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天地戦争から1000年後の世界  作者: てるひこ
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第26話 ダンジョン潜入

 ——ダンジョン調査当日。シルバリオンの北門からギルドが手配した馬車で揺られること1時間。ウェル達は調査対象であるダンジョンの入口に到着した。


 木が生い茂る森の中、少し盛り上がった丘に幅10m、高さ3m程の洞窟の様な入口がぽっかりと開いている。


「へー。ここのダンジョンの入口は結構大きいんだな」


 ウェルはプラナ村のダンジョンと比べて入口が広く大きい事に驚いた。


「ダンジョンは色々な形があるけど、ここは比較的入りやすい入口だね。そもそも入口に行くのが大変なダンジョンとかもあるから」


「そうなのか。俺の村のダンジョンは少し広い井戸みたいな形だったな。あれに比べるとだいぶ広くて入りやすそうだ」


 そう感想を述べたウェルはプラナ村のことを思い出し少し懐かしんだ。


「よーし!みんな集まれー!」


 思い出に浸っているとバザンの大きな声が轟く。ウェルとピュイは駆け足で声の元に向かった。



「皆集まったか?それでは今回のクエストについて改めて説明する!」


 そう声を大にするバザンの前には50名程の冒険者が集っていた。ウェルはひそひそと横に立つピュイに話しかけた。


「……凄い数の人だな」


「……そうだね。シルバリオンの中でも大きめのクランが何個か来てるみたい。メンバーが全員来てるわけではなさそうだけど……」


「なるほどな……うっ……」


 集団を見回していたウェルは何かを見つけ思わず呻き声をあげると、ピュイの肩を指でツンツンと叩く。


「おい、ピュイ。あれ……」


「うん?……あっ……」


 ウェルがそっと指差す方には2人を射殺すような目で睨むベクドの姿があった。その視線に込められた憎しみにより2人は気分が悪くなるような錯覚に陥った。


「……とりあえず、気をつけた方がいいのは魔物達だけじゃないってことか……」


「さ、さすがにダンジョン内では襲ってこないと思うけど……」


 そう言いかけたピュイだが、今までにベクドから受けた仕打ちを思い起こすと言葉が詰まった。


「おいおい……言い切ってくれよ……不安になるだろ……」


 2人は予想外の面倒が増えたことに対し溜め息を吐くと、なるべくベクドの方は見ないようにバザンの説明に集中した。



「……ということで、ダンジョンへの潜入の際は今回参加人数が最も多いクラン【ブレイバーズ】と次に多い【黄昏の空】に先行してもらう。両クラン共異論はないか?」


 そのバザンの問いにクランの冒険者達は手を振りかざし、「おおぉーー!」という怒号で答える。


「よし。残りのクラン関してはメンバー数の多いところから徐々に潜入するように!……そして、これが最後になるが……」


 説明を終えそうなバザンの最後の言葉に皆が耳を傾ける。


「今回のクエストはあくまでも調査が目的だ。無理に攻略を目指し痛い目を見ないように。我々ギルド職員はこの場所をベースキャンプとし滞在するので、これ以上潜入が難しいと判断した者達は引き返すように!以上!」


 バザンの説明が終わると、冒険者達はざわざわと相談を始めた。1番大所帯のクラン【ブレイバーズ】は早々に打ち合わせを終えると隊列を組みダンジョンに潜入していった。次いでベクドが所属している【黄昏の空】も潜入を始める。


「ベクドもクランに所属してたんだな。てっきり俺は【ベクド組】みたいなのがあるのかと思ってた」


「あはは。ベクドは確かに素行に問題があるけど実力は確かだからね。クラン内でもかなり顔が効くみたいだよ」


「……あれがねー……」


 何とも言えない表情で溜め息を吐いたウェルは、自分の周りの様子を伺った。10数名規模のクランが潜入し、現状残された10名未満のクランは皆作戦を練ったり、他のクランの様子を伺っている。


「……協力と言っても中にある財宝とかは基本早い者勝ちだからね。早く潜入したいと思いながらも危険はあるから皆慎重なんだ」


「なるほどねー。そりゃあ皆美味しいとこだけ持っていきたいって訳だ」


 そう小言を漏らしたウェルは群衆の中のとある人物に目が留まった。


「なぁピュイ。あの人知ってるか?」


「うん?どの人?」


「あそこの長い空色の髪の女の人」


 ウェルが見つけた人物は腰まで伸びた空色の髪を少し編み込んでいるウェルと同い年か少し上ぐらいの女性だった。一見軽装だが関節や急所を的確に守っている鎧を念入りにチェックしている。その真剣な横顔はとても美しくどこか品格があり、おおよそ冒険者のイメージとは良い意味でかけ離れた容姿だった。

 ウェルの伝える人物を把握したピュイは小さくああ、と答えた。


「名前は知らないけど、最近Bランクに上がった人かな?誰かと一緒にいるところをあまり見ないからクラン無所属のソロの人だと思う。彼女がどうしたの?」


「いや……なんとなく浮いて見えたからさ」


 ウェルの感想にピュイは確かにと相槌を打った。彼女の周りには人がおらず、彼女自身からも話しかけるなというオーラが出ているのか寄り付こうとする者は現れなかった。何故かボーと彼女を眺めるウェルにピュイはある提案をした。


「……気になるなら声を掛けてみれば?」


「……はっ!?……いやいや!違う違う!そう意味で見てた訳じゃないって!」


 慌てて手をバタバタと必死に振りながら気がないことをアピールするウェル。


「あはは。そんなに慌てなくてもいいじゃない」


「本当に違うって!……ただ……」


「ただ?」


 スッと真剣な表情に変わったウェルは再び女性に目を向け小さく呟いた。


「……あの人を見た時……なんか懐かしい気分になったんだ……」





 気づくと周りのクランもほとんどが出発しており、残すは数名となっていた。


「ウェルそろそろ行こうか?」


「ああ、そうだな」


 ピュイは目的の最終確認を行う。


「僕達の目的はあくまでも構造変化の原因究明……」


「んで、あわよくば解決!だろ?」


「そう。じゃあ」


「ああ!行こう!」


 ウェルは勢い良くダンジョンに振り向きながら指を指し示し声高らかに叫んだ。


「いざ、ダンジョンへ!」

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