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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
はじまりのはじまり
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御朱印と相棒

はじめての御朱印帳を鞄に入れ、軽い足取りで神社からの帰り道を歩いていればコンビニの雑記コーナーに並んでいる雑誌の中に御朱印特集と大きな文字で書かれている雑誌がガラス越しに見えた。


今では仕事に追われて雑誌をゆっくり読む暇もなかったな…と思い、コンビニの中に入る。


コンビニの中に入り雑誌コーナーへと足を向ければ、目に付いた雑誌だけじゃなく御朱印を特集した婦人誌や御朱印集めだけを目的とした旅行雑誌もあった。

今まで私が認識してなかっただけで色々あるもんだ、と関心しながら先程目に付いた雑誌を手に取りパラパラと捲る。


【御朱印特集!忘れちゃいけない参拝マナー!】


ほうほう。マナーなんかも書いてある。

神社だけじゃなくてお寺にもあるんだー。

なるほど、絶対行っておきたい神社10選か。

大人気!御朱印帳ランキング!何これ可愛い!


どれも、目を引く情報ばかりで食い入るように雑誌を見ていれば、スタッフに「うぅんっ」と真横で咳払いされて現実世界に引き戻される。

じとっ…としたスタッフの視線を手元に受けながら、その雑誌と御朱印巡りだけの旅行雑誌を手に逃げるようにレジへと向った。







「御朱印…いっぱいあるんだなぁ」



家に着くやいなや、雑誌を広げ満足のいくまで雑誌と自分の御朱印帳を見ていて気付いた時にはすっかり日が暮れていた。

夕飯のカップラーメンを啜りながら自宅近くの御朱印を取り扱っている神社や寺を、チラシの後ろの空白に書き込む。

いつもザッと目を通して捨ててしまうポストのチラシもこういう時に役立つ。


とりあえず、家の近所には今日の神社を含め3社。

市内には8社。

県内ともなれば30社近くの寺社がある。


上品ではないが箸を咥えたまま、どうしたもんかと考える。


御朱印巡り。


それは、私の収集癖に火を付けた。

元々が懲り性なのだ。

どうせ集めるなら全部集めたい。



咥えている箸を口だけの力でブンブンと振りながら座椅子へと持たれかかれば、会社に行かなくなってから部屋の隅に脱ぎっぱなしになっていたビジネススーツが目に入った。


贅沢な生活をしなければ2年くらいは生活出来る退職金は貰った。

普段使ってる時間が無くて貯まっていた貯金はまぁまぁな額。


御朱印巡りをするには公共交通機関を使う方がいい場合もあるが、山奥の寺社などもあるから自分の脚となる車も欲しい。




「…車、買っちゃう~?」


誰に言うわけでもなく出た言葉。

高校を卒業した時に運転免許は取ったが社会人になってからもう何年も乗ってない。

「どうせなら小回りがきいて、見た目も可愛いヤツが良いよね」

思い立ったが吉日!

座椅子から勢いよく体を起こせば、スマホで母の連絡先を呼び出す。


久しぶりに電話で話した母はとても嬉しそうな声を出してくれて、父は私の頼み事に「なるはやで!」と覚えたてであろう若者言葉を言っていた。





--2週間後--



朝、目が覚めてからずっとソワソワ。


自宅アパートの駐車場でソワソワ。


何度も何度も時間を確認してソワソワ。


来たら直ぐに出掛けられるように、部屋着のジャージから着替えて準備万端。


ポケットには真新しい御守り。


デフォルメされた狐が書かれた、あの神社で配布していた交通安全のものだ。


ピコンッと携帯の通知音がなり、画面を開けば母から「もう着くよ」と一言だけのメッセージ。






「わぁ!可愛い!」


目の前に駐車された車。

クリーム色の車体に大きな目のようなヘッドライトが可愛い英国風の小さな軽自動車。

中からは母と父が出て来た。

「ご注文通りかな?」

父がニコニコしながら聞いてきた事に、興奮冷めやらぬ私がコクコクと頷く。


小さくて、小回りがきいて、可愛い車。


まさに理想を詰め込んだような車を父が探し出してくれた。


中古だから、とあーだこーだと話している父の言葉を右から左に流し、運転席に乗り込み座席の位置を合わせる。

身長があまり高くない私にもぴったりだ。


「お母さん、お父さん!乗って!送ってくよ!」


口元が嬉しさでゆるんで仕方ないのを隠しきれず、車の外で私の様子を見ていた父と母に声をかけて車に乗り込んでもらう。


私と相棒の初運転!

隣りに乗り込んできた父は娘の成長に涙ぐんでいる。

そうでしょ?

私、成長したでしょ?お父さん…。








--実家までのたった30分の道のりで父と母が5回ほど絶叫し、二度とお前の車には乗らない!と別れ際に母がプリプリ怒りながら車を降りてったのは私と相棒だけの秘密だ。


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