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第6話 盗賊

多いな。


11人か。


私は腰に差していた木剣を構えた。


それを見て男たちがヘラヘラ笑い出す。


「ネーチャン、大人しくしてくれたら手荒なことはしねーぜ? ちょっとついてきて欲しいだけだ」


こいつは確かドックとか呼ばれていた男だ。


「お断り」


一言だけ冷たく言いはなった。


「そう言うなって、かわいい顔が台無しになっても良いのか?」


ヘラヘラ笑っている。


虫酸の走る顔だ。


その顔なら台無しになることもないだろう。


私が木剣でボコボコにしようと踏み出そうとしたとき。


「まぁ待ってくれ、俺はこいつらの頭を張ってるランピオンだ。職業柄、舐められるわけにはいかねぇ。 あんたんとこの用心棒を呼ぶのにあんたに着いてきて貰いたいだけなんだ」


デカイ剣を背中に背負った小柄な男が進み出る、女にしては伸長の高い私と比べたら頭一つちっさい。


「盗賊なんて職業とは言わないわね、だからあんたらの顔を立てる必要もないし。どうしてもついて来て欲しいんなら力付くでやってみたら? 出きるんならね、おちびさん」


ランピオンの眉がピクッと動いた。


「テメェ!頭が一番気にしていることをっ!」


またランピオンの眉がピクッと動く。


「頭の身長の事を言うなっ!!」


ピクッピクッ


「シークレットブーツだって履いてんだぞっ!」


ピクッピクッピクッ


「いい加減にしろバカタレども、仕方ない、大人しくさせてから縛って差し上げろ。手加減しろよお前ら」


そう言ってランピオンは背中を見せて歩き出した。


盗賊達は丸腰のまま私を円に囲んで厭らしい笑みを浮かべながら、囲いを狭めていく。


私は両手をだらりと下げ、肩の力を抜いて軽くジャンプする。


ふーっと息をついて力を込めて地面を蹴った!


抜き打ちのような形で唯一名前の分かる盗賊ドッグのこめかみを打ち抜いた!


ドッグは一瞬で意識を刈り取られ、ニヤついた顔のまま膝から崩れ落ちた。


盗賊達は私の動きに全く付いてこれていない!


勢いそのままに、前蹴り、首打ち、みぞおちへの突き、脇腹を打って、瞬く間に5人を倒し、くるりと回転してもう一人仕留めようとしたところで真っ赤な大剣に木剣をバキッと折られた!


咄嗟に包囲の中から抜け出して距離を取った。


「トンでもないお嬢ちゃんだな。振り返ったらうちの連中が転がってんじゃねぇか、おったまげたぜ!」


大剣を構えているのはランピオンだった。


私は折れた木剣を捨てた。


「丸腰の女相手にそんなもん使うの? 余計舐められるんじゃない?」


「悪いが俺は手段は選ばない」


言って大剣を振るといきなり爆炎が飛び出して吹き飛ばされた!


木でしたたかに頭を打った、目の前に星が飛ぶ。


「驚いたろ?魔法剣だ! パクったもんじゃない、家に代々伝わる家宝の剣!その名もルシールだ!」


朦朧としながら立ち上がって駆け出した。


心現術が上手く使えない、頭を打ったせいで集中出来ない。


「元気なお嬢さんだ!」


ランピオンの笑い声と共にゴウッと音がしてまた吹き飛ばされた!


2~3メートル飛んで地面に転がった、あちこち擦りむいて髪が焦げる嫌な臭いがする。


「クッソ!!どチビがオモチャ持ったからって調子にのってんじゃねぇ!!」


罵声を浴びせて腹立ち紛れに地面の砂利をつかんで投げつけた!


心現術で石を高速で飛ばしたかったがまだ上手く使えない。


「口の悪いお嬢ちゃんだ」


ランピオンの眉がピクッと動いた。


また、赤い大剣を振って爆炎をおこす!


爆炎がきた瞬間後ろに飛んで衝撃を殺した、今度は距離もあったお陰で大したダメージは無い。


爆炎に紛れて林の中に身を隠す。


が、動きを読んでいたランピオンが林に向かって爆炎を撃ちまくる!


ドカンドカンと凄まじい轟音が響き渡る!


吹き飛ばされたが狙いが定まっていなかったので直撃はまぬがれた。


大分頭がスッキリしてきたが剣がないのがきつい。


木を盾にしながら周りになにか無いか目を走らせるがなにもない。


また石を拾い上げる。


「さっきの威勢はどうしたっ! さぁ! かかってこいよ!!」


ランピオンが笑いながら絶えず爆炎をおこす!


隠れていた木に直撃して木が折れた!


私は声をあげずに飛び出して今度こそ心現術で加速させたつぶてを投げつけた!


「ぐあっ」


と声をあげて倒れたのは手下の男だった。


「やるじゃねぇか!」


また爆炎が襲いかかる!


「きゃあぁっ!」


横っ飛びに避けたが吹き飛ばされて木に直撃した!


痛みに呻いて身悶えする。


クッソ!なんだあの剣!反則だ!


心で悪態をつくがどうにもならない…


「もう、お仕舞いか?なかなか頑張ったな! 立てなきゃふん縛っちまうぜ?」


手下の男が縄を持って近づいてくる。


これぐらい、一人でどうにか出来ないで旅なんて言ってられない!


私は立ち上がって拳を握った!


「まだやる気か!?すげぇ根性だな!」


ランピオンは魔法剣をかたに担いで高見の見物を決め込んでいる。


性格の悪いやつだ!絶対ボコボコにして性根を叩き直してやる!


近付いてきた男に前蹴りをいれる! また上手く心現術が使えない! 効いてはいるが倒せない。


バックステップで距離を取って回転胴回し蹴りで顎を刈り取る!


まさかの攻撃に男は崩れ落ちた!


「おぉー!すげぇすげぇ!頑張るねお嬢ちゃん!」


ランピオンが拍手している。


本気で勘にさわる奴だ!!


今度は慎重に近づいてくる男たち、手近な奴に上段蹴りをいれるがガードされた。


斜め後ろの男に脇腹を蹴られる!


「うぅっ」


痛みに呻く


前にいた男に思いきり顔面を殴られた、すかさず右手で殴り返す!


が、相手はニヤニヤ笑っている。


今度はみぞおちに前蹴りがきた!


後ろに転がって痛みに体を縮ませる… 口の中が鉄の味がする。


手を掴まれて後ろ手に縛られる。 抵抗しても捕まれた手を外せない。


「惜しかったなお嬢ちゃん! もうちょっとだったのに!」


ランピオンが嘲笑う。


こんなに悔しくて惨めな気分は奴隷商に売られたとき以来だ。


ランピオンを睨み付ける瞳が滲む。


「そう睨むな、用心棒を誘きだしてぶっ殺してから、帰してやるよ」


「その必要はない!このクソチビ!!今すぐアリスを放せ!!」


ランピオンがピクッと眉を動かして後ろを振り向くと怒りに顔を歪ませたノイマンが立っていた。

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