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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
はじまりのはじまり
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レッツ、1人旅!

相棒が私の所に来てから、最初は運転に慣れる為に市内の寺社を周って御朱印を頂いた。


人が多い人気の神社や、国民的キャラクターとコラボしている神社。

巨大な天狗が書かれている神社。


御朱印を集めれば集めるほどその魅力にハマっていく。

なんでこんなに素晴らしい趣味を今まで知らなかったんだ?!って思うほどに。


市内から県内、と行動範囲が広がっていけば次は他県の…と意欲的に寺社を調べ巡るようになっていった。

なんたって時間は持て余すほどにあるのだ。

社会生活という縛りがない分、自重しなかったというのもあるけども。





そんな御朱印が中心の生活になってあっという間に1年が経った。


貯金額は少しずつ減ってきてるが、御朱印集めをはじめてから増えた趣味の1つの『ハンドメイドの御朱印グッズ』作りが功を奏し予想していたよりもずっと貯金の使用額は少ない。




「これなら…出雲大社にいって1週間くらいかけて西の方を巡るプランもいけるかも…」


記帳したばかりの通帳の残高は前回記帳した時よりも少し増えていて、かねてより考えていた神々が集まる島根県の出雲大社を筆頭にぐるりと寺社を巡る旅が出来そうだと口元が緩む。


そりゃあ、時間に余裕があるといっても毎日…いや、毎日行く時は行ってしまうけど…先立つものが多い場合は躊躇してしまい北関東の地方都市暮らしの私は近場から車で行ける所を日帰りで巡るという手堅い巡り方をしていた。



出雲大社といえば、知ってる人も多いだろうが「神様のふるさと」とも呼ばれる大社だ。

御朱印集めをしているならば絶対行っておきたい神社No.1だろう。


「島根県行って、近畿回りで帰ってくる?それとも飛行機で行っちゃって、九州地方も制覇…?」


夢が広がる。


快適に御朱印巡りが出来るように私の所に来た時よりも更に装備がグレードアップした相棒で、ぐるりと大巡りに寺社に参拝しながら出雲大社を目指し、またぐるりと巡りながら帰ってくるコース。


飛行機で目的地までサクッと行って、時間が許す限り寺社を全力で巡る予定ぶっ詰めコース。


どちらも良い…。


しかも、今は学生達の夏休みがちょうど終わり、旅館やホテルのオフシーズンだ。

格安で宿もとれるだろう。

最悪、車中泊でも寒さに震えながら寝ることも無い。


うーんうーん。と悩むも口元のニヤケは収まらない。



結局、相棒と行くまったり巡礼プランに決めて次の月曜日に出発することに決めた。

必要なものを買い揃える猶予は3日。



ペットボトルのお茶を箱買いし、運転しながらでも手軽につまめる乾き菓子や傷みにくい食料をこれでもか、というくらいに買い込む。



いちいち外に出る度に飲み物やお菓子を買っていたらキリがないのだ。

節約できることは節約して、できるだけ寺社にまわしたかった。

車中泊になっても大丈夫なように毛布代わりにもなる大判の膝掛けを積み込み、今まで集めた御朱印帳を保管している箱も積み込んで準備はバッチリ。


きちんとガスの元栓を締めて、戸締りをして貴重品も持ってワクワクしながら相棒に乗り込んだ。







--1週間後、


大満足な成果を上げ帰路に付き、まったりと自宅に戻ろうとしている途中からひっきりなしに鳴る携帯。

運転中だし。と無視していたが、様子がおかしいレベルで鳴っている。

それも30分や1時間と時間が経てば経つほど携帯の呼出音が続いた。





なんだろう。と、やっと休憩をしようと車を停め携帯の画面を表示すれば両親祖父母をはじめ仲のいい友人達からの着信が何百という件数を表示していた。


ちょうど画面を見ていたタイミングで父から、また着信があった。


何事か、と電話に出れば「今どこにいるんだ?!!」と叫ぶように言われた。

意味がわからず、居場所を言えずに「えっと、えぇっと…」と地名があるものをキョロキョロと探していれば電話の向こう側で母が悲鳴のような声をあげて泣いているのが聞こえた。


「ど…どうしたの…?」


電話の向こう側の異常事態に恐る恐る問いかければ、父ではなく祖父の硬い声が「幸菜か?」と問いかけてきた。


「今、お前のアパートで立てこもり事件が起きてる。それもお前の部屋で。」

「…は?」

「…通り魔が押し入った部屋がお前の部屋で、若い女性が人質になっている…」


祖父の言葉に意味がわからず車のラジオをかければちょうどその事件の速報を男性アナウンサーが淡々と読み上げている。



世間を騒がせる事件の舞台となった自宅。


家主と思しき若い女性が人質にとられている模様。って、私の家で私は1人旅の帰り道で家まであと1時間以上もある。


訳の分からない状況に膝が笑う。


「お前は…安全な所に今いるんだな…?」

祖父の祈るような問いかけに精一杯、大丈夫。今、旅行の帰りだから家にはいない。と答えた。


祖父はそんな私の言葉に電話越しにでもわかるほどの安堵の息を吐き、警察の人に代わる。と短く言われた。


警察官を名乗る男性が祖父と代わり、私の名前と年齢、生年月日、住所等を確認して「近くの警察署に行って保護してもらってくださいお迎えに行きます」と指示を出される。


このまま家に帰る、と言ったが、それはダメです。と譲ってもらえなかった。

早く家に帰らねば、と思いながらも警察官の指示通りに近くの警察署に行った。


簡素な待合室に通されて、あれやこれや聞かれているうちに祖父と両親が保護されている警察署に迎えに来てくれた。

祖母は私を心配し過ぎて血圧が上がってしまい具合が悪くなって家に戻ったらしい。



なんか、ごめん。ばぁちゃん…。



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