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避行物語

作者: 田土マア

避行物語(ひこうものがたり)

 中学3年になってから何度も死にたくなった。

その度に学校の屋上から飛び降りようともした。家に帰ってからは首を吊ろうともした。


―だけど、死ねなかった。



 教室に入るといじめられるので教室には極力行きたくなかった。だから学校を休んだりしたが、休むと暇な時間が多くなってしまった。家のゲームはやりつくしてしまったし、家中の掃除をしてもお昼には終わってしまう。夕食の準備をするには早すぎる。


 遺書でも書こうか...。と机に向かう。

 

 書き出しを迷ったりもする。


 誰に対して宛てるのか...。


そう思ってふと窓から外を見ると、外では風が静かに草木を揺らしていた。



 少し外をボーっと眺めていた。


 すると、私も草木のように自由になればきっと今の苦しい状況から逃げ出せると思った。さっきまで書こうとしていた遺書を親へのメッセージに変えた。そして家を出ようとした。けどこのまま出てもまともに生き抜くことが出来ない。と察した。

だから食べ物、ナイフ、最低限のお金・・・

二、三日かけて準備する計画を立てた。


 そして私は準備をした。水二リットル入ったペットボトル、法に触れない程度の長さがある果物ナイフ、乾パンなどこの夏に日持ちのするものやクッキーなどの甘いものも詰めた。

お金は正月のお年玉やお小遣いを貯めていた五万円ほどをすべてリュックに詰めた。

リュックの中身も最低限の重さになるようにした。

 そして朝は人が多く行き交うので、夜に逃げ出すことにした。


 夜に自転車を漕いで逃げ出した。

母には「そんな重い荷物なんか持ってどこに行くの?」と聞かれたので「友だちのところに泊まりに行ってくる!」と言い放ちその後の返事も聞かずに飛び出した。


 夜空がキレイだった

 

 孤独の夜空は澄み切っていて雲一つない空に吸い込まれそうだった。


 そしてわからない道をひらすら進んだ。


 あの日ユラユラと揺れていた草木のように。


 あの日雲を吹き動かした風のように。


私は今、自由だ―



―何日が経っただろうか...。

きっと四日くらいは逃げ回った。外は警察だらけだ。

きっと今このトイレから出たら見つかってしまう。

ここはどこかも分からないし、捕まるわけにはいかなかった。

すると―


「ドンドンドン」扉を叩かれた。

「すみません。腹が痛くて...変わってもらえませんか?」

個室トイレはここだけだ。

「あ、すみません。もう少し...。ごめんなさい。」と言うと人気は無くなった。そして申し訳なく感じトイレから逃げ出した。


 線路を渡ろうとしたその時、「果林さん!?」と呼び止められた。振り返るとそこには警察がいてすでに無線で連絡を取っていた。

「果林さん。おうちに帰ろう。ね?」警察が私に優しく声をかける。

どんなやり取りをしたか覚えてはいないが長い時間話した。

すると「いじめくらいでこんなこと...。」と

「...いじめくらい...?」聞き返したが話を聞こうともしない。

私はリュックからナイフを取り出して首を切った。



 次の日、ニュースでは「田中果林さんが自殺をしようとして病院に搬送されました。原因は『いじめ』だったそうです。」と報道された。



 三日後には誰一人としてニュースを覚えてはいないだろう。




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