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天地戦争から1000年後の世界  作者: てるひこ
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第7話 魔力の量は?

 ——受付嬢セレネのウェルへの印象は、


(胡散臭い)


 というものだった。話してみるとこの少年が途方も無いホラを吹いているようには感じない。しかし、話す事が一般的な常識とはかけ離れておりイマイチ信用しきれないというのが彼女の心境だった。


(どうしようかしら……)


 ギルドから彼女が与えられている権限により、登録の審査以前に申込み用紙を受理しないということも出来る。それだけ受付嬢というものはギルドから信頼されており責任ある役職なのである。


(この子を信用ならないという理由で登録させないこともできる……でも……)


 ふと記入された彼の出身地をなぞる。


(プラナ村……確か東の方にある村ね。この街からかなりの距離のはず……この子はそんなところから冒険者になるためにここまでやってきた。それを私の印象だけで無下にしていいのかしら……)


 セレネは小さく首を振った。


(せめて……ちゃんと最後まで審査をしてあげよう。彼の決意を頭ごなしに否定するのは間違っているわ)


 セレネは放心しているウェルに話しかけた。


「ウェルさん。あなたの言っていることは一般的な常識から少し逸脱しているような気がします。しかしそれが絶対に嘘とも言い切れないのも事実です。よってとりあえず登録を進めますが冒険者に適さないと判断したら登録は出来ないのであしからず」


 それを聞いたウェルは我にかえると、


「本当に!?よかった!」


 満面の笑みで答えた。その様子みたセレネはやれやれと言わんばかりに微笑を浮かべると、


「では、質疑応答はこれまでにして魔力測定に移りましょう」


 セレネはそう言いながら立ち上がりかけたが、


「あっ、申し訳ありません。審査に使いますので滞在許可証をお預かりしてもよろしいですか?」


「うん」


 ウェルは腰のポーチを開けて中の許可証を取り出し、もう一枚の紙の存在を思い出した。


「あと、これなんだけど」


「はい?」


「解体屋の店主からギルドの人に渡せって」


 2枚の用紙を受け取って目を通したセレネは驚いた。


(紹介状!しかも、あのダグラスさんからの……)


 内容に問題ないか読み込むセレネ。


(この子を冒険者に推薦している……一体何故?)


 読み終わるとセレネは今度こそ立ち上がった。


「許可証、紹介状共に問題ありません。なので次の部屋にご案内します」


「わかった!」


(この子……本当に何者なのかしら?)


 セレネに誘導されウェルは次の部屋に移動した。





 2人が移動したのは2階にあるそれほど大きくない部屋だった。入るとそこにはテーブルとその上に置かれた水晶玉があった。


「どうぞおかけください」


 促されるままテーブル手前の椅子に腰掛けるウェル。目の前に置かれた水晶玉を興味津々に眺めた。


「これは【測定晶(そくていしょう)】と呼ばれるものです」


 対面の椅子に腰掛けたセレネが説明を始めた。


「これに両手を触れて魔力を流し込む事でその者の魔力の量を測定できます」


「なるほど。それで測定晶なのか」


「ええ。ギルド登録をする際、ギルド側は最低限のその方の実力を把握しておかなければならないのでこれで確認させていただいてます。魔力の量がそのままその方の実力というわけではありませんが、大きく影響するのは間違いありませんから」


 ウェルはなるほどと頷くと再び水晶に目を落とす。不思議な輝きを放つ水晶は綺麗に透けているように見えるが見方を変えると酷く濁っているようにも見える。


(なんか吸い込まれそうだ……)


「では、測定を始めましょう。ウェルさん両手を水晶の上に」


「ああ」


 言われた通り両手で水晶に触れるウェル。


「魔法は使えないとのことですが魔力はコントロール出来ますか?」


「大丈夫」


「わかりました。ではお願いします」


 ウェルが両手から水晶に魔力を流し込み始めると水晶は白く光り出した。


「おー、すげぇー!」


「魔力の量に応じて光が強くなります。ウェルさん全力で魔力を流し込んでみてください」


「全力で?了解!」


 意気込んだウェルは両手から放つ魔力の量をどんどん増やしていく。それに呼応するより水晶も輝きを増していった。それを眺めていたセレネはある違和感に気づいた。


(あれ?……なんか眩し過ぎる気が……)


 そんな懸念をよそにウェルは魔力を流し込み続ける。その光は遂に目を覆わずにはいられない程になっていた。


「ウ……ウェルさん!ちょっと待って下さい!何かマズイ気が……」


「いっけぇー!」


 セレネの制止も聞こえずウェルが更に魔力を流し込んだ瞬間、


 バッギィン!!


 一際大きな光と割れるような音ともに水晶は砕けちった。

 その光景を目の当たりにしたセレネは信じられないという表情で粉砕された水晶を眺めていた。粉々になった水晶の上に両手を差し出すように固まっていたウェルは、冷や汗を流しながらセレネの方をみると、


「えっと……ごめんなさい」


 とりあえず謝ってみた。

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