第10話 ギルドランク
——アルフレッドが去って数分後、部屋に男が3人入ってきた。男達はぐちゃぐちゃな部屋と変わり果てた机に驚き思わず隅に立つウェルを凝視する。
視線を向けられたウェルはバツが悪そうに苦笑を返すと3人は困惑しながらも片付けを行い、新たに机と椅子を配置して去っていった。
その後、入れ替わるように今度は神妙な面持ちのセレネが入ってきた。
「セレネさん!」
呼びかけられたセレネは悲しげに微笑を浮かべると、ウェルに向かって深々と頭を下げた。
「ウェルさん。先程は大変失礼致しました」
「えっ?」
唐突に謝られて困惑するウェル。
「ギルドマスターからお話を聞きました。先程あなたから審査中に伺った数々のことは真実だったのですね……それなのに私ったら……先入観で疑ってしまい、あなたに失礼な態度を取ってしまって…」
「あ、あー!いやいやそれは俺のせいでもあるし!自分が常識知らずってことはわかっているから気にしないで!」
手をパタパタと振りながら気にしないように促すウェル。
「ですが……」
「それより、ギルドの仕組みとか何も知らなくて。それを教えてほしいかなー?なんて」
あからさまにお茶を濁すウェルにセレネは救われたように笑みをこぼす。
「わかりました。誠心誠意ご説明させていただきます。どうぞおかけください」
2人が改めて席に着くとセレネは小脇に挟んでいたバインダーから手のひらサイズぐらいのカード取り出した。
「お受け取りください」
そう言いながら机の上を滑らすようにウェルに差し出した。それを手に取りまじまじと見つめるウェルの目が輝いた。
「これって!?」
「はい。これが当ギルドの登録証です」
その金属製の銀色のプレートに自分の名前と大きく【E】と描かかれていた。
「この【E】っていうのは?」
「ウェルさんのランクです。ランクについても合わせてご説明させていただきます」
セレネはそう前置きを入れると説明を始めた。
「ギルドが認定するランクは上から【SSS】・【SS】・
【S】・【A】・【B】・【C】・【D】・【E】の8つです。ウェルさんはギルドマスターの意向で【E】ランクからのスタートとなります」
「アルフレッドさんの?」
「はい。なんでも『不自由を味わうのも社会勉強だよ』とのことです」
それを聞きウェルは不思議そうに首を傾げたが、
「よくわかんないけど……まぁ、いいか!」
あまり気にしないことにした。
「このランクはクエストの難易度や危険を表す際にも使用されます。例えば『B級のクエストにはB級以上の冒険者しか参加できない』ということです」
「なるほど」
「ランクを上げるにはクエストをこなしていただき、その結果を我々が審査し昇級か否かを決めます。また他の冒険者への妨害行為、もしくは犯罪が確認された時点で降格または登録抹消もあり得ますので気をつけてください」
「わかった」
「ランクによってクエストの制限もあります。最初のEランクは採取クエストなど戦闘行為がないクエストしか受けれませんので気をつけてください」
「えっ!そうなの?」
「はい。Dランクからは討伐クエスト、Cランクからダンジョン攻略の許可がおります」
へー、と驚くウェル。
「クエストは最初にお越しいただいた受付にて申し込みができます。受付カウンターの横にランク別のクエストボードがありますのでそこから希望のクエストをお選びください。……ランクに関する説明は以上です他に何か質問はございますか?」
「えっと……たぶん大丈夫かな」
そう自信なさげに答えるウェルに
「もし、わからなければいつでもお答えしますのでお尋ねください」
セレネは微笑みかけた。ウェルは照れながら笑うと、
「あっ、じゃあ1つ質問!」
「はい?」
「過去に【SSS】級になった人は何人いる?あとクエストも」
その質問にセレネは悩むそぶりを見せた。
「……実は【SSS】級は最上位の指標で作られただけでして、冒険者とクエストは今まで1度もないのです。長いギルドの歴史を紐解いても【SS】級が何度かあっただけですし…実質【SS】が最高ランクですね」
「そうなんだ……」
「だけど……」
セレネは真剣な顔でこう述べた。
「1000年前の天地戦争で天使様と共に魔物を退けた勇者様は……間違いなく【SSS】級以上だったでしょうね」




