第14話 初クエストの依頼者
——翌日
目を覚ましたウェルは久しぶりにしっかり寝たことでとてつもない爽快感を感じていた。
「ん〜!良く寝た!」
ベッドから降り服を着替えると部屋を出て1階へ向かった。昨日の夜とは打って変わって1階では静かな空気の中で宿泊客らしき数人が朝食を食べている。
「おはよー!」
声のした方を見ると昨日と違うエプロンを着たジェシーが立っていた。挨拶を返すウェル。
「おはよう!朝早いね」
「うん、今日は特別。朝担当の子が急に来れなくなっちゃってピンチヒッターなんだー。だからとても眠いよ」
へへへとジェシーは笑った。
「昨日遅くまで働いて朝も早いのは大変だね……」
「んー、でも朝食の時間が終わったら上がりだから爆睡する予定!」
グッと親指を突き立てウィンクするジェシーに思わずウェルは笑い返した。
「ご飯食べるでしょ?すぐに持ってくるから座って待ってて!」
「その前に顔を洗いたいんだけど……洗うとこある?」
あちゃーと顔をしかめるジェシー。
「言い忘れてたね……あっちの廊下から中庭に出れるからそこの井戸を使って」
わかった、と答えるとウェルは顔を洗いに向かった。
食堂に戻って来るとテーブルの上に2人分の食事が置いてあり、ジェシーが座って待っていた。
「おかえりー。朝食まだだから一緒に食べてもいいかな?」
「もちろん。仕事は休憩?」
「うん。ひと段落かな。あとはご飯食べて、掃除して終わり」
2人はいただきますと手を合わせると食べ始めた。
「そういえば、宿泊代の事聞きたかったんだ」
「あっ、そうだね!えーと、昨日は夕食と宿泊だから300リラで朝夕食事付きの1泊だと400リラだよ」
それが相場なのかどうかよくわからないウェルは少し困惑した。そんな戸惑いを察したジェシーは目を細めて小さな声で呟いた。
「……かなーりお安いんだけどなー」
心を読まれたように感じたはウェルはギョッと驚き、その反応が面白かったのかジェシーは大声で笑った。
「あはは!ごめんごめん!実は朝早くにダグラスさんところに角猪のことで行ったんだ。その時に君について色々聞いてね。ちょっとからかってみた」
「あー、そういうこと……びっくりしたー」
「大丈夫!決してぼったくってないから!……で、何泊する?」
その問いにウェルは食事を一旦止めて考える。まだ新しい生活を始めて2日目のため、勝手が分からず目処がつかない。そこでジェシーが助け舟を出した。
「じゃあとりあえず1週間泊まってみれば?その間に借りる家とか探せばいいと思うよ!」
「んー、じゃあそうしようかな」
「毎度あり!じゃあお代はあとでね」
宿泊の話がひと段落したところで2人は食事に戻った。
「あー美味しかったー」
膨れたお腹をポンポン叩くウェル。
「お粗末様でした。ウェル、今日はギルドに行くの?」
「ああ!今日は遂にクエストデビューだ!」
嬉しそうに意気込むウェルにジェシーは微笑んだ。
「念願だったんだよね?頑張ってね!……でも怪我しないでね?」
「大丈夫だよ。最初は獣や魔物のでないクエストしか出来ないらしいから」
「へー、そうなんだ。……!」
少し残念そうなウェルをみてジェシーは1つ思い浮かんだ提案をした。
「ねぇねぇ。それって採取クエストとかをやる予定ってことだよね?」
「えっ?ああ、多分だけど……」
ジェシーは嬉しそうに手を合わせて笑った。
「実はね、昨日ギルドにお願いした依頼があるんだけど……ウェルがやってくれたら安心だなーって」
「そうなの?まぁ、俺が受けられるクエストなら喜んでやるよ」
「本当に!?よかったー。でね、その依頼なんだけど……」
こうして意外なところからウェルの初クエストが決まった。そして遂に冒険者としての生活が始まるのであった。




