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神様、仏様の言うとおり!  作者: 浅井壱花
はじまりのはじまり
13/44

長かった

元々、コタロウにはなんの能力があるかという話になった。

神の使いなんだから、いわゆる神通力とか千里眼とか超能力とかそういう感じだよね。


あ、これってもしかしてコタロウがチート級の能力を持ってて私が異世界で無双する。とか、そんな感じなのかも。



わくわくしながらコタロウを見れば、私の期待通りにドヤッとするように顎をあげている。

ドキドキ、わくわく。



『吾は人を化かす事が出来る!』























「…え?あ、はい…」



ドヤッって顔で私を見るコタロウの望むような反応が返せず、口がポカンと開いてしまう。

え。人を化かす、って悪い狐の妖怪が人間を化かして悪戯する。とかそんな話じゃなかったっけ…。


あ。これ、無能狐じゃん…。


『あと…否。これは言わないで置いた方が良いかの。切り札だしのう。』


おおっ?!今度こそチート級の能力だよね!

もう心配させるなよー。

ちょっと前のめりになりコタロウの”切り札”を「教えて!教えて!コタロウ様!」っと囃し立てる。


『鬼火が使える!!』


「はいっ!!かいさーーーん!!!!!」


『なにぃ?!!!』


鬼火って…なんかちっこい火がフヨフヨ~ってする、心霊スポットで写真撮ると写っちゃったりするヤツでしょ?

それがどんな切り札なんだよ…。

相方ハズレやんけー。とほぼ白目を剥いている私に、コタロウは『ならば吾の能力を見せてやろう!』と息巻いてくる。




『変化っ!……ぬ?…変化!!』



何度か変身できるのだという能力を使おうとしているが、どうにも上手くいかなったようで『変化!!』とコタロウが叫ぶ度に、ぽひゅ…と情けない音と若干煙が出るくらいでコタロウの姿形に変化はいつまで経っても現れない。


『…な、ならば、鬼火!!鬼火っ!!!』


切り札だと豪語していた鬼火を繰り出そうとしているコタロウが段々泣きそうになってきているのは気のせいだろうか。


鬼火も変化同様にぽひゅ、ぽひゅ…とちっちゃい煙が出るだけである。


『ななななななぜじゃあああっ』


それはそれはもう、可哀想なくらいの絶叫だった。





「あ、あの…大丈夫…?」




さっきまで自慢げにパタパタと揺れていた尾は自信なさげに丸まっている。


『…吾は無能な狐である…』


まさに魚が死んだような目で遠くを見つめボソボソと自分は無能だ…と口走っていた。

良い慰め方が思い浮かばず、凹んでいるコタロウから目を逸らす。


(ヤバい…すごいめんどくさい!!!)


まさか1日と経たずに誰かと一緒に居ることが面倒になるとは思わなかった。

コタロウから逸らした視線を彷徨わせていれば、開きっぱなしになっていたステータス画面が目に入る。


「あのさ!もしかしてLv.1ってなってるからレベルが上がれば技が使えるようになるのかもよ!」


技が使えるようになるかも、という私の言葉にコタロウの耳がヒョコヒョコと動き出す。

虚ろだった瞳にも生気が戻ってくる。


『む?そ、そうかの?』


少し嬉しそうに尋ね返され、内心やっちまった…と思いながらも笑顔を作り「うんうん!絶対そうだよ!」と励ます。

だいたい、レベルの上げ方すらわからないのだ。

だが、このまま居られてもめんどうなのだからしょうがない。


嘘も方便。

もしかした、本当にレベルが上がればどうにかなるかもしれないのだし。


すっかりご機嫌になったコタロウに、じゃあ寝ようか。と促し、車に戻る。

邪魔にもならないだろうしタープとテーブル、チェアはそのままでもいいだろう。



助手席の座席を倒してあげて、尻尾をフリフリとそこに寝転がったコタロウに膝掛けを1枚掛けてあげる。

車の鍵をかけ、慣れた寝方で私も眠りにつく。





やっと長かった1日が終わった。


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