!はははっ!」


もう困ってしまってどうしようもありません!みたいな白狐の様子が堪らなくなり、不機嫌だったのも、まぁいいや。っていう心境になり笑ってしまう。

急に笑った私にビクッと伏せていた耳を立てれば『笑うなっ!!!』と恥ずかしいのか大声を出してバタバタと尻尾を振られた。


「かわいー!照れてる!!」

『むぐっ!!やめよ、人の子!!貴様、臭いのだ!!』


横に座る白狐にぎゅぅ…と抱きつき、モフモフの体毛に頬擦りする。

干したての布団のようなお日様のいい匂いがして、ふがふがと匂いを嗅いでいれば『やめろ、臭い!』と言いながら白狐が私の腕からすり抜けて行った。


確かに。


泥だらけだし、スライムのようなものの粘液で体はドロドロでちょっと沼っぽい臭いがする。

ちょー簡単にいえば死んでる水の池に落ちたような、そんな感じの臭い。



立ち上がり見回しても辺り一帯が草原で何も無い。

てか、どこだココ…。


うーん。と考えるも、粘液が次第に乾いてきてパリパリとそこら中にに張り付いて全身が気持ち悪い。


幸いなことに相棒のエンジンはかかったままなので、白狐に「とりあえず、水場を探さない?」と提案し1人と1匹で車に乗り込む。


『…貴様は何故、吾を助けたのだ?』


座席に敷かれたビニールが嫌なのか、お尻の方をモゾモゾとしながら白狐が運転する私に聞いてきた。

私も相棒のシートを汚さないように着座部分にビニールを被せたがホントに1枚ビニールを挟んだだけで座り心地が4割くらい悪くなる気がする。


「前に助けてもらったから。あなたとあなたの神社に」


白狐の問いにそう答えれば白狐は『そうか』と小さく呟き話をやめた。

音楽プレーヤーの音楽が静かな車内に流れ、草原ドライブが始まった。

黙って外を見ている白狐の横顔は月灯りにてらされて凛々く神々しい。








30分くらい行くあてもなく相棒を走らせれば、まぁまぁな大きさの川にぶつかり車を停めた。

「ここをキャンプ地とする…」

車から降り、野太い声を出して昔やってたバラエティ番組のデレクターの真似をして言い白狐を見る。


何を言ってるんだコイツ。と言いたげに、ジトッ…と私を見る白狐の視線が痛い。


「ここをキャンプ地と『もうよいわ!』」


もう一度言おうと口を開けば白狐からツッコミが入る。

なんだろ。

この子とはいいコンビになれそうな気がする…。


白狐も車から降りてきて川に近付き水の匂いを嗅いでいる。

水色は透明で透き通り、魚影もチラホラ。

「飲料水には出来ないかもしれないけど体洗うくらいは出来るかな?」

私も手ですくった水の匂いを嗅ぐ。

腐った水の臭いもしないし、薬品臭い感じもしない。

川の水とかは一見綺麗でも飲料水にできない場合が多い。

飲料水に向かない水を飲むと酷い下痢に見舞われるのだ…。



行水出来そうな水だと判断すれば、相棒のトランクを開けてカーサイドタープを設置する。

『おい、なんだそれは?』

いそいそ、と設置している私に川から戻ってきた白狐が不思議そうにタープの周りをくるくるとまわっている。


「おおおっと、お客様っ!こちらの商品をご存知ない?こちらの商品、お持ちの車のハッチバック、車両横に簡単に設置出来る簡易タープなのです!しかも、車種車幅選ばない伸縮自在タイプ!超軽量ステンレス製でなんと重量は1.5kgで女性でも軽々設置!脚もコンパクトに収納可能で場所を取らないから、いつでもどこでもお車に!お値段なんと!今ならキャンプチェアが2つついて送料無料のお値段8990円!!!」


買った当時、ずっとラジオで流れていてすっかり覚えてしまった通販番組の文言。

買おうかどうかしばらく悩み、意を決して電話をしたのだ。

最近は宅配BOXがあるから全国どこでも宅配が受け取れるようになり、本当に放浪者には有難い世の中になった…。



元々は車中泊で着替えなどをする時に目隠しの役割に使用しようと購入したのだが、このタープを導入した事により非常に車中泊生活が楽になったのだ。



『ほう?これで雨風も凌げるのだな。大したものだ』


でしょでしょ?

車体側に接する面以外はシートが伸びテントのようにもなるこのタープに白狐も感心したようにタープの中に入ったり出たりして遊んでいる。


キャッキャウフフ…と飼い犬とキャンプに来ているような楽しさでキャンプの用意をしていく。

なんだろう。

すごく楽しい!



30分もしないでタープにチェア、テーブルを出して、着替えとタオルも用意して準備バッチリ!

律儀に用意が終わるのを待っててくれた白狐と目を合わせ、うん、と頷き合えば川に向かいダッシュする。


気温的には春先とか秋口くらいの外気温だが水温はまぁまぁ高くて水に飛び込んでも全然大丈夫だった。


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