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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
どんどん進めっ
17/44

くまったなぁ?

ジャーキーをもっと寄越せ!嫌だ!と言い合うコタロウと私。

なんだか最近のコタロウは神獣というより、わがままワンコにしか思えなくなってきた。

無能だし…。


「ダメったらダメ!!!」


「ひぃっ!!!申し訳ございません!冒険者様!!!」


コタロウに怒るつもりで少し大きな声を出せば、いつの間にか近くに来ていたアルがビクッと身体を震わせ謝ってきた。


「へ?!いや、あなたじゃない!!ごめん!!」


そんな怖くないのに…。と泣きそうになりながらも勘違いさせた事を謝った。

自分は関係ない。という雰囲気でさっきまでわがままを言っていたコタロウは毛ずくろいしている。


「あの…村長が来てください、との事で呼びにきました…」


なんだ。

やっぱりクソダサネームの熊じゃなくてただのツキノワグマでしたー。とかそんな感じだろう。


コタロウを連れて人が集まってる熊の死骸の方へ行けば、ザワザワと男衆の話し声が聞こえてきた。


ありえない…

こんな綺麗なままのは奇跡だ…

冒険者様ではなく勇者様なのやも…


ザワザワと聞こえてきた声に背筋が凍る。


「冒険者様…このアンチマジックベアは…」

「あ!もしかして、アンチマジックベアとかいうのじゃなくてツキノワグマでした?それともヒグマかなー?」


あははー。と頭を掻きながら言えば、何を言ってるんだコイツ。と言いたげにコタロウが私の顔を見上げてる。


「冒険者様、これは間違いなくアンチマジックベアでございます。しかし…これ程、綺麗なアンチマジックベアは王都を探しましても2つとない代物です。」


ダンディなおじ様、村長だったんだ。

てか、なんだって?

王都?2つとない?は?


固まる私にコタロウが偉そうにフフンと鼻を鳴らした。


『当たり前であろう!内部から喉を掻き切ったのだから。』


そう言えば男衆の視線が一斉にコタロウを見た。

そしてまたザワザワ、ヒソヒソ、と話し声が広がる。



なんと…!人語を話す獣…

神使いが使役する獣は人語を話すと聞いたこたがあるぞ…

では、あのアルが言ってたシールドウォールも本当なのやも…

バカ!シールドウォールが発動出来る賢者様なんて魔法都市にしか居ないって言うだろ!



話が誤解を誤解を生んでる。


(誤解のピタゴラスイッチみたくなってますけど…。

なんだよ。シールドウォールって…。

またクソダサネーム出てきたけど…。

どこだよ…魔法都市って…。

こっちは地方都市に帰りたいんだよ…。)


もう嫌だこの世界。


今の私は耳まで真っ赤になってるだろう。

こんな生き地獄みたいな羞恥プレイ、元の世界なら憤死ものだ。



『ユキナの必殺、爆竹を喰らわせたのだ!その怪物とて即死だったわ。』


さも、自分の手柄のように爆竹の事をいうコタロウの口にガボッと拳を突っ込むも時すでに遅し。


おぉ…という、どよめきが男衆からあがる。


村長さんとか凄い私を見る目が村を助けてくれた人から、めっちゃ凄い英雄を見る目になってきちゃってるじゃん!!


「冒険者様…いや、ユキナ様!我々にはこのような素晴らしいアンチマジックベアを買い取る事は不可能でございます。王都か商業都市のギルドに持ってった方が良いかと…。」



こんなデカい熊どうしろっていうのよ。

マジで。

相棒には乗るわけないし、何より獣臭がすごい。

コタロウは抜け毛はあるけど、体臭はお日様の匂いか私と同じ洗剤の匂いだからまだ許せる。

だけど、この熊はダメ。臭すぎる。



「あ、あの、私に渡されても困るので村で食料とか、あと毛皮とか使うなら、それに使っちゃってください…。その討伐?のお金だけ貰えればいいので。」



ジビエにも挑戦したことがあったが私の口には合わなかったので肉も要らないし、獣臭で毛皮も要らない。

こんなデカい熊の死骸で喜んでくれるならそれで良い。

こっちも、自分で処分しろ。とか言われないかヒヤヒヤだったのだ。


「村の皆様でどうぞ。」


そう村長に丁重にお断りすれば、ザッと村長さんが私に膝まづいた。


「…へ?」


「ユキナ様からの恵み、我々が責任を持って預からせていただきます!!」


ん?恵み?

まぁ、有難がってくれたし良いや。


『人から頭を垂れられるのは数十年ぶりかの。気持ちの良いものだ。』


フフン、と偉そうにしているコタロウが『頭を上げよ、人の子達よ。』と更に偉そうにしている。


普段、無能わんこなのにコイツ。


調子に乗っているコタロウと、そんなコタロウを崇め奉ってる村人達。

君たち楽しそうだからもういいよ…本当に…。



小一時間、コタロウと村長のコントを凪いだ気持ちで見ていれば、いつの間にか熊の死骸は木製のリヤカーに載せられ村へ行くらしい。





コタロウと村長を置いて、リヤカーを重そうに引いている人達について行けば30分も歩かないうちに森の中にポツンとある集落に着いた。

村の中央には組木がされ、村の女衆が忙しなく動き回っていた。


(本当に宴の準備してる!!!)


リヤカーを引いてる人達と一緒に村へと戻れば、忙しなく動き回っていた女衆も集まりだし大混乱となる。

私が熊を倒した冒険者だ、と男が説明すると歓声が上がり、私を拝み倒してくるおばぁちゃんと息子さんがこの熊に殺されてしまったというおばさんに捕まった。


他にも私に話しかけたそうにしている人達が居たが、このおばぁちゃんとおばさんに順番を譲ったのだろう。

熊の死骸を解体する作業を手伝いに行ってしまった。




そこから村長とコタロウが村へと戻ってきたのは宴の準備もすっかり終わった頃で『吾も解体するの見たかった!』とまた、わがままをいい背中を地面につけ暴れていた。

真っ白な綺麗な毛並みが土色になっている…。


「コタロウ、ばっちぃわ…」

『なっ!!』

「今日はコタロウ寝るの外ね。」

『嫌だ!それだけは嫌だ!』

「じゃあ、ブラシとシャンプーね…」

『ううっ…』


異世界に来てから10日。


私が初日に掛けてあげた膝掛けは今やコタロウのお気に入りとなり、あれの端を咥えて寝るのが大層気に入ってるのだ。


酷くわがままを言われ、お互いに譲らない喧嘩をした時に1度、お気に入りの膝掛けを取り上げて相棒の中に寝る時に入れない。という罰を与えたら効果抜群で次の日の朝、しおらしい様子で謝ってきた。




なので、今日もわがままワンコは許しません!という意思表示を見せれば、土埃だらけの体を洗いに川原に走っていった。

私にしつこくシャンプーされる前に流しに行ったのだろう。


数分後、全身ビシャビシャの状態で初日にコタロウが食べていたシー〇ンを3匹ほど口に咥えて戻ってきたのだった。


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