とりまく環境
食事を終えて、3バカトリオを追い払って、今日は村を案内してくれるというアルに食材を調達できる場所を教えて欲しいとお願いした。
10世帯ちょっとの村なので大きなスーパーみたいな場所や市場は無いが、村人同士が利用する直売所みたいな場所があると案内してくれた。
『ほう!食材が沢山売っておるぞ!ユキナ!』
初めて見るのであろう小さな市場に興奮気味のコタロウ。
社からしか外の世界を見たことがない、と言っていたししょうがないのかもしれないが嬉しそうに振っている尻尾をみるとコチラまでほっこりとした気持ちになってくる。
「あ!でも、コタロウ待って!」
『なんだ、ユキナ!吾は早く見に行きたいぞ。』
「お金持ってないじゃん!私達!」
『あ…』
そう。私達は無一文。
さっきまで尻尾をフリフリとご機嫌だったコタロウの尻尾が分かりやすいほどしょんぼりと垂れ下がってしまった。
「なら、村長の家に先に行ってしまいましょう!討伐の報酬分まだですもんね!」
アルが気を利かせてくれたおかげで、またコタロウに元気が戻ってくる。
『早く行こう!急がねば美味いものが無くなってしまうぞ!』
「コラ!コタロウ!噛んじゃだめでしょ!」
急げ急げと、アルの腰の辺りをグイグイと引っ張るコタロウを怒るも効果はなく「落ち着かなくて、ごめん」と言えばニッコリと「気にしないでください」とコタロウに連れられてアルは先に行ってしまった。
「待ってよー!」
先に行くと言っても、市場の反対側にある少し大きな家が村長の家で見失うことは無いのだけどね。
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村長の家に行けば、麻の袋に入った金貨10枚と炭の塊ような物を渡された。
「村長、これは?」
「昨日のアンチマジックベアから出た魔石です。全て村に下さる、と仰っていましたがここまで大きな魔石ですと大変高価なものですし、我々でも持て余してしまうものですので、大きな街に行った際に売って路銀にするも良し、魔道具の素材にするも良しです。お持ちください」
そう言われ鈍く黒光りしている”魔石”と呼ばれたものを見る。
僅かに鼓動しているような感じがする不思議な石。
まぁ、いらないと言ってるし石なら腐る物でも無いから良いか。と肩からぶら下げていたボストンバッグの中へとしまう。
この行動が今後おかしな事態を招くことになるのだが、その時の私は手に入れたばかりの金貨を持ち、コタロウと早々と市場に繰り出したのだ。
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市場ではのぞく店全てで声を掛けられたし、買い物をした店では買った分より多いオマケを貰いコタロウと大満足だねー。などと話していた。
買い物をしてみてわかったのは金貨1枚が10万円くらいの価値でその下に白銀貨1枚1万円、銀貨1枚千円、銅貨1枚百円、といった感じの価値で4種類の貨銭があった。
村民同士ではあまり金銭のやり取りはなく、物々交換が多いのだとアルが教えてくれる。
都市部以外の村では物々交換で事足りてしまうので、現金収入の無い村民の越冬は大変だとも教えてくれた。
冬を越す食糧の備蓄を買うにも都市部に行って足りない分を買うので大変らしい。
今回のような魔物の討伐依頼にしても報酬が良くなければ、冒険者はこんな辺鄙なところに来るよりも迷宮にこもっていた方が稼げるし安全なのだそうだ。
(ああ、だから3バカトリオは偉そうだったんだ。)
高ランクの冒険者ともなれば、その過去の実績と信頼度の為、簡単な依頼でも高額な依頼料を取れるという。
冒険者のランクは色々上げる手段があるから腕っ節に自信がある人や魔法が使える人はみんな冒険者になってしまうらしい。
村に残るのは子供や老人、才能がなくて冒険者になれなかった人や、事情があって冒険者を引退した人ばかりでたいした戦力にもならないのだとか。
だから、討伐の依頼を出す→村人はお金を払ってるのに助けて貰ってるのに有難がる→金も貰えるしチヤホヤされるしで最高!とつけあがる冒険者が多い。と合点がいった。
その仕組みが悪いとは言わないけど、自警団とかは持たないものなのだろうか。そっちのが自分達でやるからお金もかからないし良いんじゃないかとも思うが村人達がそれでいいなら良いのだろう。
変に口出しするのも嫌なので余計な事を言わないでおく。
あらかた食材も買い、この世界の事情を少し聞き情報収集が出来た。
最後に地図が売ってる場所はないか?とアルに尋ねれば、少し言いにくそうに、正確に作った地図は無く、人伝に教える事しか出来ないと言われた。
紙が高価で買えないし、文字の読み書きが出来る村民もいないからしょうがないのだと言う。
うーん。意外と不便なんだな。
異世界…。
金貨1枚→10万円
白銀貨1枚→1万円
銀貨1枚→千円
銅貨1枚→百円
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素泊まり宿で銀貨3枚、食事付きの宿で銀貨5枚
アンチマジックベア討伐が一般的に金貨50枚~の世界です。




