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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
どんどん進めっ
16/44

細かいニュアンス

ありがとう、ありがとう。と泣いていう少年の誤解を解きたいのだが、村に戻って人手を呼んでくる!!と森の中へ走り去っていってしまった。


「車…どうしよう…見つかったらめんどくさいよね?」

『そうだのう。今のうちに森の中へ隠すか…?』

「そだね…。せっかくテーブル出したのに…。」



村がどの程度の距離かはわからないのでササッとテーブルセットを片付け、現在地からそれほど離れていない森の茂みに車を隠す。

大切な御朱印帳を数冊、秘密兵器ポーチと財布、使えるかわからないけど携帯、着替え、飲水の2Lのペットボトルを詰めた緊急用ボストンバッグを持ち川原に戻る。


2m台の熊の死骸のそばで気が引けので、少し離れた場所でコタロウと御朱印帳を眺めながら少年が戻ってくるのを待った。


1人と1匹で御朱印帳をみながら宮城のお土産で買った牛タンジャーキーを食べて待っていれば、遠くから「おーい!」という声が聞こえ御朱印帳をボストンバッグにしまう。




「お待たせしました!」

少年が同じ村の男手を引き連れて戻ってきて声を掛けられた。

20代~40代の働き盛りといった風貌の男性が10人、若々しい60代といった色黒のダンディな男性が1人。

ずらりと私の前に並ぶその様子に、私も立ち上がり「あ、どうも」と頭を下げる。


私の足元でガジガジとマイペースに牛タンジャーキーを食べているコタロウに「私の分も残しといて!」とこっそり言えば、整列している男性の中からダンディな男性が1歩前に出てきた。


「こたびは我が村の村民アルを助け、アンチマジックベアまで討伐していただき村民を代表してお礼を言わせていただきたい!」


わー。凄い声量。

目の前に私がいるにも関わらず、声を張り村民代表挨拶をしてくれるダンディな男性。


なんだろ。高校生の運動部みたいなノリ。

コタロウもその声量にビックリしてる。


「…あ、いや。どうも…」


なんだか直視出来ず、目を逸らし「たいしたことないんで…」と言えばダンディな男性はドバッという効果音がピッタリな感じで目から大量の涙を流し出す。

「アンチマジックベア討伐にたった金貨10枚で受けてくれる冒険者様は居ないと思い諦めていたのです!我が村はこれでまた飢えること無く生活出来ます!!」

ダンディな男性がそう声を張れば、後ろに控えていた男性達もわんわんと泣き出す。


なんだろ。思い出す光景は甲子園で負けてグラウンドで泣いてる高校球児。


だいたい、金貨10枚の単価がわからないし、討伐したくてした訳では無いのだ。

少年も目からボロボロと涙を流し、ありがとう、ありがとう、とまた言っている。


「あ、あのお聞きしたいのですが、そちらの村に宿や食材の調達が出来るお店などはありますか?」


どこかで止めないとこのお礼の感動泣きは終わらなさそうだったので、そう尋ねればダンディな男性に代わり少年アルが「もちろん村の者総出で宴の準備をしております!冒険者様!」と満面の笑顔で言われた。


ん?宴…?

U☆TA☆GE?


宴と言われればマンガの世界でよくある、お祝い事でキャンプファイヤーを囲みながらどんちゃん騒ぎするっていう、例のあれですか?

え?と固まる私に「早くアンチマジックベアを回収してしまいましょう!」とアルが言い、男衆を引き連れて死んでいる熊の元に行った。


「…帰りたい…」

『ユキナには家がないではないか。何をおかしな事を言っておる。』

「…違う…そうじゃない。」


この白狐は細かいニュアンスとか、複雑な人間の感情とかわかんないのかよ…クソ…。



味方ゼロのようなこの心境にトドメを刺すかのように『おい、コレをもっと寄越せ』と空になった牛タンジャーキーの袋をコタロウに押し付けられた。


(……残しといてって言ったじゃん…。)




あー…だめ。

泣きそうだ…。


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